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本棚の奥の「シリウス文書」① 創作小説全6話


息子

達夫は週に2回の登校日を済ませ、帰宅すると早速メタバースの中に入った。ある時彼は秘密の場所の鍵を拾ってしまったのだ。鍵には十桁の数字が記されていた。昔はキーボードがあればそれを打ち込まなければならないようなスタイルだったのだろうけどメタバース内では扉に差し込むだけだ。
街を行き交う車、自転車に乗って風を切る人、買い物袋を持って歩いてる婦人。外の世界と何一つ変わらなかった。

空き地に忽然とある扉。
昔のアニメ映画のすずめの戸締まりの扉のようだ。達夫を鍵を差し込む。一瞬突風が吹くが怯まず中へ入っていく。中は広大な野原だ。そこにぽつねんとある瓦礫の山、これはインターネット内で削除対象になった情報が記されている。ワクチン情報、食品添加物、天皇家の秘密、バイデン家、陰謀論、暗号通貨・・・

達夫は面白がって情報を漁っていた。
ここに忍び込むようになって一週間くらいだろうか。瓦礫の中から一冊のファイルが出てきた。「シリウス文書」
達夫は他の情報とは違うただならぬ雰囲気を感じた。何かの交信記録のようだった。




パパ

裕和は素粒子の研究論文をまとめ上げた。
1週間後、会見発表を行う。
これを発表すれば世界が変わる。10年前までは在野に裕和と同じ様なことを考え書籍やYouTubeで発表する研究者は沢山いた。
しかし、アカデミズムの中ではご法度だった。
意識の正体は素粒子。
素粒子とは意識のことであると言うのは。
10年前に有害情報削除条約が国連で採決され、各国で採決された。書籍やネット上の情報は悉く焚書坑儒にあい権力者が管理しやすい社会の実現までもう少しというところまで世の趨勢は来ていた。
今の世で素粒子の正体は意識だと発表することは大学教授である立場を失うばかりか命まで取られる危険があった。
しかし、裕和は確信していた。肉体が死んでも意識は残る。残るどころか意識がこの世界を創っている。そしてその意識の正体は素粒子だと。


②に続く








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