見出し画像

突然ざわめきが【第三回】:『チバユウスケ』

電話探した あの子に聞かなくちゃ
俺さ 今どこ?
壊れそうな夜
ロータリーに倒れてた
血と鉄混じってた
どこか少し懐かしい味
アスファルトから
ロンドン・パンク聞こえた
立ちたくなかった
どうにでもなればいいって
涙がこぼれそうでラブコール
あの娘にラブコール

(涙がこぼれそう/The Birthday)


歌詞書いてるだけで泣きそうになる。私がチバユウスケの存在を知ったのは高校2年生の頃で、その時には大学受験に向けて勉強の日々だったからライブ等に行くことを控えていた。結局ライブに行けたのは大学入学後の冬、それが最後のライブになってしまった。YouTubeにアップされているthee michelle gun elephant、The Birthday 関連の動画はほとんど見ただろうし、曲を聞くとそれらの映像を思い出す。ミッシェルが生まれる前に解散しているって知った時に私は泣いたし、アベフトシが亡くなっているって知った時も私は泣いた。
チバユウスケが亡くなったと知ってから聞く彼の楽曲と、知る前に聞く楽曲では全く意味が異なってしまう、というポストをxで見たが、全くその通りだと思う。何もかもが変わってしまった。何もかも変わってしまったけれど、それは俺たちの捉え方に過ぎない。彼が遺した音楽は決して変わらないし、僕たちがそれに衝突した時の衝撃も消えない。

歌の中にある一貫した寂しさ、少し恥ずかしいくらいの歌詞が、思春期後期の私を励ましてくれた。きっと彼にとって全く励ます意図ない気がする。でも、そんな風に真っ直ぐに生きる大人がいること、真っ直ぐに歌ってくれる愛があること、それに教室の隅でひっそり勇気をもらっていた。何回も何回も言うけれど、高校生が一番の暗黒期だったから心の1から100まで世界に対する憎悪で私は構成されていた。けれど目が合った人から睨みつけていく強さもなく、自分で自分の人生を掴むことを望みながら同時に誰かに助けてもらうことを待っていた。


天使が消えたんだ
俺らの街から
だから奪い返すって
それで青に還すんだ
その後で抱きしめてやる

(抱きしめたい/The Birthday)


とんでもない音が
鳴り響く予感がする
そんな朝が来て俺
世界中に叫べよ
I LOVE YOU は最強
愛し合う姿はキレイ

(くそったれの世界/The Birthday)


正直、小っ恥ずかしくて仕方なく感じたこともあった。 I LOVE YOUは最強って…聞いたことないよ!涙 でも、ありがとう涙 
家でライブ映像みてる時に母が、「20年前の曲?」って聞いてきたこともある(今時っぽくない歌詞だねの意味だと思われる)。でも、決して現代風ではない言葉や歌たちに確かに慰められてきた。チバユウスケの持つ力がそうさせたのだと思う。俺って元々ボカロとアニソンしか聴いてなかったんだよ?!?!なんでこんなところにいるの…?親の影響でチバユウスケを知っていた訳でもないのに…。
もしかしたら、本当にもしかしたらなんですけども、カゲプロ(カゲロウプロジェクト、ボカロ楽曲から物語が展開されていた。俺の小学生後期の全て)の影響…?俺には音楽が分からない。でも、ロスタイムメモリー等々のギターロックの楽曲を聞いていたのですんなりとミッシェルやバースデーとかのガレージロックを好きになったのかな。ほら、どっちもかっこいいじゃん。あと、友人に指摘されて気付いたんだけれど、俺って厨二病だった。厨二病がそう呼ばれる所以に、思春期に好むような過剰にカッコつけた単語やらをいつまでも好むということがあると思うんだけれど、俺は確実にそれで、しかもそれが当然だったから厨二病とかと揶揄されるのを忘れていた。まあ人のこと馬鹿にする手段としてある言葉なら使われない方がいいんだけれど。


冬の星に生まれたら
シャロンみたいになれたかな
時々 思うよ 時々
ねぇ シャロン月から抜け出す
透明な温度だけ
欲しいよ それだけ それだけ
シャロン

(シャロン/ROSSO)


この星にメロディーを
あの子にキスを
君にロックン・ロールを
それだけで生きてけんのは ちっとも不思議じゃねえよ
いかれちまった景色が そこには広がってんのさ
あんたにはきっと何にも見えねえだろうけど

(アウトサイダー/ROSSO)


カッコいいが過ぎる。
高校生の終わり際にチバユウスケという鮮烈な人物に衝突して、そこから僕の人生が、ずっとロックンロールに縛られていくことだけが確定した。革ジャン着なくても、マーチンの8ホールブーツを履いていなくても、ギターが弾けなくても、心は完全にロックで作られている。
しゃがれた声で愛やら天使やら、女の名前やらを歌う彼を心からカッコいいと思って、信頼することにした、それで自分がどれだけ守られたか。彼の全てを尊敬していた、だからと言って全てを模倣していた訳ではなかったけれど、魂はこうでありたいと思っていた。
もうこれしか信じられるものがない、そうやってどうにか毎日を歩いていた時のことを思い出す。ヘッドフォンから聞こえてくるその声が私を奮い立たせて、ヘッドフォンさえ壊したい衝動に駆られるような、気が狂いそうな青い日々を。

ミッシェルは自分の手で自分の意思で出会ってほしい、と思う。そもそもミッシェルに限らず、音楽なんて自分の意志で出会うものだと思っている。だから私は他人からのお薦めの音楽も素直に聞かない類の厄介な人間なんですが…。でもこの連載記事を読んで、私が早口で語っていたことに興味をもって頂けたらそれはめちゃくちゃに幸いな事です。あなたが、自分に必要だと思った時に必要な音楽に出会えますように。



執筆者:輝輔(@gv_vn8



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?