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ブックライターは《展開》《突破》《シュート》を繰り返す〜ライターなるには日記【第6回】<表>

 2022年になった。早いもので、OWL magazineで月2回の連載をさせていただくようになって、今年で3年目。昨年から始まった「ライターなるには日記」も、無事に新たな1年を迎えることとなった。本年も引き続き、よろしくお願い申し上げます!

 さて、この年末年始、皆さんはどのようにお過ごしだっただろうか? 私はといえば(前回も書いたが)年末年始は新しい書籍の準備に追われいていた。クリスマスらしいことも、正月らしいことも、ほぼ皆無。食事と睡眠以外、ほとんどの時間を原稿に向かうことに費やしてきた(夢の中でも原稿チェックをしていた)。

 そして年が明けた1月4日の夜、すべての仕事が手元から離れることとなった。ほっとするのも束の間。今の時代はブックライターも、プロモーションに精を出さなければならない。そんなわけで、1月27日から発売される、新しい書籍を謹んで皆さんにご紹介することにしたい。

カバー帯なし

 いかがであろうか? もしかしたら「え?」と反応される方もいるかもしれない(特に長年の読者であれば)。

 まず、カバーデザイン。選手がドーンとカバーの中央に配されている(ちなみに撮影者は私)。次に、タイトル。『●●フットボール』とか『蹴球●●』ではない。さらに、著者名。「プロサッカー選手/松本光平」となっており、私は「構成」という位置づけになっている。加えて、目ざとい方であれば、版元が「KADOKAWA」であることにも気づくことだろう。

 これまでの書籍ではなかった「選手もの」であり、著者ではなく構成として書籍に携わり、しかも版元は天下のKADOKAWA。「テツイチ、どうしちゃったの?」と思われても致し方あるまい。しかしながら、これは私なりに考えての選択である。ボールを持った選手が、選択できるプレーは大きく3つ。すなわち、シュート、突破、そして展開である。今回の選択は、まさに《展開》であった。

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 書籍づくりに関して言えば、ここ5〜6年の私は国内における「地域とフットボール」がメインテーマだった。2016年の『サッカーおくのほそ道』は、3年ぶりの書籍ということで《展開》。その続編となる2020年の『フットボール風土記』は《突破》。そして国内取材の集大成となる2021年の『蹴日本紀行』は《シュート》ということになる。

 シュートを打った場合、コーナーキックにならなければ、いったん自陣近くまで戻ることになる。相手GKがパスミスして、足元にボールが戻らない限り、すぐにシュートするチャンスはまずない。相手ボールを追いかけるところから始まり、奪ってからは展開や突破を繰り返しながら、次のシュートを目指すことになる。

 ボールを握ってからの展開→突破→シュートという流れは、実はブックライターのサイクルに非常によく似ている。デビュー作の場合は《シュート》一択だろうが、何冊も書籍を出し続けていると、時には《展開》や《突破》に面白さが感じられるようになり、《シュート》は選択肢のひとつでしかなくなる。今回は新しい書籍を肴に、そんな話をしてみたいと思う。

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 なお、宇都宮の近著『蹴日本紀行』は、徹壱堂でお買い上げいただきますと、著者サイン入りでお届けいたします。

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