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「3.11」以降の2クラブとJヴィレッジをめぐる物語〜フットボールの白地図 by OWL Magazine【第31回】福島県

<福島県>
・総面積
 約1万3783平方km
・総人口 約182万人
・都道府県庁所在地 福島市
・隣接する都道府県 宮城県、山形県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県
・主なサッカークラブ 福島ユナイテッドFC、いわきFC、FCプリメーロ、バンディッツいわき、JFAアカデミー福島
・主な出身サッカー選手 影山雅永、高倉麻子、時崎悠、時崎塁、髙萩洋次郎、遊佐克美

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「47都道府県のフットボールのある風景」の写真集(タイトル未定)のエスキース版として始まった当プロジェクト。前回は、阿波おどりと渦潮で有名な徳島県を紹介した。今回フォーカスするのは、10年前の東日本大震災で甚大な被害を被った福島県。福島県といえば、現在J3に所属する福島ユナイテッドFC、そしてJFLに所属するいわきFCが有名である。

 今年は「3.11」から10年ということで、サッカーを絡めながら震災を振り返る報道も多かった。それはそれで意義のあることだが、後付け的な記憶の修正には注意が必要だ。震災被害が甚大だった東北3県のうち、当時Jクラブがあったのはベガルタ仙台があった宮城県のみ。岩手県と福島県には、東北リーグ所属のクラブがあるのみで、震災直後に彼らが注目されることはまずなかった。

 福島県に関して言えば、ユナイテッドは前年から続く経営危機を乗り越えようとしていた矢先でのアクシデント。いわきについては、現在の体制になるのは2015年で、震災の年には前身となるチームさえ存在していなかった。よって、フットボールという観点から福島と震災を語るならば、これらのクラブを語る前に、ナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」にアプローチする必要がある。

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 47都道府県で3番目の広さを持つ福島県は、3つの地域に分かれている。越後山脈と奥羽山脈に挟まれた「会津」。奥羽山脈と阿武隈高地に挟まれた「中通り」。そして、阿武隈高地と太平洋に挟まれた「浜通り」である。先の震災で最も甚大な被害を被ったのが、Jヴィレッジがある浜通り。あの日、想定をはるかに超える津波に襲われ、悪夢のような原発事故を引き起こすこととなった。

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 震災から3年後、Jヴィレッジを訪れた時の1ショット。除染作業は陽がある間しか行えないため、作業員は早朝に出勤して16時には作業を終えて帰っていく。この時の取材は、JFAではなく東京電力の広報が窓口になっていたことに、あらためて施設が国の管轄下に置かれていたことを実感した。なお、ここを拠点に活動していた「東京電力女子サッカー部マリーゼ」は、原発事故により活動を自粛。その年の9月28日に正式に休部(実質的な解散)を発表した。

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