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『スクラップ・アンド・ビルド』(羽田健介 著)

【内容】
80歳代後半の死にたいという自殺未遂の経験のある祖父と、20代のフリーターの主人公男性とを対比的に描いた小説。

第153回芥川賞受賞作。

【感想】
気になっていて読んでいなかったので読んでみました。
ワーキングプアと高齢化社会という現代の問題を、かねり突き放して描いていました。
80歳代後半の死にたいという祖父を、どうすれば祖父を楽に死なすことが出来るかということを考える主人公。
そのためには、祖父の死にたいという願望を叶えるため、より祖父の介護の手助けをすることが、祖父の夢を叶えるための近道であるといったアイロニカルな考えを抱える主人公に、否定できないものを感じたり…

人間なんて、死ねないから生きている…
そんなことを言った人(立川談志?)がいましたが、まあその究極的な状態なんだろうなあと…
晩年寝たきりになった祖母のことを思い出したりしながら、なんとも言えない気持ちになったりしました。

老人である祖父の描写と、主人公の若い彼女とセックスの描写、祖父のようにならないために筋トレに励む主人公…
この小説を読んだ後に読んだ独居老人を描いた『おらおらで、ひとりいぐも』と比べて、とても興味深いと感じました。

https://bookmeter.com/books/9810066

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