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「自分の名前を獲得する」ということ〜ライターなるには日記【第2回】<裏>ゲスト:ユウ/ゆーさん

 先月から始まった当連載。「ライターなるには日記」では、<表>の部分を私自身の経験に基づいた「ライター論」を語りつつ、<裏>では若い世代のライティングのお悩み相談について、私なりのアドバイスをさせていただいている。

 今月までは、OWL magazineの書き手の皆さんが登場しているが、今後は一般の方からも募りたいと考えている。会員限定部分に連絡先が表示されているので、ライティングでお悩みをお持ちの方は、ぜひご一報いただきたい。

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 本題に入る前に今回も、新著『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』の話題から始めたい。このご時世ということもあり、出版記念イベントをオンラインのみで行ったことは以前に述べたとおり。販売についても、ECサイトの徹壱堂で300冊以上を売ってきた。

 とはいえ著者としては、やはり読者とのリアルな接点は確保したい。そこで10月9日と10日、かなっくホールで開催されるヨコハマ・フットボール映画祭2021にて、徹壱堂を出店させていただくことと相成った。

 私は両日とも、会場に詰めている予定。書籍をお買い上げいただいた方には、その場でサインさせていただくので、映画祭にいらした方はぜひ立ち寄っていただければ幸いである(すでにお買い上げの書籍についても、ご持参いただければ喜んでサインします)。

 さて、本題。今回の相談者は、OWL magazineのホープのひとり、ユウ/ゆー(以下、ユウ)さんである。ユウさんは、長崎県出身で現在は大阪府在住。建築のお仕事をしているらしい。一度、東京でお会いしたことがあるのだが、とても知的な風貌で気遣いもできるナイスガイ。前回登場した桝井かほさんと一緒に中村慎太郎さんにスカウトされ、今年4月にOWL magazineデビューを果たした。

「OWL magazineを通して、自分の文章をいろんな人に読んでもらえるのは、純粋にうれしいですね。いろんなことを言語化するのは、わりと得意だと思っています。理論立てて、丁寧に書くことができる場があるのは、ありがたいですね」

 そう語るユウさん。彼の書く文章は、サッカー(故郷のクラブであるV・ファーレン長崎を含む)と音楽がまずベースにあり、さまざまなジャンルに越境しながら、最後は自分の世界観にすとんと着地する。まだまだ文章は荒削りだし、もう少しコンパクトな組み立てを心掛けてほしいところではあるが、書き手としての筋は悪くはない。

 そんなユウさんだが、一方で書き手としての密やかな悩みを抱えていた。それはOWL magazineという、課金コンテンツで書くことへの戸惑いが、どうやら根底にはあるようだ。

「書きたいネタは、いくらでも思いつくんです。でも最近は『素人から本当のライターにランクアップするには、どうすればいいのか?』ということを、よく考えます。自分が書いているものが、お金を払えるだけの対価はあるのか? 読むに値するだけの価値があると認められないと、本当はいけないと思うんですよ」

 本当に、誠実で真面目な人だな、と思う。前回のかほさん同様、ユウさんもまた、専業ライターになりたいわけではない。けれどもOWL magazineで書くからには、課金コンテンツに耐えうる文章を提供すべきではないか──。そう、彼は考えている。そんな若者に、私はどんなアドバイスをすべきか?

 ここで小手先の技術論を述べるのは、愚の骨頂というほかない。私がユウさんに提案したのが、まず「自分の名前を獲得する」ということであった。すなわち「ユウ/ゆー」というハンドルネームから脱却すべき、というのが私の考え。以下、ユウさんとの語らいというテイストで、その理由を述べることにしたい。

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 ユウさん、こんにちは。ご出身は長崎とのこと。長崎といえば、V・ファーレン長崎。ジャパネットホールディングス傘下となって以降、長崎市内に商業施設を併設したスタジアム建設プロジェクトが進んでいたり、マスコットのヴィヴィくんが全国的な人気者になったり、J2の中でも話題性のあるクラブと言えるでしょう。

 実は私は、クラブが設立された翌年の2005年から、V・ファーレン長崎を現地で取材しています。アマチュア選手主体なので練習は夜、練習着はバラバラ、しかも国見高校のグラウンドを借りていたような、そんな牧歌の時代。当時のことを知る、数少ない取材者からすると、今のクラブの発展ぶりは、本当に眩しく感じられるばかりです。

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【以下、OWL magazine読者のみに公開】OWL magazineでは、サッカー記事や旅記事が毎日、更新されています。Jリーグだけでなく、JFLや地域リーグ、海外のマイナーリーグまで幅広く扱っています。読んでいるだけで、旅に出たくなるような記事が盛りだくさん。すべての有料記事が読み放題になる、月額700円コースがおすすめです。なお、宇都宮の新著『蹴日本紀行』は、徹壱堂でお買い上げいただきますと、著者サイン入りでお届けいたします。

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