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名前で運勢が変わるか?(5):名前で印象が異なる不思議

●「名前」とは、もう一人の自分?

この問題を調べるうちにわかってきたこと、それは「名前には多くの人々に共通したイメージがあるらしい」ということです。名前だけから、その人の年齢、職業、容姿、性格などについて、特定のイメージが思い浮ぶようなのです。

そうだとしたら、名前とは自分自身の影のようなもの、もう一人の自分といえるのかもしれません。ちょうど、ヌナヴィク・イヌイットが名前自体を霊魂と考えているように。[注]

『名づけ』(岩淵悦太郎、柴田武共著)という古い本があります。ここに名前のイメージを調査した結果が載っているのですが、これを読んで私は、諦めかけていた姓名判断の価値を発見したような気がしました。

この調査の目的は、「知らない人の名前からどんな想像をするか」です。名前のイメージと実際の人物が一致するかどうかではありません。

しかし、ここが肝心なところですが、「もし名前に特定のイメージが付随するなら、結果的に名前の持ち主がイメージどおりの人物である可能性も高くなる」のです。

その理由は後で検討するとして、まずは調査の内容を見てみましょう。以下に引用させていただきます。

●名前は固有のイメージを持つか?

ある程度いろんな人に当って聞いてみる必要があると思ったので、私の職場の三十人あまりの人と、他に一、二の人に、いくつかの名前をあげてどんな人間像を考えるか、アンケートをとってみた。あげた名前は、次のとおり。

 石川秀男・花田夏子・森弘・熊谷昭吾・佐藤あけみ・井村リツ・安達直・矢田貞夫・長谷川英一郎・良夫・良雄・賢三・賢蔵・千恵子・チエ子

 これには、わたしの身うちのものや友人から選んだのもあるし、作ったのもある。すなわちわたしにとって実在の人物の名前もあれば、実在でないものもあるわけだ。選んだ基準は別にない。とにかく、人はどんなことを想像するか見当がつかないので、思いつくままに並べてみただけのものが大部分である。・・・良夫・良雄以下の姓のないものについては、字の違いが何か反映するものだろうか、と思って入れてみたものである。

まず、その名前について、すぐ想像される年齢と性別を聞き、あとは何でも自由に記入してもらった(性別は聞くまでもないことのようだが、安達直のように読み方によって男とも女ともとれる名前を入れたので、一応聞くことにした)。

それから、なぜそんなイメージが浮かんだのか、理由があれば書いてもらうことにした。それで、たとえば、A氏は「石川秀男、男、十五歳~二十歳、高校生ぐらいの学生。明るい性格の秀才。石川という後輩からの連想もあるらしい」と書いた。B氏のには、名前というものは親のつけるものだからといって、「長谷川英一郎、男、四十歳、中小企業で中ぐらいのポストにいる男。性質は温厚の部類に入る。競争心はあるが、どこか足りないところがある。総領の甚六。親は一応すぐれた子にしたいと思ったが、そうは問屋がおろさぬ道理」などとあった。

『名づけ』(岩淵悦太郎、柴田武共著) [*]

●年齢や性格をイメージさせる名前

その結果、まとまりのつかないものになるだろうとの著者の予想に反して、いくつかの傾向が現れたそうです。

著者自身も断っているとおり、調査した件数が少ないので、この結果だけから何かを結論づけることはできません。が、それにしても先の『赤ちゃんの名前』以上に興味深いものです。

たとえば、「佐藤あけみ」は10代~20代の小中高校生かOLで、性格的には清純でお人よし、「井村リツ」は40代~60代の主婦、「石川秀男」は穏やかな性格のサラリーマン、「熊谷昭吾」は男性的な人物、「花田夏子」は派手で行動的などといった共通のイメージがあるようです。

また同じケンゾーでも、「賢三」は20代~40代で、「賢蔵」は40代~60代をイメージする人が多く、「良夫」より「良雄」のほうが男性的に感じるらしいのです。漢字が一字違っただけで、名前の印象はずいぶん異なるもののようです。

==========<参考文献>=========
[*] 『名づけ』(岩淵悦太郎、柴田武共著、筑摩書房、昭和39年)

==========<注記>=========
[注] ヌナヴィク・イヌイットの霊魂観
 こちらを参照 ⇒『名前で運勢が変わるか?(3):名前の呪力<上>


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