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ジョバンニとカンパネルラの約束

『カンパネルラ、僕たち一緒に行こうねえ。』

ジョバンニは、こう云いながら振り返るともうカンパネルラはそこにはいなかった。
ジョバンニは胸をうって叫びそれからのどいっぱいに泣き出した。もうそこらが一ぺんに真っ暗になったように思った。
・・・

ジョバンニは眼を開いた。ばねのようにはね起きた。

そして、町まで一さんに丘を走って下っていった。

ジョバンニは、みんなの幸い(さいわい)のために走り出した。

それは、カンパネルラとの約束だったから・・

カンパネルラ、また僕たち2人きりになったねえ、どこまでもどこまでも一緒に行こう。

僕はもうあのサソリのように本当にみんなの幸(さいわい)の為ならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない。

「うん僕だってそうだ。」 カンパネルラの眼にはきれいな涙が浮かんでいました。

「けれども本当の幸い(さいわい)は一体なんだろう。」 ジョバンニが言いました。

「僕わからない。」 カンパネルラがぼんやり云いました。

「僕たちしっかりやろうねえ。」 ジョバン二が胸いっぱい新しい力が湧くようにふうと息をしながら云いました。

ある晩の夢の中で、1992年のある夏の日の自分がいた。大学の授業で初めて出会う同級生たちと菅平高原にいる風景だった。

不思議だけど、そこにいた人達は、この頃僕が出会った人たちと似ていることが分かった。というか直感で、同じ人と巡り会っているのが分かった。

その場所に、ある一人の女性がいて仲良くなっていたはずなのに、その記憶が失われていた。

その記憶は、とても僕にとって大切なメッセージのような気がした。あの日、未来(今)の僕が必要な時が来る日まで、ずっと誰かが隠しておいてくれたようにも思えてきた

・・・夢の中で記憶の手がかりを探した・・・

いくつかのメッセージを辿っていくと、ある人に行き着いた。

彼女の瞳は、その失われた記憶を知っていた。

銀河鉄道999のメーテルのように愛しくて、潤んだ瞳の奥が輝いていた。

そして僕は、『銀河鉄道の夜』のジョバンニのような気になって眼が覚めた。

カンパネルラがサウザンクロスに先に行って待っているから、約束を果たさねばならない。

本当の幸い(さいわい)のために、二人でしっかりやろうって、約束したから。

それまでは、百ぺんぐらい灼かれないと、あかいめだまのさそにになれないな。

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