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#1479 「個別最適化された学び」ではなく「個別最適な学び」へ~ICT活用と他者との協働と自己調整を重視して~

「個別最適な学び」と「個別最適化された学び」は、言葉は似ているが、中身は似て非なるものである。

AIドリルを活用する「個別最適化された学び」では、子どもの学習が機械に管理され、受動的な学びを生んでしまう。

重要なのは「個別最適化された学び」ではなく、「個別最適な学び」である。

すなわち、子ども自身が自己調整して、自己に合った「個別最適な学び」を創り出していくことが重要となる。

教師は、子どもが自己調整できるような「余白」を授業に用意することが求められるのだ。

では、「個別最適な学び」が実現するためには、どのような要素が必要なのだろうか?

以下3点について述べていく。

1 ICTの活用

これまでの教師主導の一斉授業では、知識のリソースを教師だけが握っており、ゲートキーパーである教師がそれを子どもに直接与えていた。

しかし、ICTの到来により、その様相が変容する。

子どもたちはネットワーク上のリソースにアクセス・活用しながら、子ども自身で学習を進めることができるようになった。

これにより、「学習のパラダイム転換」が起こる。

教師の一斉指導を受けなくても、子どもが自律的に学習を進めることができるようになったのだ。

つまり、子ども自身がインターネット上の知識や情報にアクセスすることができるので、学習の内容・方法を自律的に選択できるということである。

ICTの活用は、「個別最適な学び」を創り出していく上で欠かせない要素となったのだ。

2 他者との協働

「個別最適な学び」が、「弧立的な学び」「自己完結的な学び」になってはいけない。

それでは、「学校」という社会的な場で集団による学習をする意味がなくなる。

「個別最適な学び」を自分なりに見出していくためには、他者との協働・交流・かかわり・対話が欠かせない。

自分とは個性の違った他者がいるからこそ、新しい知識や情報に触れることができるし、新しい学習方法を知ることができる。

つまり、他者の学びを参考にすることで、自己の学びに還元するのである。

また、他者と対話することで、自分の考えが広がったり、深まったりする。

このような他者との協働があるからこそ、より「最適な学び」に近づいていくのである。

自分だけの独りよがりな学びは、「最適な学び」とは程遠いのである。

他者との協働を、自己調整に生かすことが重要なのである。

3 自己調整

最後に何と言っても「自己調整」である。

「個別最適な学び」を語る上で、落としてはならないキーワードである。

「個別最適な学び」を自分なりに創り出すためには、学習者である子ども自身が自己の学びを自己調整しなければならない。

自己の学びの内容や方法を振り返る。

学びの進捗状況を把握する。

次の学びの見通しをもつ。

自分が判断したことの妥当性を自ら確認し、学びの修正をする。

このような自己調整を、メタ認知を働かせながら行うのである。

そして、自己調整の際には、他者との協働で得られた視点も生かす。

これを繰り返すことで、自分なりの「個別最適な学び」を創り出していくのだ。

そのためには、そのプロセス・機会を教師が用意する必要がある。

教師が全てをコントロールする「中央集権的な授業」から脱却しなければならない。※これを「中央処理型学習モデル」と呼ぶ。

授業の中に、子どもたちが自律的に学ぶことができる「余白」をつくる。

これにより、子どもたち一人ひとりが分散し、自らの課題を解決するために自律的に(自己調整的に)学習を進めつつ、他者とも協働・協調しながら学びを深めていくことができる。※これを「自律分散型学習モデル」と呼ぶ。

そして、上記のような「自己調整」は「主体的に学習に取り組む態度」に関連する。

つまり、「個別最適な学び」と「主体的に学習に取り組む態度」も密接に関連する。

「主体的に学習に取り組む態度」を指導・評価するためには、「個別最適な学び」を実現しているかどうかが問われるのである。


以上、「個別最適な学び」を創り出していくために必要な3つの要素を整理した。

「ICT活用」「他者との協働」「自己調整」が相乗的に絡み合うことで、「個別最適な学び」を実現することができる。

このような「学習者主体の学び」を進める上では、教師の役割が以下の2つに集約される。

それは「学習環境デザイン」と「フィードバック」である。

子どもが自己調整を実現できるような学習環境をデザインする。

さらに、一人ひとりの子どもの学びを見取り、形成的評価をして、フィードバックを与える。

このような役割にシフトしていくのだ。

そして、上記のような「学習者主体の学び」を進めていくと、一斉授業のときに味わうことのなかった「不確実性」を感じることになる。

「教師対集団」という構図が、「教師対子ども一人ひとり」に変容するからである。

したがって、教師としての在り方がより問われるようになるため、「省察」がより必要になっていくのだ。

常に自己省察を行おうとする教師としての信念と態度が、子どもたちの「個別最適な学び」を後押しするのである。

これからも自己省察を繰り返しながら、子どもの「個別最適な学び」を実現していきたい。

では。


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