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三河の中心にて桜とフットボールを愉しむ~徹壱の小さな旅(岡崎篇)~

「旅とサッカーを通じて世界を繋げる」というユニークなテーマを掲げて、この2月にスタートしたOWL magazine。「主筆」的存在である中村慎太郎さんをはじめ、さまざまな書き手の皆さんが、それぞれ独自の視点と筆致で魅力的な「旅とサッカー」のテキストを提供している。そんな中、最年長者として末席を汚している私は、先月は「旅とはなんぞや」の話をぐずぐずと続けてしまった。

 私が国内外をあちこち転戦しながらも、実のところそれが「旅」ではなかったのは事実であり、まずはその前提をしっかり説明しておく必要があった。とはいえ、いつまでも観念的な話ばかり書き連ねていても、せっかくスタートした新しい試みに水を刺しかねない。けれども、最近はすっかり旅とはご無沙汰だし……などと思案していたら、先日久々に「旅らしい取材」というものを経験することができた。

 4月5日から7日まで、2泊3日で愛知県の岡崎市を訪れた。JFLに所属するFCマルヤス岡崎という企業チームを取材するためである(次号『フットボール批評』にて掲載予定)。取材テーマのマニアックさは相変わらずだが、それ以上に岡崎市という土地には多少期するものがあった。というのも、代表戦やJリーグの取材で名古屋や豊田を訪れることはあっても、岡崎にはとんど縁がなかったからだ。ちなみに愛知県内における人口規模では、名古屋、豊田に次いで第3位である。

 本稿は、ただ単に「岡崎よいとこ一度はおいで」的に現地の魅力を紹介することを目的に書かれたものではない。かの地を取材で訪れたことが、なぜ「旅」を感じられたのか? 多くを期待しなかった岡崎取材が「旅」たり得た理由について、写真で振り返りながら考察することにしたい。

 新幹線のぞみに乗って、東京から名古屋へ。さらに名古屋から東海道本線快速に乗り換えて、30分ほどで岡崎に到着する。ここから先、ゆっくり昼食を摂れる店がなさそうなので、こちらのお店に入る。岡崎での最初の食事は、1200円のローストビーフ丼。思っていたよりも丁寧な作りで、じっくり肉の食感を味わいながら今後のプランについて思いを巡らせる。

 岡崎滞在初日は、関係者へのインタビュー。岡崎駅から愛知環状鉄道に乗って、三河上郷駅へ。そこからタクシーに乗って、マルヤス工業の岡崎工場に向かう。取材1日目は関係者へのインタビュー。北村隆二監督、山村泰弘理事、塩崎正志GM、そしてこのほど現役復帰を発表した森山泰行チームディレクターにお話を伺う。北村監督と森山さんとは、2006年のFC岐阜(当時東海リーグ1部)の話で大いに盛り上がった。

 1日目の取材が終了。さすがに1時間のインタビュー(+撮影)で4人分となると、いくら慣れている私でもいささか消耗する。それでも手応え十分の取材だったので、心地よい疲労感に包まれながら愛知環状鉄道に乗り込んだ。岡崎に戻るまでの間、インタビューで引き出すことができた言葉の数々を反芻しつつ、7000文字の原稿の構成を頭の中で組み立ててみる。

 岡崎で予約したホテルは、珍しく「夕食付き」であった。夕方に腹を満たしてから、この日仕上げるべき原稿を途中まで執筆。ある程度仕事をこなしてからこちらのお店で軽くひとり呑み。1本ずつ焼き鳥を注文できて、そこそこクオリティが高い。ただし、店内がちょっと騒がしく感じられたのが残念。

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