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「土地とクラブ」にこだわり続ける理由〜『フットボール風土記』著者インタビュー<後篇>

 今月は、OWL Magazineとのコラボレーションということで、新書について初の著者インタビューを前後編で掲載していただくこととなった。インタビュアーは大澤あすか編集長で、後篇の今回は第9章から第15章まで。前篇同様、あすかさんの感想や疑問に、著者である私が答える形式となっている。

 なお、ありがたいことにOWL Magazineでは、新著について書評やオムニバス企画を展開していただいている。個性豊かな素敵な文章が目白押しなので、こちらも併せてご覧いただければ幸いである。

・私たちはいかにして「宇都宮徹壱」と出会ったのか【OWLオムニバス】
・『フットボール風土記』の感想をみんなで書いてみた!【OWLオムニバス】
・【書評】『フットボール風土記』とあわせて読みたい二冊の本 『股旅フットボール』『サッカーおくのほそ道』(宇都宮徹壱)

第9章 最大の「Jリーグ空白県」でのダービーマッチ ホンダロックSC & テゲバジャーロ宮崎(2019年)

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──ホンダロックSCといえば、長年JFLで活動を続けてきた企業チーム。一方のテゲバジャーロ宮崎は、J3ライセンスも交付されてJFLでも上位を走っています(註:その後、J3昇格の条件となる2位以内が確定)。いったいどんなダービーが繰り広げられたのでしょうか?

 端的に言えば「凡戦」でした(笑)。しかも雨が強かったし、ピッチは水浸しだったし、選手も可愛そうでしたね。この宮崎取材は去年、ロック総統が企画した「宮崎ダービーツアー」に乗っかって実現したもので、テゲバの新スタジアム建設予定地やホンダロックの工場見学など、現地ではいいものをたくさん見せてもらいました。総統にはこの場を借りて、お礼を申し上げたいと思います。

第10章 なぜ「71番目のクラブ」は注目されるのか? 鈴鹿アンリミテッドFC(2019年)

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──鈴鹿アンリミテッドというと、もともとFC鈴鹿ランポーレという名前で、今季から鈴鹿ポイントゲッターズとして活動しています。こうした名称変更を含めて、何かと注目を集めている印象がありますが、いかがでしょう?

 クラブ名の変更を決断したのは、常務取締役の吉田雅一という人です。『お嬢様聖水』のロゴを胸スポンサーに入れたり、スペインから女性監督を招いたり、一連の仕掛けは彼の発案によるものです。「ウチは(J1から数えて)71番目なんだから」というのが口癖で、そのためには目立つことなら何でもやると(笑)。そういう振り切った発想もまた、アンダーカテゴリーには不可欠だと思いました。

第11章 北信越の「Fの悲劇」はなぜ回避されたのか? 福井ユナイテッドFC(2019年)

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──この福井ユナイテッドFCも、以前はサウルコス福井と名乗っていましたよね。運営会社が変わったことでの名称変更だったと記憶していますが、クラブのアイデンティティに関わることですので、サポーターの反発もあったのではないでしょうか? それから「Fの悲劇」というのは、横浜フリューゲルス消滅のことだと思いますが、どのように福井と関わってくるのでしょうか?

 これはJを目指す地方クラブの「死と再生の物語」です。Jリーグのオリジナル10に名を連ねたフリューゲルスは、21年前に吸収合併という形で消滅してしまいました。あの時はものすごく騒がれたものですが、アンダーカテゴリーでのクラブ消滅というのは、決して珍しい話ではありません。クラブのアイデンティティも大事ですが、それ以上に大切なもがあるということを気付かせてくれる物語です。

第12章 クラブ経営の「属人化」をめぐる物語 北海道十勝スカイアース(2019年)

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──こちらは私好みのビジネス系の香りがしますね。この北海道十勝スカイアースに限らず、スポーツクラブは少数精鋭の組織が多いぶん、仕事の属人化問題がついて回るのが常であるかと思います。このクラブでは、どんなドラマがあったのでしょうか?

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