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【特別公開版】くらげ×寺島ヒロ 発達障害あるある対談 第289回 「メタバースは『障害者』を激減させる!?その時に必要な能力って?」ってお話

このnoteは有料マガジン「くらげ×寺島ヒロ 発達障害あるある対談」より、くらげ氏の許可を得て抜粋、再編集したものです。「まとめマガジン」には発達障害とAI、そして変わる働き方についての記事を収録しています。

発達障害あるある対談289(2022年1月22日更新分)

[く] こんばんは。くらげです。

[寺] こんばんは。寺島です。

[く] 新型コロナウイルスのオミクロン株による第6波が直撃していまして、昨日(2022/01/19)の時点では都内では7,377人と過去最多となりました。明日から「まん延防止等重点措置」が適用されて、また飲食店の時短要請などが始まりそうですね。

[寺] 大阪でも新規感染者が6000人を超えました。娘の学校でも、先週学校で感染者が出て臨時休校になり、除菌して昨日から再開したと思ったら、また明日から休みという具合でして。もう娘は卒業式まで行かないよと言ってますけど。

[く] うわぁ、そこまで迫ってきましたか。うちの弟も同僚が感染したらしく、かなり危機感を盛っているようです。幸い、私の方はそれほど身近に感染者がいるわけではないのですが…。

[寺] そういえば、先週、くらげさんは都心の方に電車で通勤していると言っていましたね。本当に気をつけてくださいね。もはや三密がどうこうという以前に通勤するだけで感染リスクが跳ね上がるので。

[く] そうなんですよね。なので、通勤はとりやめて完全に再びSlackを中心にしたオンラインでの仕事になりました。リアルでやらなければいけない引き継ぎもだいたい終わったので、まぁ、いいタイミングでした。

[寺] あ、そうなんですね。あおさんも安心でしょう。でも、おしゃべり大好きなくらげさんなので、それはそれで物足りないんじゃないですか?(笑)

[く] そういう面は確かにあるので、寺島さんが以前おすすめしていた「gather」ってサービスを使うことを考えたんですが、Slackで連絡を取り合うようになったら、これだけでコミュニケーションがかなり円滑に進むようになったので、とりあえずは十分かなと。

[寺] ああ、slackは便利ですよね!ADHDのある人って本人たちは気がついてないんですけど、話すと早いと言いつつ、ずっと話してて手が動いてないということがよくあるので、実はテキストベースでタイムラグをわざと作って仕事進めるといいんですよねー…(ボソボソ)

[く] なんか凄い重要なんだかアレなんだかのボソボソが聞こえた気がしますよ(笑)しかしまぁ、このまま「感染が収まったあとにまた感染拡大」となると、テレワークが当たり前にならないことにはどうしようもない気がしますねぇ…。

[寺] 元々発達障害のある人には、時間通りに身支度をして職場や学校に出かけるということが難しい人がいたわけですが、近年のコロナの影響で外に出るということにハードルを感じる人は確実に増えてきていると思います。そろそろ通勤を当然とする仕事の組み立ての方も見直して欲しいですね。そういえば、くらげさんはメタバースって知ってます?興味がありますか?

[く] あるといえばあるのですが、どうもとっつきにくいというか、何から手を付けていいかわからなくて放置状態ですね。バーチャルオフィスでも作ろう!という話でしょうか?

[寺] そうそう、それで思い出したの(笑) バーチャルオフィスという意味では、くらげさんが使っているSlackも、私がおすすめしたgatherもバーチャルオフィスなんですよね。Slackってただのチャットアプリだと思っている人がいますが、実はバーチャルオフィスを目指しているんです。

[く] それはなんとなく最近わかってきました。

[寺] 今はまだ珍しいですが、バーチャルオフィスが一般的になれば通勤が必須ではない会社も増えるかもしれないですね。

[く] バーチャルオフィスって、なんかゲームみたいじゃないですか?アバター操って椅子に座って…それになんの意味があるの?って思っちゃいますよね。

[寺] それは技術的に今そこまでということで、いずれはほとんどその場にいるかのようにコミュニケーションを取れたり、書類のやりとりをできるようになるそうですよ。今でも最先端のバーチャルオフィスでは、バーチャル空間で部長に会ってハンコをポンと押してもらうと、ハンコが押されたPDFがダウンロードできるようになったりするらしいです。そんな高精度なバーチャルオフィスを一般の人が安価で使えるようになった時、ハンコが必要な書類があるのかは疑問ですけど。

[く] どうしてもママゴト感が拭えません(笑)

[寺] やはりそうですかね、ヒトは物体としてそこにあると認識しないと、そこに人がいると信じられない人が一定数いるみたいですね。ネットで書き込んだだけなのに、なんでリアルの裁判所に呼ばれなきゃいけないんだ!みたいなこと言う人もいますし…。

[く] ああ、なるほど。はい。

[寺] 電話も合成音声ですが、生身の人間から電話がかかってきたことは普通疑いませんよね。ネットもそういう存在になっていくはずなんですが、どうも今のままだとダメみたい。「顔」「ボディ」がないと難しいのかなあということで、とりあえずリアルな住環境を移築することに頑張っているんです。

[く] 現実そっくりに、例えば街や会社を作ってそこに自分のアバターで入っていくのがメタバース?

[寺] それ「も」メタバース。これはミラーワールドと呼ばれるタイプのメタバースで、現実の置き換えになるものです。リアルな会社に出られないから、バーチャルの会社に出社して、ハンコをもらえば、リアル世界にハンコを押した書類という形で現れるというイメージです。

[く] まさにコロナ禍の今必要とされるバーチャルオフィスですね。全く同じものがあるなら、ネトゲとかやらない人でも納得感がありそうです。でもせっかくバーチャルなのだから現実よりいい社屋が欲しいですね(笑)

[寺] いやまさにそういう話で。せっかく土地問題がないのだから、現実を超えたどどーんと立派なオフィスを建てよう!という人も当然いますよね。

[く] 土地の値段が高いとか、都心に近いとかの価値がなくなるんだから、なんの自慢にもならないような気もしますけどね。

[寺] だから、リアルな社屋→バーチャルで豪華な社屋→いやもう社屋いらなくね?合理化合理化!と回って、イマココにあるのがslackというわけなんですよ。他のメタバースもこのサイクルの上のどこかに存在します。gatherは「豪華な社屋」グループのパロディ的な立ち位置かなと思います。

[く] 3Dでビジュアル的に始めたか、コミュニケーションツールとして始めたかの差なのかと思いました。でもいずれは繋がっていくんでしょうか?

[寺] そう思います。メタバースはまだ新しい概念で、いろいろな人が「これがメタバース」と言っている段階なのですが、概ねインターネットなどの電脳空間に私たちの活動を移築、更に新たに構築していこうという試みのことだと思えばだいたい合ってると思います。

[く] すごい技術でリアルと同じに作りました!と言われても通勤に1時間かかるようなリアルでは意味がないですよね。そういうところはゲームみたいにテレポートできるとかにしてもらいたいです。

[寺] メタバースは「少しだけ都合のいい現実世界」という人もいます。多分テレポーターは出来ると思いますよ。向こうに実像が現れるのではなく、こちらのコピーが出来るのだと思いますけど(笑)でもバーチャルオフィスに対する拒否感がまだまだ強いのを見るとメタバースへの移行は意外と大変そうだなあとは思ってます。新し物好きのくらげさんが手を出してないんですからね(笑)

[く] 人をカナリアみたいに言わないでください(笑)逆に寺島さんはなんでメタバースにそんなに関心があるんです?

[寺] メタバースが進むと、今の社会の生産部門に関わることに障害がある人がプレイヤーとして参加する障壁がぐっと下がりますので、そういう意味での関心ですね。あと、私は以前からゲーマーなのですが、最近ネトゲの中のムーブメントが変わってきたのを感じているというのも大きいです。

メタバースってなに?VRゴーグルをつけてバタバタするのは本質じゃない!

バーチャルワールドは仮想世界を描くゲーム制作と技術的にかぶる部分も大きいですし、最初に喜んでモルモッ…ユーザーになるのはネットゲーマーやギークたちだと思うんですよ。既にアメリカではゲーム内通貨がドルに替えられるようになりましたし、ゲームの中で稼いで、現実の世界でピザを買って食べるということも可能になっています。

[く] なるほど。ボクもかなり興味が湧いてきましたし、Slackをもっと使いこなしたいと思いました(笑)まぁ、障害があると「どのツールを使うか」ってすごく大事ですよね。

[寺] ホント大事!私はこれからメタバースに全振りするつもりです!メタバースは多分「障害者」を激減させますよ。

[く] すごい大きな話に…(笑)ただ、当たり前ですけど、ツールの前に「なにをやりたいか」を明確にしないと迷走する気もしますけど。

[寺] それはそうですよ。ツールはクリエティブさまではサポートしてくれないですし。AIは欲を持たないですもん

[く] あとはまぁ、これは切に願うのですが、仕事を頼むと仕事が増えるタイプの仕事を減らしてほしいですよね!私のことですが!

[寺] ああ、はいはい。私も心が痛いです!(笑)出勤簿をつけられないとか、住所を書き間違えたりとかですよね!

[く] いやもう、そういうことは気をつけるだけではどうにもならないところもありますよね…。

[寺] ならないならない(笑)なんか言われたら「私ですよね?ですよね!ごめんなさい、どこ直したらいいですか。」って聞いちゃいます。自分でなんとかしようとするのが間違い。

[く] もう開き直って貫き通すのも大事なんですが、まぁ、この先は最初から「ケアレスミス」を最小限にするためのツールをどう拡充していくかというか…。

[寺] 「ケアレスミス」は誤入力なので、それこそAIが教えてくれるようになると思いますよ。メタバース的な世界ではもう全部機械がやってくれるようになると信じてます。

[く] 私も信じています…。

[寺] 現在進行形の話だと、何気にGoogleがすごいですよね。

[く] というか、現段階でGoogleがなかったら仕事が成り立たないですね。

[寺] そんなに依存してますか(笑)私はGoogle Chromeの「パスワードを生成します。このパスワードは覚えておく必要はありません」って、最初の最初に見た時はびっくりしました!でも慣れてくると、なんにでも自書で住所や電話番号まで手で書かせてた昭和ってひでぇな!って思うように意識が変わりましたよ。人間って可逆性の高い生き物なんですよねえ…。

[く] 革新的なものって、使い慣れた頃に「なんで前はあんな手間ひまかけてたんだ?」という疑問が浮かび上がってくるものだと思うんですよね。ボクの場合はクラウドストレージが革新的でした。書類を無くす心配が激減しましたよ。

[寺] ADHDで物を無くしやすいくらげさんには相性がいいですね。メタバースもAIもこんな感じで、ある日いきなり普通の人がどんどん使い始めるんでしょうね。

[く] まだそこまで便利さを感じるかというとよくわからないんですね。自分から飛び込んで改善していく、という気力はいまのところないので、ある程度整ったところで飛び込んでみたいと思います。

[寺] 便利とかそういう話じゃないんだけどなあ(笑)まあ、今はそんなものかも知れませんね。ただ、メタバースが浸透する過程では、「見てくれや金のあるなしじゃなく心を見て欲しい」と言っていた人の行動がダイレクトに見えてくるわけなので、そういう人にとってはある意味きつい時代が来ると思いますよ。

[く] メタバースでは外見を変えられるからですか?

[寺] そうそう。外見や年齢もリセット。お金も完全に流通調整されるから関係ないですし。操作性も、高度なゲーム内ゲーム以外は、AIが入ってやってくれるはずなので「やろうと思ってたけど身体の操作が下手でできなかった」がなくなりますよ。

[く] そうなると純粋に「中身」で勝負になるんですね。「なりたい自分になった」けど、なんでか友だちができない、メタバースの中でも仕事もできない、とか…挫折があった時にしんどそう。

[寺] 言い訳がなくなる(笑)

[く] 怖いですね、それは。そこまで折れたら何も残らないのでは…。

[寺] 私はこれ「あるある対談」が始まった時から言ってるんですけど、今って福祉が技術の進化や療育の成果で障害が軽減されることを目指していますよね。私たち自身もそれで苦しみが軽減されると思ってるんですけど、例えば、全てがクリアになって「じゃあもう障害はないですね!さあレースにどうぞ!」となったときに、本当に走り出せるのか?という…。

[く] 同年齢の人に比べていろいろ積み残している自覚はあります。そもそもADHDなので積み上げができない特性があるのですが…。

[寺] 例えばくらげさんのADHDがすごい技術で軽減されたとしても、それまで積み残した勉強内容や経験がいきなり脳内に現れたりはしないわけです。経験と学習歴は自分で積むしかないのですよ。支援系の学校を出た障害者に顕著ですが、この国は一旦学校を卒業して自活を始めると極端に学究生活に入ることが難しくなるので、勉強したい時、できる状態になった時に、いつでも学究生活に入れるよう国の福祉でその支援をするべき!というのが私の主張です。人生100年時代でもありますからね。

[く] バーチャルで生活する人が増えてくると、リアル会社で働いて稼ぐという必要性も少なくなるかも知れませんしね。学歴の意味も変わってきそうです。まあ、zoom会議も出来ないという会社があるぐらいですからまだまだかも知れませんが。

[寺] そう遠い未来でもないかもですよ。10年以内に学校はほぼバーチャルでいけるようになるんじゃないかなあ。いろいろなことがシームレスになっていく予感がします。

[く] ついていけるように頑張りましょう。では今回はこんなところで。お疲れ様でした!また来週!

[寺] お疲れ様でしたー!

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