#1739 なぜ説明しても伝わらないのか?
私は下記の記事でも述べた通り、低学年相手の指導に苦労している。
説明が全然伝わらないのである。
こちらの意図・意思が通じないのである。
そんな悩みを抱えていると、ある1つの書籍に出会った。
今井むつみ氏の『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?」という書籍である。
この書籍を読み、自分が書いた記事がある程度、的を得ていることを確信できた。
今回は、この書籍からの学びをまとめていく。
1 「話せばわかる」という誤解
・人間は、相手の話した内容をそのまま脳にインプットするわけではない。
・言語は、受け取り手の解釈によって意味付けされる。
・人間にはそれぞれの「知識や思考の枠組み(スキーマ)」がある。
※経験、学び、興味・関心、環境から形成される。
・互いのスキーマが異なっているため、伝えたい情報を全て共有することはできない。
・人は「忘れること」が前提である。
※言った側と聞いた側の重要度で、どう記憶しているかも異なる。
・記憶は曖昧なので、簡単に別の事実がつくり上げられる。
・言っても伝わらないを生み出す原因
(1)「理解」について勘違いしている
①記憶力のいい人ほど、理解力がある
※「理解」と「記憶」が関係していないわけではない。
※理解しているからこそ、結果的に記憶できている。
②記憶違いは、理解が足りていないからである
※理解がしたからこそ、記憶の間違いが起きる。
(2)視点は「偏る」ものである
①「視界に入った=見えている」ではない
②「認識」も偏るものである
(3)「専門性」が視野を歪ませる
①偏った視点をもつ人が集まるからこそ、より広い視点を獲得できる
②様々な視点、立場、専門性で多面的・多角的に考える
(4)人間は「記憶マシーン」ではない
①重要でないものを「忘れる」からこそ、記憶がアップデートされる
②身体化するまで繰り返すようにする
(5)「言葉」や「感情」が記憶を書き換える
①言葉の違いで記憶の仕方・取り出し方が変わる
②そのときの感情で記憶の内容が変わる
(6)「認知バイアス」で思考が止まる
①代表性バイアス ②信念バイアス(神聖な価値観)
③知識の錯誤バイアス ④疑似相関バイアス
⑤小さな世界バイアス ⑥相対主義バイアス
⑦AかBかバイアス ⑧流暢性バイアス
2 「言えば伝わる」を実現するために
・「相手の立場」で考える。
※相手の置かれている状況を分析し、それに応じた提案をする。
※「相手の視点」で物事を考える。
・思考は2種類ある。
①ファスト思考(システム1)
②スロー思考(システム2) ※メタ認知
→自分の思考の過程や出した答えを振り返る②が重要となる。
・こちらの主張の「理由」を伝える。
※相手の納得を得られる。
・「感情」に気を配る。
➀理由を伝える
②相手の感情に寄り添う
③悩みを共有する
※感情はときに、優れた直観を生み出す。
・「具体」と「抽象」をうまく活用する。
(1)よくあるエラー
①特徴的な代表例を全体だと思い込む
②別のグループのものを、同じグループだと思い込む
③具体と抽象がそもそも紐づかない
(2)抽象化の利点
①記憶を助ける
②理解を助ける(表象がつくられる)
③言葉で抽象化したイメージを共有できる
(3)具体を活用する
①複数の具体例を示す
②強烈な具体例を1つだけ出すことはNG
③具体的な体験を伴うことで知識が定着する
・「意図」を読む。
※相手のことを推測する。
①どういう視点なのか
②どういうスキーマをもって状況を捉えているのか
③状況に対してどういう感情をもっているのか
・コミュニケーションの達人の特徴
(1)失敗を成長の糧にする
①失敗 ②分析 ③修正 ※メタ認知が必要
(2)説明の手間を惜しまない
①相手と自分のスキーマは異なることを前提にする
②相手のスキーマが違っていても伝わるように伝える
③どんなスキーマの人にも通じる具体的な説明を考える
(3)コントロールしようと思わない
※相手を動かすポイント
①関係性を築く(自己開示、質問)
②相手の成長、大切にしていることを意識してコーチングする
(4)「聞く耳」をもつ
①感情を表に出さない
②プラスのフィードバックをする
・ビジネスの熟達者になるためには「直観」を磨く。
※「すばやいけど精度が低い思考」であるシステム1。
→「真剣で工夫を凝らした思考」であるステム2で訓練する。
→「すばやくて、精度が高い、最高の判断ができる思考」となる。
※生成AIの活用だけでは、直観を磨くことはできない。
以上が、書籍からの学びである。
私は上記で紹介した過去の記事において、低学年の子どもたちに話が通じない原因・理由を以下の3点にまとめた。
1 意識・認識が異なるから
2 忘れてしまうから
3 無関心だから
1は「教師と子どもではスキーマが全く違う」ことを意味している。
2は「教師は自分の指導事項を覚えているが、子どもはそれを記憶していない」ことを意味している。
3は「相手の大切にしていることを意識できていない」ことを意味している。
全てこの書籍に書いてあることであり、自分でも驚いた。
・子どもの立場やスキーマを推測する。
・常にメタ認知を働かせ、自分の説明の仕方を磨く。
・納得感を得るための「理由」を伝える。
・「具体」と「抽象」をうまく活用する。
・普段から子どもだちとの良好な関係性を築く。
・子どもの興味・関心に応じて説明や指導の仕方を変える。
上記のことを実践し続け、子どもたちに自分の思いを伝えたり、指導をしたりしていきたい。
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