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海の環境と生態

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トガリモエビの産卵について

トガリモエビの産卵について

 先月の話になりますが、三保真崎の2か所でトガリモエビが抱卵している状況を観察しました
これが秋の話であれば、何ら珍しいことでは無いのですが、半年遅れ(つまり真逆の時期)となると不思議に思うのも仕方がありません

 複数個体が観察されたヤナギウミエラの仲間をチェックしていると、その内の1つに本種が付いていました
水中では雌であるということまでは確認できましたが、腹節に卵があることまでは気がつきませ

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ボウシュウボラの卵守り行動

ボウシュウボラの卵守り行動

 前回(2/28のダイビング)、ボウシュウボラの卵嚢を親が放棄したと思われる状況に遭遇して、これまで観察したことのなかった行動に疑念を抱き、周辺を捜索して親を探し出して、元の場所に連れ戻した顛末をお披露目しました。今回は、その5日後になる本日の定点観察ダイビングについて考察します。

 結論から言えば、親貝は放棄したのではなく、何らかの原因でこの場所を離れてしまったのだと考えることができます。その

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ボウシュウボラの卵守り行動(定点観察)

ボウシュウボラの卵守り行動(定点観察)

 今年に入ってから産卵を確認し、その後定点観察を続けているボウシュウボラですが、先日のダイビングで卵嚢からベリジャー幼生がハッチアウトを終えていないのに親が居なくなっていました。
 これまで毎年のように観察個体を決めて、定点観察を続けてきましたが、このような事は1度もありませんでした。親は産卵後に、ヒトデやウニなどの外敵から卵を守るために、全てのベリジャー幼生がハッチアウトするまでは、その場を離れ

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この生き物は?

この生き物は?

 先月、ダイビング観察を終えて、そろそろエキジットしようかと浅瀬に向かっていると水深3mほどのところで、見慣れないフサフサの握り拳大の塊が波に揺れていました。
初めは、このフサフサが触手に見えたので、動物だと思って写真を撮っていました。観察している内に、触手にしては揺れ方があまりにもフワフワしているので、シャッター速度を上げて撮影した画像を家に戻ってから現像してみると、繊維っぽい質感でした。
SN

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ニシキフウライウオとカミソリウオ

ニシキフウライウオとカミソリウオ

 冬をスタートにするか春をスタートにするか、あるいは新暦・旧暦を考慮するかで、シーズン期間に関する意見が別れるところではありますが、例えば1〜3月を冬と考える年初をスタートするパターンと4〜6月を春と考えて、ここをスタートとするパターンに別れます。もちろん、南北に長く太平洋岸と日本海岸がある日本ですから、場所によって月の季節感が違いますし、人によってもその感じ方は違うと思います。
 一般的には「春

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晴天のセンレキ

晴天のセンレキ

 今年のお正月も天気に恵まれましたね。本来は、潜り続ける予定でしたが、少しは体を休めようと思って、映画を観たり、次回の論文の資料を集めて構想を組み立てたり、画像の整理をして過ごしました。
 しかしながら、それも3日が限度でした(笑)。どう考えても今日は透明度が良いに決まっている。朝、海を見に行って、表層の青さを見て確信しました。マクロからワイドにチェンジ!だと。
 慌てていて、ワイドポートに撥水ス

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潜り納め

潜り納め

 予報で知っていましたので、この雨にやられに行った訳ではありません。
午後から、準備万端でスクランブルダイブして、今年一年の感謝を三保真崎にしてきます。

 にしても、今年も例年に違わず怒涛の生態系北限上昇傾向が強かったように思います。対岸の情報を見聞きしていると、本当にここが駿河湾なのか?と疑ってしまう事例のオンパレードでした。三保に言われたくないよ(笑)って思うようなこともありましたが、故益田

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続・サクラダイの産卵(まとめ)

続・サクラダイの産卵(まとめ)

すでにガイド会「世界の海ブログ」で、この件については触れましたので、ここでは焼き直しになりますが、まだ賞味期限内の話なので、お付き合いください(画像も使い回しです)。

三保真崎におけるサクラダイの産卵場所が変化した点については、ガイド会のブログだけでなく、その他のSNSでも発信している通りです。観察を始めて30年ほど経過しましたが、場所の移動は初めての経験であったため、その変化に気付くのが遅くな

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キュウセンフエダイ

キュウセンフエダイ

 三保真崎で観察されたことのある南方系のフエダイで、今シーズン一番密集していたのがこのキュウセンフエダイです。ヨスジフエダイも混遊していました。加えてイッテンフエダイも同じサイズが混じっていました。
 不思議な光景ですが、水温もやっと20度になり、ボチボチ南方系の活性も下がってくると思います。さて、この子たちは何月まで抗えるのか観察を続けたいと思います。

秋桜

秋桜

 秋はサクラダイの繁殖の季節です。
春の闊達な桜のイメージとは違い、秋の桜はアンニュイな感じがします。
そのイメージなのか、激しさの中にも少し遠慮がちな雰囲気を感じます。

久しぶりの一斉産卵に遭遇して、心臓がバクバクでした。
今年は、なかなか始まらないなぁ〜水温が高いせいかなぁ〜なぁ〜んて思っていましたが、今までとは違う場所で産卵行動が営まれていました。
 あくまでも推察の範囲を超えない思うのレ

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カラフル

カラフル

 この光景は、今に始まったことではなく、ここ三保真崎でも随分と前から当たり前の景色なのです。あまり紹介する機会がないことで、封印されたようになっていますが、行くとこに行けば、こんなシーンはタイミングさえ合えばご覧になることができます。
 では、何故?このようなシーンを売りにしないのかと言えば、これを凌駕する生物や生態が観察されるからなのです。また、環境やスキル、タイミングの話をすると他では容易く手

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ここは駿河湾なのか

ここは駿河湾なのか

 以前から、観察する機会はありましたが、ここまで数が増え、常習化するとは思いもしませんでした。

 駿河湾の入り口付近では、タカサゴ(沖縄の県魚のグルクンです)が成魚サイズで群遊していると聞きます。

 であれば、駿河湾の奥に位置する三保真崎にこれほど多くの幼魚が居ても不思議ではありません。

 こんな南方系のハギの群れも見慣れてきました。

 どうやら報道では、久しぶりにスーパーエル二ーニョにな

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サクラダイの繁殖行動について

サクラダイの繁殖行動について

 水温が23度になり、やっと繁殖行動の予兆が見られるようになりました。例年ならば、1ヶ月前には本格的な産卵行動が見られるのですが、何やら様子が違います。水温が高止まりしていたことも要因の一つと考えられますが、アカオビハナダイやケラマハナダイのような勢いが感じられません。
 また、これまでサクラダイが優位な状態であった場所が、圧倒的にアカオビハナダイの数におされています。この密度分布も原因なのかなぁ

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とどまることを知らない

とどまることを知らない

 昨日のダイビングで、真崎では初見のコクハンアラの幼魚を観察しました。定番のコースでの青天の霹靂でした。写真におさめようと思って、のらりくらり付いてゆくと、今度は真崎で2回目となるフエヤッコが登場です。

 更に探求して潜り進めると、お次はこれまた2度目の遭遇となるカンモンハタの幼魚がいました。

オオモンハタに似ていますが、尾鰭の端部に白線が無いことや全身の模様がやや大きいことで水中でも判別がで

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