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【特別公開版】くらげ×寺島ヒロ 発達障害あるある対談 第331回 「『仕事をする』って『机に向かっている』というだけではないんだね?」

このnoteは有料マガジン「くらげ×寺島ヒロ 発達障害あるある対談」より、くらげ氏の許可を得て抜粋、再編集したものです。「まとめマガジン」には発達障害とAI、そして変わる働き方についての記事を収録しています。

発達障害あるある対談(2022年12月21日更新分)

[く] こんばんは。くらげです。

[寺] こんばんは。寺島です。

[く] ここ2週間ほど体調とメンタルが崩れていたのに加えて仕事が増えまくってアップアップでした。完全にいろんなものがオーバーフローしています。

[寺] こちらも体調が悪い上に、アクシデントで仕事が増えちゃってもう本当に余裕がないです。

[く] 仕事が増えたのがアクシデントなんですか(笑)

[寺] いやいやいや、もちろん仕事はありがたいのですが、ASD としては突然仕事が降ってわくのは「いいこと」とは言いがたいんですよ。色々なことの調整が必要ですし心身的にかなり負担ですね。

[く] こちらはADHD 丸出しで「もらえるものはもらっておけ」精神で仕事をもらっていたらにっちもさっちもいかなくなってしまいました(笑)

[寺] ご繁盛で何よりですが、調整はちゃんとしましょうね!断るのも仕事のうちですよ?

[く] 本当に断るのも覚えないと死んでしまいそうです…。まぁ、以前と比較すればだいぶスケジュールの組み立てができるようになったのでマシと言えばマシなんですが。

[寺] それは良かったですね。前のnoteで言っていたtodoリストが活用できているんですか?

[く] 一週間単位でとりあえず「何曜日まで何をやる」という割り振りができるようになりました!

[寺] …。今まで全くできてなかったんですか!?

[く] できてませんでしたね。とりあえず手元にある仕事をやばい順から片付けていくという方法でしか実感できなかったのでその方法でやっていました。

[手] 文字通り手当たり次第ですね。ということは、その日に終わらなかったものは次の日に持ち越しですか?

[く] そうなりますね。それだと今抱えている業務の量に圧倒されてストレスになっていたんですよね。

[寺] 常に何かしらの仕事を抱えているわけですから、それはストレスにもなりますよ。

[く] 「今日やらなければいけないもの」から「今週単位でやらなければいけないもの」を分けられるようになったのでまあ随分成長したのではないでしょうか。

[寺] 「計画すると破綻するから計画したくない」と言っていた頃に比べたら随分と進歩しましたよね。

[く] それでも絶対量が多いので片付けるの簡単じゃないんですが。計画通りに進んでいるとは言い難いです。

[寺] でも、計画を立てないとことには客観的にどれくらい遅れているかどうかも確認できませんから、計画を立てることが大事ですよ。特にくらげさんは常々「自分には今しかない」というじゃないですか。その「今」の範疇を拡張する必要性は高いと思いますよ。

[く] そうですね…。あとは「1日にやったこと」のまとめも日記の形でとりあえず行ってるわけですけど、「1日って短いな」と思います、本当に。

[寺] いや、ほんと短いですよね!(笑)だからみんな必死に時間をやりくりしてるんじゃないんですか。

[く] 1日の中で何をやっているかのメモとかも作ってるんですけどね。短いのに何があったかはあまり覚えてないというのがはっきりしてきました。

[寺] くらげさんのメモを前に見たことありますけど、あったことを書き留めているというより、メモというより「ログ」ですかね?

[く] そうですね、「何を何時間やったか」ということをメモするのが主眼ですね。

[寺] あのこれ文句ではないのですが、よくわからないのが、「何があった」「何ができた」ということよりも「何を何時間やった」ということを細かく書き残しているところなんですよね。

[く] どういうことでしょうか?

[寺] 仕事とか勉強って「何時間やった」よりも「どのくらいのことができたか」が大事だと思うんです。でも、くらげさんのメモには到達度が書かれていないんですよね。

[く] あー、自分の仕事の評価とかって時間でしかできないんですよね。何時間やったらどれくらい終わるという見込みがない仕事が苦手なのもそこかもしれません。

[寺] くらげさんは時給の仕事じゃないはず…。工場で流れてくるおまんじゅうの頭に点々を打つ仕事とかならいいですけど…。

[く] なんですか、それ(笑)

[寺] ずっと機械のように一定のリズムで一定の作業をする仕事の例です。以前、ファミ通で連載していた水口さんという漫画家さんが「かつてやった1番辛かったバイト」と言って紹介してました。まあそれはともかく。時間しか評価軸がないのは、ちょっと困りますね。

[く] そうですか?時給という言葉があるぐらいですから、時間で管理するのはデフォでは?

[寺] 到達度見て、何時間かかったかを見て、次の予定に生かすというサイクルが必要なんですよ。言ったらなんですけど、時間だけを手がかりにすると、小学生が「勉強しなさい」と言われて「机に向かっていたから勉強している」といいながら漫画を読んでいたみたいな話になりかねませんよ。

[く] 「仕事中にサボる」というのはデフォルトなのであまり気にしてないんですが、とりあえず作業時間は作業時間でしょうか。

[寺] さらっととんでもない事を!(笑)いや、仕事時間は「仕事という成果物」を出すための時間でしょう?仕事を「しているふり」の時間は仕事時間ではありませんよ!?

[く] なんとなくわかるんですができないんですよね、それが。

[寺] その状態で仕事が回ってるのが不思議ですね。「仕事に時間をかけているのに何も出来てないな」と思うとストレスになるので、もうちょっと一度の動作で「できた!」と感じられるぐらいまで細かくタスクを分けた方がいいですよ。「仕事をしているという動作」ではなくて「完遂率」に注目していきましょう。

[く] うー、頑張ります…。

[寺] これはADHDの人全般の傾向なのかわからないんですが、うちの河童(夫)を見ていると「その動作」をなぞっているだけで「仕事」が出来てない事が多いですよね。

[く] 自分自身を振り返っても分からないでもないですね(笑)

[寺] 「洗濯をしておいて」と頼むと、洗濯機の中に籠のものをドーンと突っ込んで、回して、機械がピーと鳴ったら中身を出して、干場に行って干すという「動作」はするんです。でも、洗濯層の中に入れてもいい量なのかとか、天気はどうかとか、ほし竿が汚れてないかとか、干し方はしわにならないようにしているかとか全然意識してないんですよ。お前の仕事は洗濯機を使うことではなく、洗濯物をきれいにすることだ!と言うんですけど、全然ぴんと来ないみたいです。

[く] あー、思い当たるフシは山ほどありますね。何度か話に出ている「それっぽいこと」をやっておけばいいかなと思うものかもしれません。

[寺] それですね。一事が万事で、仕事に対しても全部そういうかんじなんですよ。うちの河童の場合。だから職場でめちゃくちゃ怒られても改善しないんですよ。くらげさんはうっすら見えてきてるみたいですので、ここからぜひ意識していただきたい。

[く] あまり得意ではないですけど…。そういえば、別な仕事で「臨機応変に仕事はしてくれるけど長期的な事を任すのは難しい」と言われていますね。

[寺] くらげさんは現場監督がいて、逐一指示をしてくれるような仕事が向いていると思います。もちろん馬鹿にしているわけではなくて、「そういうこと」に対しては適応力が高いと思います。私は逐一指示というのが苦手ですから。

[く] 逐一言ってもらえた方が助かりませんか?忘れないうちに終わらせられればいいわけですし。まあ、常に上司が張り付いているのは気詰まりではありますが…。

[寺] 私は見られていると緊張してダメなんです。山積みになっているものを運ぶとか、単純作業的なものは、まあまだ良いんですけど、少し手順的なものが入るともうダメですね。以前働いていたところで、よく勤怠表を間違えて付けて、経理の担当者の前で修正することがあったんですが「あわあわ」ってなって、どうでもいいところで更に間違えてました。

[く] 漫画をアシスタントさんの前で描いていたのでは?

[寺] 一緒の部屋にはいましたが、手元は見せてなかったです。私の机と椅子だけ20センチほど高くして…。

[く] そんなことをしていたんですか!(笑)それってASDと関係あるんですかね?

[寺] どうだろう?簡単な作業もできなくなるのはパーソナルな問題かもしれませんが…。しかし、人がいると仕事に集中できないというASDの人の話は結構聞きますよ。人の気配や音や匂いが気になるというのもありますが、話しかけられるかも!と思うと、集中状態に入るのが怖いんです。

[く] 話しかけられたら、それきっかけで戻ってくればいいのではと思いますが、そこがASDならではの特徴なんですね。

[寺] そうですね、どうもダメですね。集中状態から戻ってくるのに大変苦労します。また元の仕事に戻るのも大変なんです。最初から手順をもう一回なぞらないと続きができないんです。

[く] 手順を、最初からですか。流れ作業の中に入るこ
ともできない?

[寺] おまんじゅうの点々みたいに完全に繰り返しのものは大丈夫だと思いますが、様子を見ながら手薄なところに回って…みたいなものは、一旦持ち場を離れると、もうどうしていいかわからないかも。

[く] ああ、ここがあなたの場所という場所を決めてもらわないと不安なんんですね。空気が読めないというのもあるんでしょうか。

[寺] 漫画のネーム(下書き)とかだとわかりやすいかな?途中までネームを書いてるとするじゃないですか、で、話しかけられるじゃないですか?で、要件が終わって戻るんだけど、書きかけのところから入れないんです。一度書いたネームをもう一回頭から読んで、続きを書くということになります。

[く] 読み返すのはライティングでも、もちろんやりますが…。

[寺] 人の頭の中のことはわかりませんが、私の中では情報量的なものが、文字の仕事とは桁違いなので、読み返すのも時間がかかっちゃうんです。これから描こうと思っていたものも一緒に構築し直すので…。一度離席したら忘れてしまって、今まで書いていたものと違うエピソードに変わったりもしょっちゅうですよ。

[く] まだ書いてないのになぜ変わったとわかるんですか?

[寺] このシーン入れよう!と先に考えている場面がいくつかあって、それをつなげるようにストーリーを作っているからです。さっきまでは次のシーンに繋がるラインが見えていたのに、机に戻ってきたら見えなくなってたりするんです。仕方ないから違うエピソードを新たに作り直して繋げるわけですが、大抵「話が違うなあ…」と思いながら書いてる。

[く] 違うなあと思いながら書き上げるんです?それで大丈夫なんですか。

[寺] まあ仕事としてはレベルが保てれば、どんなエピソードを入れても良いかなと思いますので。でも、それまで考えていたものが勿体無いじゃないですか。だから漫画のネームは、私は家に誰もいない日を狙いすまして、一気に1日で書いてしまうことが多いですね。その日はコーヒーとチョコレートを傍に置いて、トイレ以外ほとんど動かずに書きます。

[く] 全くわかりやすくはなかったですが、まあなんとなく分かりました(笑)一旦注意が逸れると今まで考えていたことを忘れるのは、ASD、ADHDに限らず、ワーキングメモリーが少ない人にはあるあるですよね。

[寺] 人間社会は「覚えておいて」ということが多いので困りますね。

[く] 本気で食えなくなったら、ひとりでトラックの運転手でもしようかと思ってるんですけど。

[寺] ガッツリ操業時間を管理される大手の会社に入るのはお勧めしませんが、個人でトラックを買って運送業をするのは悪くないと思いますよ。

[く] 宅配業も色々大変だとは言われていますが、給料だけでいうとそれほど悪くはないんですよね。そのうち無人運転が来ると思いますけど、それでも流通網の需要は減らないでしょうし。

[寺] くらげさんが向いていると言われる仕事は「AIに奪われそうで奪われない」仕事かもしれませんね。ある意味、自分はインターフェースがましなAIだと思って働くと、人の間で自信が無駄に削れるのは減るかもしれません。

AIに奪われそうで奪われない仕事って何だろう?地方の宅配業はまだまだいける?かも?

[く] ただまぁ、今あるものを何とかこねくり回して生き延びてきたので「適応力」はあるんではないでしょうかねぇ。まぁ、これからも何とか生き延びていくように頑張ります。

[寺] そろそろ年も押し詰まってきましたし、次回は一年の振り返りをしてみましょうか。

[く] そうですね。では今週はこれくらいで。お疲れ様でした。

[寺] お疲れ様でした!また来週!

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