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未来人 ー香川の未来がそこにあるー

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香川県の未来を切り拓く「人」に焦点をあて、取材しています。 各人が語る「理想の街」から、まちづくりのヒントを探る企画です。 創刊45年、発行部数46,000部のタウン情報誌「ナイ… もっと読む
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文化をつなぐ責任 建築で変える未来

1952年に設立した総合建設業の富士建設(三豊市)は、「建築は文化なり」の言葉を大切にしてきた。同社は1970年、丸亀藩京極家の大名庭園として知られる中津万象園(丸亀市)の所有者となる。そこから12年の歳月をかけて修復作業を行い、1982年に庭園を公開。大名庭園を未来につなぐ、維持保全活動を担ってきた。同社代表取締役の真鍋有紀子さんは、その経験から「公益にお金を投じる文化が必要」と声を上げる。建築で地域を元気にすると志し、勇猛果敢に挑戦する真鍋さんに話を聞いた。 ▽本気で

多様な生き方が肯定される社会に 足りないものは自らつくる

医療の目的は、赤ちゃんからお年寄りまで全ての人が健康で長生きできる社会の構築にある。けがをしたり病気になった時に、安全で質の高い医療サービスを受けられることは、いい街の基盤とも言える。 人生観が多様化する昨今、ウェルビーイングなどの言葉で表される一人ひとりの幸せに医療がどのように貢献できるのか。他分野との連携や共創の事例が生まれるなど医療の概念は拡大している。 今回の未来人は、高松市で「医療」に携わり地域に足りないものを自らつくろうと行動する二人に焦点を当てた。 一人は

愚直に恩返しを 幸せ感じる街、高松へ

 総合建設業の谷口建設興業(高松市)は、香川県を中心に公共工事のほかマンション、工場、商業・福祉施設などを幅広く手掛ける。土地活用やログハウス「BESSの家」のフランチャイズなど他分野へも事業を展開してきた。  同社専務取締役の谷口雄紀さん(35)は、複数の法人と共同で立ち上げた農業生産法人「仏生山ファーム」の代表の顔を持ち、ことでん仏生山駅近くの香川県農業試験場跡地で農業を起点とした賑わいづくりに取り組む。その傍ら2021年に高松青年会議所の第61代理事長に就任した。

つながりが生む変革の息吹 関わりしろが地域の魅力に

「こんぴらさん」の愛称で知られる金刀比羅宮(ことひらぐう)の門前町、香川県琴平町。江戸中期から盛んになった「こんぴら参り」などで、1988年には年間520万人の観光客が訪れた、県を代表する観光地だ。ただ、同年以降は減少傾向が続き、2019年は263万人。新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年は153万人となった。そのような中、同町を「誰もが何度も訪れる町に」と、こんぴら参りの趣と共に新たな魅力をつくり出すプロジェクトが民間主導ではじまった。その一つ、アーティストらが滞在

地域に誇りを持つ 未知への挑戦を続ける四国水族館

四国水族館(香川県宇多津町)は、2020年6月にオープンした四国の次世代型水族館。鳴門のうずしおや太平洋の黒潮など、四国の海や河川の織りなす景観を再現する。まるで水中を散歩しているような居心地のよさが特徴。魚名板を設置しないのは、水中の世界観を感じてほしいからだ。 運営会社である四国水族館開発代表の流石学(さすがまなぶ)さん(42)は、医療の経営コンサルタントとしての顔も併せ持つ。かつて島根県で地域医療の充実に取り組んだ異色の経歴で、地方創生の観点から水族館を経営する。流石

歩み方は人それぞれ 多様性が社会を強く

「多様性」はSDGs(持続可能な開発目標)を実現するうえでキーワードとされる。それぞれの多様性を認め、一人ひとりが自分らしく生きられる社会にするために、政府や企業、そして個人が取り組みを進める。 今月の未来人に招いたのは、自分に正直に生きる二人の女性。ビジネスコーチングやファシリテーションが専門の株式会社ONDO(高松市)代表の谷益美さん。香川県に特化した総合求人サイトを運営する株式会社しごとマルシェ(観音寺市)代表の飯原美保さんだ。 谷さんは、建材商社、IT企業の営業職

温浴施設が生む交流 心のゆとりが街を豊かに

西日本で温浴施設を展開する創裕(高松市)代表の川北祐一郎さん(44)。2020年4月に社長に就任し、同年8月に高松市多肥上町で大型温泉施設「高松ぽかぽか温泉」を開業した。同社が手掛ける18の温浴施設の中で最大規模だ。 高濃度人工炭酸泉や天然温泉の露天風呂、2種類のサウナと、異なる水温の水風呂などをそろえる。香川県初登場の複合型岩盤浴では、アロマ水の熱い蒸気が室内に広がる「ロウリュウ」の岩盤浴が人気。岩盤浴のエリアには約1万冊の漫画とコワーキングスペースを用意した。 飲食と

挑戦者が集う場所 自分たちでつくる地域の未来

そうめん店「まさご屋」の真砂泰介さん(34)が運営する「麦縄の里(高松市東植田町)」。この春、施設内に次々と個性的な店舗がオープンした。各店舗のオーナーは20代から30代の若者たち。動物性の食材を使わないハンバーガー店やこだわりの材料で作るシュークリーム店など6店舗が入る。各店舗は事業を通じて、「どうすれば持続可能な社会を実現できるのか。そのために何をすべきなのか。」を私たちに投げかける。若者の挑戦を支援し、自らも地域づくりに奮闘する真砂さんに理想の街を聞いた。 ▽当事者意

境界を溶かせ 多様な価値観が混ざり合う街へ

予備校の濱川学院(代表 濱川 武明さん)とITスタートアップ企業の「Dreamly(ドリームリー)」(代表 ラーシュ・ラーションさん)は5月31日、高松市の常磐町商店街にインキュベーション施設「BRIC(ブリック)」を開いた。施設の1・2階に共同で利用するコワーキングスペースを20席、3階に事業所として利用するシェアオフィスを5室用意した。4階には、スウェーデン出身のラーションさんが2019年に起業したドリームリーがオフィスを構える。 ブリックは、濱川さんとラーションさんが

挑戦できる環境をつくる ワクワクする東かがわ市へ

香川県の東端、約3万人が暮らす東かがわ市。130年の歴史をもつ手袋産業は、国内生産の約9割を担う。ハマチ養殖発祥の地で、晩秋には4キロ以上に育った「ひけた鰤(ぶり)」が各地に出荷される。 東かがわ市長の上村一郎さん(40)は、2019年4月の市長選で初当選を果たした。香川県の8市9町で一番若い首長だ。陸上自衛隊員、PR会社・広告代理店 、国会議員の秘書など異色の経歴を持つ。 まちづくりの基本理念に「誰もが知っている、ワクワクするまちへ」を掲げ、情報発信や市内外の企業との

帰る場所を守り続けたい 感謝を胸に、地域から世界へ

工業用のステンレス製タンクや熱交換器などを製造する香川県綾川町のサンテック。長年培ってきた職人たちの高い技術が成長の基盤だ。青木大海さん(代表取締役)は米国大使館やリーマン・ブラザーズ証券に勤めた後、2008年に30歳でサンテックに入社。亡き父の後を継いで2013年に代表となった。海外からの人材を積極的に受け入れ、難民認定を受けたシリア人など従業員の約2割が海外の出身者。取引は中国、ミャンマー、モロッコなど世界各地にひろがっている。3月には「ホーム」をコンセプトにした新本社工

街に居場所と出番を にぎわう丸亀市へ

丸亀市は、香川県の海岸線側の中央部に位置し、約11万人が暮らす。古くから海上交通の要衝として、物資の集散や金刀比羅宮(こんぴらさん)の参道口として大いににぎわった。扇の勾配と呼ばれる美しい石垣を誇る丸亀城が市のシンボル。 その丸亀で官民連携のまちづくりをけん引しているのが、まちづくり会社HYAKUSYO代表の湯川致光さんだ。香川県職員時代から個人活動で丸亀に関与。通町商店街の活性化プロジェクトや今ある資産を活用して地域の課題解決を目指す「リノベーションまちづくり」を仕掛けた

クリエイティブの価値を高める 多様な創造性が集まる街へ

高松市牟礼町でデザイン事務所を経営する村上モリローさんは、クリエイティブ(広告、PR、ブランディングなど)の力をまちづくりに活かそうと取り組んでいる。25歳で帰ってきた香川県は、クリエイターとして生きていくには過酷な環境だった。今でも景気や企業業績が悪くなると真っ先に削られるのは広告宣伝費。「誰も変えようとしないなら自分が変えるしかない」とやむにやまれず動き、商品やイベントを通じてクリエイティブの価値を発信し続けている。広告代理店だけに依存しない、地方のデザイン事務所としては

少数者が溶け込める街に 意識の壁なくし自然体で

観音寺市で福祉事業を営む毛利公一さんは、障害者を含むマイノリティー(社会的少数派)の人たちが心地よく暮らせるまちづくりに挑んでいる。23歳の時、不慮の事故で首から下を動かせなくなった。身体の自由を失い、障害者に向けられる同情を含んだ視線に気付く。一方、留学で訪れた米国は自分が車いすに乗っていることを忘れるほど周囲の態度が自然だった。「障害者に抱くマイナスのイメージこそが障害者をつくる」。意識の壁を取り払い、誰もが自由に生き方を選べる社会の構築を目指す毛利さんに理想の街を聞いた