tetsu takashi

三保真崎海岸を中心に潜水を仕事、研究、趣味にするプロダイバーの大学教員。

tetsu takashi

三保真崎海岸を中心に潜水を仕事、研究、趣味にするプロダイバーの大学教員。

マガジン

  • 研究

    潜水法、ダイビングの利活用に関して、これまで携わってきました研究活動の振り返りと今後の展望を綴ります。

  • 海の環境と生態

  • 邂逅の海洋生物

    これまで水中で遭遇した生物のお話しを綴ります

  • 大学内の仕事

    大学の教員は、授業と研究が主な仕事になります。大学内となると優先すべきは授業となり、その関連をまとめた内容になります。

  • 雑感

    生活の中で気がついたこと、とどめておきたい事など、備忘録的な綴りをあつめた内容。

最近の記事

ベトナム備忘録

 3月に2週間ほど、ベトナムに調査研究で行ってきました 1年と4ヶ月ぶりの現地でしたが、以前行った時と季節が違っていたので、空気感の違いや改めてベトナムってこんなところ的な体験ができました 2回とも私的な旅行ではなく、ベトナムにおけるチャウタン船の海事考古学研究のお手伝いで行っております 前回は、台風の影響で全工程の内、3日しか潜水調査をすることができませんでした 台風以外にも悪しき慣習による妨げがありましたが、冷静に考えてみれば、国内においても似たような嫌がらせというか、

    • トガリモエビの産卵について

       先月の話になりますが、三保真崎の2か所でトガリモエビが抱卵している状況を観察しました これが秋の話であれば、何ら珍しいことでは無いのですが、半年遅れ(つまり真逆の時期)となると不思議に思うのも仕方がありません  複数個体が観察されたヤナギウミエラの仲間をチェックしていると、その内の1つに本種が付いていました 水中では雌であるということまでは確認できましたが、腹節に卵があることまでは気がつきませんでした 戻ってからデータをバックアップして、現像してみると抱卵している状態でし

      • この季節ならでは

         今月、と言っても今日で終わりですが、2週続けてレアな生物に遭遇しました  甲殻類に興味のない方には見向きもされませんが、遭遇率が低いこの手のエビは水温が低い時期とは言え、割りと人気(需要)があります  今シーズン最初の遭遇は25cmほどの大きさのヤツシロガイの貝殻を背負ったアカボシヤドカリでした このヤドカリも三保真崎では珍しい種ではありますが、ハンドボールほどの大きさがある貝殻には圧倒されました、加えて撮影時には全く(期待はしていました)気がつかなかったペリクリメネス・ダ

        • ベニクラゲモドキとの遭遇

           ボウシュウボラの母貝を元に戻して、ベリジャー幼生のハッチアウトに貢献できた話を前回しましたが、その同じダイビングでもう一つの嬉しい出来事がありました。それは、念願であったベニクラゲモドキの触手を広げた画像が撮影できたことです。  このクラゲは、種名と不老不死というキーワードで検索すると出てくるくらい有名な種で、日本では未記載種を含めて3種が確認されています。  三保真崎では、毎年冬になると観察頻度が上がりますが、それでも遭遇する機会は1シーズンに1〜2回程度です。サーチライ

        ベトナム備忘録

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          6本

        記事

          ボウシュウボラの卵守り行動

           前回(2/28のダイビング)、ボウシュウボラの卵嚢を親が放棄したと思われる状況に遭遇して、これまで観察したことのなかった行動に疑念を抱き、周辺を捜索して親を探し出して、元の場所に連れ戻した顛末をお披露目しました。今回は、その5日後になる本日の定点観察ダイビングについて考察します。  結論から言えば、親貝は放棄したのではなく、何らかの原因でこの場所を離れてしまったのだと考えることができます。その理由は、それまで90%以上の卵嚢にはベリジャー幼生が居て、親貝が戻ったことでハッ

          ボウシュウボラの卵守り行動

          ボウシュウボラの卵守り行動(定点観察)

           今年に入ってから産卵を確認し、その後定点観察を続けているボウシュウボラですが、先日のダイビングで卵嚢からベリジャー幼生がハッチアウトを終えていないのに親が居なくなっていました。  これまで毎年のように観察個体を決めて、定点観察を続けてきましたが、このような事は1度もありませんでした。親は産卵後に、ヒトデやウニなどの外敵から卵を守るために、全てのベリジャー幼生がハッチアウトするまでは、その場を離れることがありません。ところが、今回に限ってはどのような理由かは分かりませんが、親

          ボウシュウボラの卵守り行動(定点観察)

          ヤマトメリべがでました

           2月の3週と4週にスクーバダイビングのウインターセッションを行いました。この実習は、既にCカードを取得している学生を対象におこなっているもので、特に透明度が良くなり、生物が面白くなる冬にキャンパスのある三保真崎海岸で開講しました。  この実習では、毎年のように面白い生物が見られることから、サマーセッションよりも人気があります。そして、今年は劇レアさんが登場しました。 なんと!ヤマトメリべが出たのです。  ヤマトメリベ(Melibe japonica)は、裸鰓目(らさいも

          ヤマトメリべがでました

          スクーバダイビング実習(閉講)

           2024年2月22日(木)に十数年前に立ち上げた本科目が満了しました。 これまで閉講した関連する科目では、スイミング理論・実習、スキンダイビング理論・実習、フリーダイビング実習など、潜水(スクーバダイビング)のメソッドやフィロソフィを向上させる授業を担当してきました。理論・実習に関しては、非常勤講師時代の科目なので、2000年代初頭の実習です。  時代の変遷や履修者のニーズを考慮しながら、自分なりの正解を授業の中で伝えてきました。思い返せば自分の専門であるが故に、時には満

          スクーバダイビング実習(閉講)

          この生き物は?

           先月、ダイビング観察を終えて、そろそろエキジットしようかと浅瀬に向かっていると水深3mほどのところで、見慣れないフサフサの握り拳大の塊が波に揺れていました。 初めは、このフサフサが触手に見えたので、動物だと思って写真を撮っていました。観察している内に、触手にしては揺れ方があまりにもフワフワしているので、シャッター速度を上げて撮影した画像を家に戻ってから現像してみると、繊維っぽい質感でした。 SNSにアップして、周辺の反応に期待しましたが、既知の生き物であることは間違いないよ

          この生き物は?

          答辞(私の子どもの話です)

           先日、私は所用で出席できませんでしたが、息子の卒業式がありました。 答辞 週末には節分を迎え、暦の上では春に季節を移します。  先生ならびに職員のみなさま、在校生のみなさん、本日は私たちのために、このような盛大な卒業式を挙行していただき、誠にありがとうございます。  そしてお忙しい中、ご出席いただきましたご来賓の皆さま、保護者の方々に卒業生一同、心よりお礼を申し上げます。  本日、私たち第62期生は、先に皆さまから賜った心温まる言葉を胸に卒業します。この答辞を文字に起こ

          答辞(私の子どもの話です)

          ニシキフウライウオとカミソリウオ

           冬をスタートにするか春をスタートにするか、あるいは新暦・旧暦を考慮するかで、シーズン期間に関する意見が別れるところではありますが、例えば1〜3月を冬と考える年初をスタートするパターンと4〜6月を春と考えて、ここをスタートとするパターンに別れます。もちろん、南北に長く太平洋岸と日本海岸がある日本ですから、場所によって月の季節感が違いますし、人によってもその感じ方は違うと思います。  一般的には「春夏秋冬」と言いますので、日本らしい「年度」を尊重した春をシーズンのスタートとする

          ニシキフウライウオとカミソリウオ

          晴天のセンレキ

           今年のお正月も天気に恵まれましたね。本来は、潜り続ける予定でしたが、少しは体を休めようと思って、映画を観たり、次回の論文の資料を集めて構想を組み立てたり、画像の整理をして過ごしました。  しかしながら、それも3日が限度でした(笑)。どう考えても今日は透明度が良いに決まっている。朝、海を見に行って、表層の青さを見て確信しました。マクロからワイドにチェンジ!だと。  慌てていて、ワイドポートに撥水スプレーを忘れてしまい、こんな水滴のついたカットになってしまいました。  冬にな

          晴天のセンレキ

          初潜り

           もぉ少し、華やかな画像をとも思いましたが、私が常日頃からフィールドワークをしている三保真崎は、稀少生物の宝庫なので、もちろん季節来遊魚や無効分散種も取り扱いますが、基本路線は他のダイビングポイントでは、あまり出てこない生物が中心となります(ちなみに、スベスベオトヒメエビとシュンカンハゼです)。  ご挨拶が後回しになってしまいました。  明けまして、おめでとうございます。  例年ですと12月になれば、1〜2cm程度の幼魚がゴチャっと溢れかえっているのですが、この冬は一向にそ

          潜り納め

           予報で知っていましたので、この雨にやられに行った訳ではありません。 午後から、準備万端でスクランブルダイブして、今年一年の感謝を三保真崎にしてきます。  にしても、今年も例年に違わず怒涛の生態系北限上昇傾向が強かったように思います。対岸の情報を見聞きしていると、本当にここが駿河湾なのか?と疑ってしまう事例のオンパレードでした。三保に言われたくないよ(笑)って思うようなこともありましたが、故益田一先生が「三保は日本のガラパゴスだからなぁ」というほどの場所ですから、何が出ても

          おつきさま

          今年は、晴天の満月に恵まれた年でした。 明日から師走になり、11月と同じ27日に令和5年最後の満月を迎えます。 この満月に大きな違いがあるとすれば、今月は18:16が真満月だったので、真円の満月を撮影することができたのですが、小雨混じりの天気でその時間に月を見ることは叶いませんでした。12月は真円が9:33なので、早朝の月入りを狙う方が真満月により近い撮影ができそうです。 トップの画像は、11/27の早朝に撮影したカットで月入り直前なので、ウサギさんが逆立ちをしています。また

          おつきさま

          続・サクラダイの産卵(まとめ)

          すでにガイド会「世界の海ブログ」で、この件については触れましたので、ここでは焼き直しになりますが、まだ賞味期限内の話なので、お付き合いください(画像も使い回しです)。 三保真崎におけるサクラダイの産卵場所が変化した点については、ガイド会のブログだけでなく、その他のSNSでも発信している通りです。観察を始めて30年ほど経過しましたが、場所の移動は初めての経験であったため、その変化に気付くのが遅くなってしまいました。 例年産卵が行われている場所に、全くサクラダイが居なければ、

          続・サクラダイの産卵(まとめ)