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サードアイ ep4 額の手術

 気が付くと俺は硬いベッドの上だった。ウィーンという微かな機械音がする。ここはどこだ。起き上がろうとするも、身体が思うように動かない。向こうから話し声が聞こえる。二、三人くらいか。しばらく様子をみることにした。

「よくもまあ、こんな大物を一人で引き揚げてきやんしたね。ステファンにしては上出来、でさぁ」

「だって、レッドアイの持ち主だよ。野放しにしておくわけにはいかないよ」

「正確 には ファイヤーレッド アイ デス」

と、とんがった女の声が平たく拡がる。

「そうそう、今や希少なファイヤーレッドアイでさぁ。それにしても、指で無理やりこじ開けるなんぞ、びっくり仰天でやんす。おかげで大手術となりやんした」

「仕方なかったんだよ。じゃあ、あの男にどうやって説明したらよかったと思う?あなたは取り込まれてます、急いで元の世界に戻らなきゃいけませんって言ったところで、はい、そうですか、とはならないでしょうよ。こっち側の記憶をなくしちゃってるんだから。それに、あのまま放っておいたら、いずれ脳がやられてただろうし」

「それでもって、指をずぶずぶって入れて探り当てたってわけでっか。案外ステファンは大胆でんな」

「だから、仕方がなかったんだってば。ボクだって、できればしたくなかったよ。久しぶりに過去世に戻って、順調にクリーニングしてたっていうのに、すぐにこっちに帰ってくるはめになっちゃったんだから」

「そうでっか。それはそうと、本当に、やつの額に、例の札が貼られたんでっか?」

「うん、本人がそう言ってた。老人に貼られたって話だったけど、たぶん、アリフの仕業だと思う」

「アリフ?なるほど。てことは、奴らにこっちの情報が洩れてるってことでっか」

「おそらくそうだろうね」

 俺は、なまくら頭で懸命に考えた。過去世だと?脳がやられる?何を言ってやがる。ここはいったい、どこなんだ。そんでもって、こいつらはあのじじいと知り合いってことか。

「ところで、こやつの名前はどうしまっか?」

「うん、なんとなく、これかなっていうのはあって」

「おっと、お早い。さぁ、さぁ、どんなんでさぁ」

「黄猿と書いて、オウエン。どうかな」

「オウエン、でっか。ふむふむ。なかなかいい得て妙。さすが、ステファン!」

 オウエンだと?そりゃ、確かに昔っから、猿にちなんだ通り名が多かったけど、そんな外国語みたいな名前で呼ばれたことはない。

「ステファン の意味は 捨てた 扇 デス」

と、エコーがかかったような女の声が響く。

「ミチエル、ボクの名前の由来はいいよ。それより、オウエンでいいかどうか計ってもらえない?」

かしこまりましたという女の声が部屋にこだました。

 身体の感覚が戻ってきたので、そろそろ起きてこいつらをのして、家に帰るとするか。男二人と女一人ならさくっとやれるだろう。そう見積もって、勢いよく起き上がる。だが、女は一人じゃなく三人、全員同じ顔で一斉にこっちを振り返ったと思ったら、あっという間に囲まれて押さえつけられてしまった。



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