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バラ売りライターがブックライターになるために〜ライターなるには日記【第3回】<表>

──書き手の50代って、いろいろ大変なんですね。

佐山
 というか「50代は結構大変だよ」ってこと、あまり上の世代から聞かされないでしょ? 避けられない現実としてのステージに差し掛かっているんだ、覚悟はできてますかってことは、もっとアドバイスされたほうがいいと思いますね。

 わが「心の師」佐山一郎さんへのインタビューからの引用である。お話を伺ったのは2013年、今から8年前である。宇都宮徹壱ウェブマガジンでのコンテンツであるが、今年5月に無料公開としたので、興味のある方はぜひ最後までご覧いただきたい(ちなみに2万字近いボリュームがある)。

 STUDIO VOICEの元編集長と知られる佐山さんは、書き手としてはサッカー以外にもファッションやアートや音楽などのさまざまな領域で活躍され、とりわけインタビューや書評の分野では独自のスタイルを確立されている。「業界の大先輩」というだけでなく、私よりもひと回り上の世代に属する佐山さんの動向は、12〜3年後の自分自身をイメージするための恰好のロールモデルでもあった。

 冒頭の「書き手の50代って、いろいろ大変なんですね」という質問も、50代だった頃の佐山さんの仕事をつぶさに見ていたからこそ発せられたものであった。自分自身が50代になってみて、いろいろ凹みそうになる現実に直面しても、ある程度の許容が可能なのは佐山さんのおかげである。ゆえに私自身、そろそろ誰かのロールモデルになり得る存在となるべきではないか──。

 当連載「ライターなるには日記」には、実はそうした思いも込められている。

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 さて、今回のテーマは「ブックライター」である。

「え? ペンネームの次は、いきなり本を出す話ですか? ちょっと飛躍しすぎませんかね」──。本稿を読んでいるライター志望者、もしくは若手ライターから、そんな疑義が起こるかもしれない。とはいえ当連載は、お悩み相談者からのリクエストに毎回応えるのが基本。もっとベーシックなお悩みがある方は、ぜひ有料部分に記載されたメールアドレスにご一報いただきたい。

 ブックライターである私の最新作といえば、こちらの『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』である。私にとっては12冊目の単著。フリーランスの書き手となって24年間なので、単純計算で2年に1冊のペースということになる。ちなみにコロナ禍となって以降、2冊の単著を出して来年の頭にも(こちらは構成だが)新たな書籍を準備している。まあまあ頑張っているほうだと、自分では思う。

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 書き手の50代になってみて気付かされるのは、仕事量そのものは40代の頃と比べて明らかに落ちているものの、幸いにして書籍の仕事は途切れていないことだ。もちろん書籍を出しているからといって、収入が安定しているとはいい難い。その代わり、ライターとしての寿命は間違いなく延びているという実感はある。ライターであり続けるには、ブックライターになることが最も確実なのかもしれない。

 そんなわけで私は、ことあるごとに後輩ライターに「ブックライターを目指したほうがいい」と伝えている。実はこれも佐山さんからの受け売り。ただし直接言われたのではなく、25年前に読んだ『ライターになる!』という本の中で、佐山さんが語っていたことだ。ライターを目指す人には、とても良い教科書だったのだが、残念ながら手元にはない(Amazonで検索してもヒットしなかった)。

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 なお、宇都宮の新著『蹴日本紀行』は、徹壱堂でお買い上げいただきますと、著者サイン入りでお届けいたします。

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