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日本の少子化はもう完了している

日本の少子化が止まらなくて、あのイーロンマスクにも心配されているそうだ。

少子化が止まらないのは、少母化が原因であることは、もはや疑いがない。「母になろう」という人の絶対数が減っているのだ。

これは近年女子が高学歴化して結婚に踏み切る時期が遅くなったからとか、遊びに忙しいとか、男に対しても厳しい条件をつけるようになったからだとかいう、よく言われるような話ではない。

歳をとると自分が若かった時のイメージがなかなか払拭できなくなるらしい。50代の男(恥ずかしながら私の同級生らである)は、いまだに女子大生はクラブで飲み歩いていると思っているし、男子学生は車の免許とスポーツカー、そして見栄えの良い彼女を何より欲しがっていると思っている。バブルか。
 

バブル世代はすでに少子化していた

バブル華やかなりしとき、若者だった世代は、今(令和4年)は60歳から55歳というところだろう。若い人に、もっと頑張って働いて経済を回して、子どもも産んでもらわんとね!と言ってる世代である。

しかし、そう言う人にこそ、ちょっと聞いてほしい。
あなたのお父さん、お母さんは何人兄弟でしたか?おそらく4人、もしくは5人だったのではないだろうか?もちろん私は天涯孤独ですと言う人もいるだろうが、統計上バブル期に25歳前後だった人には、姻族を含めれば10人以上のおじさんおばさんがいたはずなのだ。

では、あなたは?
2人兄弟か3人姉妹か、ひとりっ子という人も少なくないはずだ。出生人数は半減、その上この世代の生涯未婚率は20%を超えている。私たち夫婦に子どもは2人いるが、この子たちにいとこは1人もいない。私と夫の兄弟姉妹に子どもがいないからである。

そう、単純にもう無理なのだ。今後絶対に日本人の人口はV字回復なんかしないのである。
 

それでも少子化解消に挑むなら

実は少子化は50年以上も前に始まっていたし、なんならもう前の世代で完了している。現代の母予備軍をどんなに焚きつけたところで、1人産むのに10ヶ月以上の時間を要する人間のメスはそんなに子どもを産めないのだ。

日本の人口が減っていくのは分かってる。でも少しでも増やしたい…!という思いで政府は少子化対策をしているのだろう。でもなかなかうまくいかない。それはなぜかというと、結婚と出産が不可分関係にあるからだと思われる。結婚しなければ子どもは産めない、いや産めはするが、今の社会形態では相当に生きていくのが不利になるのだ。心中するために子どもを産むのは誰だって嫌だ。

今はシングルで子どもを産もうと判断するのは、これが年齢的に最後のチャンスだからと思い切る人が多くなっているだろう。おじさんたちは、野放図に遊び呆けてうっかり産んでしまったという若い女性像思い浮かべているかもしれないが、早急に意識を刷新していただきたい。そしてあらゆる法律や制度を、母子保護の観点から見直していただこう。そうすれば少し子どもは増えるに違いない。
 

根本問題「なぜ結婚しないのか」

だがこれで増えるのは少しだ。そもそも子どもが欲しいとアクティブに動いていた人に安心材料を与えるにすぎない。(もちろんそれも大事だが)

結婚と出産が不可分であることから、結婚が減っているから子どもが増えないという論も随所に認める。だが肝心な「なぜ結婚しないのか」についてはクリティカルな答えが出ていないように思える。

よく言われるのが、経済的な理由だ。
男性から見ると、結婚して、子どもができて、妻が妊娠出産で仕事を辞めた時、自分一人で家計を支えられるのか不安で仕方ない。もし子どもを持たないという選択をするならじゃあ結婚しないでいたほうが気楽だ、ということらしい。最近の若い男は意気地が無いとおじさんたちは言うが、しかし、この考え方もなんだかバブルの匂いがするなあというかんじである。
 

理由はお金がないこと…じゃない!

ここからは私の考えだ。
おそらく大きな理由はお金がないこと、そのものではない。

だが、お金にするとわかりやすい同世代のおじさんたちのために、あえてお金の話にしてみる。お金は便利だ。交通事故で失われた命でも、障害を負って生まれた子どもの不幸も「いちおうは」数字にしてくれる。

タイの経済学者ポータヴィーによると、結婚で得られる幸福度は年間63万円、月額4万円だそうだ。もちろん「いちおうは」の数字である。そんなもんなのか?と思うが、独身者の幸福度だってゼロなわけではないので、時折感じる「結婚しておけば良かったのかなあ」という気持ちを埋める消費のための金額と思うと割と妥当な気もする。

厚生労働省の調査では、女性の 家事や育児を月の労働日を30日として、機会費用法で計算すると、1,430円×7時間×30日=30万300円としている。 つまり、年収に置き換えると約360万、月額30万である。家事を完全に半分夫がやっていると仮定した場合は月額18万だそうだ。半分よりちょっと多いのは子ども関係のケア(子ども本人のではなく、おっぱいをあげた後の搾乳とか、生理的な後始末など)が考慮されているものと思われる。

4万ー30万=ー26万

月額ー26万、女性にとってはこれが結婚の値段なのだ。
男性も、家事育児を一緒にやるとすると4万−15万=ー11万
マイナスですよ?結婚?ハハハ、そりゃするわけないでしょ!
 
 

そろそろお金じゃない話に戻す。

それでも、男性は付き合っている女性に結婚を申し込まれると、よほどのことがない限り応じるらしい。選ばれることが嬉しいのだそうだ。では、女性たちはどうしたら結婚に踏み切るのか?

本当はみんなもう知ってるはずだ。答えは「年収1000万以上で話の合う男性が現れたら」だ。ほら良く聞きますよね?

高望みとか自分の年収考えろとか、結局金じゃねーかとか、そういう話は今は引っ込めて、もう少し聞いてほしい。これは、収入ですごい男をゲットしたと見せびらかしたいという話ではない。オトコのステータスの話ではないのだ。

年収1000万は、あらゆる予想される不都合をクリアできると彼女たちが考える金額である。もちろん、実際に結婚したことはないのでイメージだが、彼女たちはそのイメージで「結婚する、しない」を決めているのだから、一旦受け止める必要がある。
 

年収1000万に込められた思い

年収1000万あれば…と、彼女たちは考える。
安全なマンションに住めるだろう。子どももお金の心配なく産めて、一緒に旅行を楽しめるぐらいの余裕はあるだろう。もし障害のある子どもが産まれても、ある程度のお金を残してあげられるだろう。親兄弟が要介護になっても、少しは援助できるだろう。思うように家事ができなくて、家政婦さんを雇うことになっても大丈夫だろうし、もし、結婚がうまくいかなくて離婚することになっても、それほどの年収がある人なら社会的にキチンとしたいと思うだろうから養育費ぐらいくれるだろう。それなら、自分のキャリアを中断して家庭に入ってもいい。たまに流行りのスイーツを買って帰ってきて、よく話を聞いてくれるなら、苦手な家事も頑張れるよ…

ひとりっ子2人っ子世代の女の子が背負っているものは、おじさんたちが思っているよりずっと重い。20代の推定生涯未婚率は30%を超える。兄弟がいても結婚するかなんてわからないし、結婚しても子どもが生まれるかなんてわからない。私が家の代表、失敗は許されない…。

そのプレッシャーで、ますます選択眼は厳しくなる。
これが少子化スパイラルの本丸なのである。
 

注目すべきは結婚する前の女性の不安

終わりのない不況の中、年収1000万の男性を大量に作るのは難しいだろう。そもそも、年収が上がると男性は享楽に散財し、女性を厳しく選び始めるので、結婚の着火剤としては不向きだ。

(これについては、いくつかの子沢山の貧困家庭を選び、子どもの学費を渡すという実験が示唆的である。祖父、祖母、母、父のうち、祖母に渡した場合のみ学費は子どもまで到達した。興味のある方は是非ご自分で調べてください)

また、女性たちが1000万の現金を使いたいわけではなく、安心に値段をつけているのだと聞けば、夫となる男性が安心感を与えてやれば良くね?という考え方もある。だがこれを政治でなんとかするのはもっと難しいだろう。

なので、女性が「お金がかかる」と恐れていることを、全て洗い出し、なるべく公費で賄うようにしたらいかがかと思う。
 

子連れ離婚で人生詰まない政策を

例えば、教育費を無償化し、女性自身も子育てを卒業したり、離婚したりすれば、公費で勉強や職業訓練ができるようにするとか、手が回らない時の家事、育児、家族の介護のサポートをタダで頼めるような制度を作るなど、やれることは沢山あるだろう。ベーシックインカムを実施するのもいいかもしれない。

宥めてもすかしても脅しても、子どもを産んでくれない女性たちに、おじさんたちは絶望しているかもしれない。だが権力を持ち、弱きものの声に耳を傾けないこの国の男たちに、女たちはもう何世代も前から絶望しているのだ。

「お金が欲しい、なぜならば…」という女性たちの声を、遮り続けてきたツケを払わなければならない。
 

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もちろんそんな女性ばかりではないし、そんな男性ばかりでもない、相当馬鹿にして書いたが「おじさん」の中にも素晴らしい見識のあるおじさんがいる。私だって変わり者のおばさんである。ここに書いたのは、あくまで大筋、こういう感じなんじゃないかなという個人的な見解である。

また、個人的には、日本人は1億を割ってはいけないとか、日本の少子化に歯止めをかけねばとも思っていない。ただ、せっかく思いついたので書いてみた。なんとかしたいと思っている人の思考の一助になれば幸いだ。

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