たか

めんどくさがりですが、食べることになると多少の手間がかかってもできるようです。 …

たか

めんどくさがりですが、食べることになると多少の手間がかかってもできるようです。 幼い頃食べた昭和の味、母と一緒に作った平成の味を経て、新しい味、伝統の味に挑戦中です。

記事一覧

SF小説との出会い

みかん箱 子供の頃、盆と暮れには親戚が集まった。その時、叔父たちはみかん箱くらいの大きさの段ボール箱を車から下ろす。父も段ボール箱を持ってくる。3人で中身を確か…

たか
8日前
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草取り道

草取りの季節到来!! 春になると、あっというまに草取りのシーズンがやってくる。ちょっと前まで寒々しかったところが青々としてくる。 このところ、草取りの話題をあち…

たか
3週間前
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「魯肉飯のさえずり」

八角の悲しみ 温優柔さんの「魯肉飯のさえずり」という小説を読んだ。中国語、台湾語、日本語が飛び交う。台湾から来日し、日本人と結婚した李秀雪と、その娘の桃嘉の物語…

たか
1か月前
8

どんだけ音楽好きなんだよ

「どんな習い事をさせようか」  子どもが成長するにつれて、多くの親が悩むことだと思う。  私自身は子供の頃、音楽教室に通っていた。練習は嫌だったが、演奏自体は楽し…

たか
1か月前
7

お味噌仕入れ

4月は味噌を仕込む季節だった。「お味噌仕入れ」と呼ばれていた。 子供の頃の私は「オミソシイレ」が何のことか、よく分かっていなかった。 匂い 4月になると、奥座敷…

たか
2か月前
7

春はふき味噌から始まる

春は苦い。 苦い思い出もたくさんあるが、ここでは苦い食材の話をしたい。 ふき味噌は大人の味 実家の裏庭というか、裏畑(そんな言い方があれば、だが)にはフキが生え…

たか
3か月前
8

甘すぎ甘酒

1月20日は甘酒の日 1月20日は甘酒の日なんだそうである。私も作った。シャトルシェフを使う。うまくいったと思う。いい感じの甘さだ。 しかし、少し残念な気もする…

たか
4か月前
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納戸を発掘した話

”納戸”にどんなイメージがあるだろう? 私のイメージだと、作り付けの棚が壁一面についた小部屋である。ここに缶詰や保存食品が整然と並んでいるイメージ。 あくまでも…

たか
4か月前
4

おせちは重箱に入れない

食べきれないおせち料理……祖母のおせち 祖母はおせちを大量に作った。それはもう何日食べるのかという量を作った。重箱に詰めたりはしない。食事のたびに小皿に分けて盛…

たか
5か月前
4

アポなし訪問

アポなしが最良?  我が家というか、私の親戚の一部には謎の思考がある。「アポなし訪問が一番良い」というものだ。  「誰かの家を訪問する際に、いちいち前もって連絡…

たか
5か月前
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家族と旅する

子どもの頃、家族で県外に行ったことはほとんどない。なのに、こんなに豊かな経験があるのはなぜだろう。 祖母と東京に行く……2歳  初めて東京に行ったのは2歳の時だ…

たか
5か月前
5

食の力〜祖父の入院〜

病院は闘病するところであって、療養するところではない。だから、寝具や食事について不平を言うことはよくない。ホテルでのんびり過ごしているのではないのだから。 しか…

たか
6か月前
8

ずっと使い続けたシャトルシェフ

 大学生になって実家を出た。家電や調理器具は現地調達のつもりだったが、1つ持っていったものがある。納戸の棚の奥で、箱に入ったまま眠っていたシャトルシェフだ。どこ…

たか
7か月前
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青じそわさわさ

 畑に青じそがわさわさと揺れている。もう穂がついて、実がついている。  青じそが好きだ。きゅうりに巻くのも美味しいし、そうめんの薬味にも欠かせない。父の畑にまで…

たか
8か月前
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おやきはなすに限る?

 この辺りでなすといえば2種類ある。長なすと丸なすだ。  長なすは全国共通の長なすだが、丸なすはこの地域特有のなすでまん丸い。長なすに比べると身がしっかりしてい…

たか
10か月前
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絶滅危惧種「おばあちゃんのお茶請け」

 子供の頃、よく客が来た。近所の人たちは玄関先で。親戚などは居間で。仕事関係の人などは客間へ。通されるところはそれぞれだったけれど、お茶とお茶請けが用意されるの…

たか
10か月前
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SF小説との出会い

SF小説との出会い

みかん箱

子供の頃、盆と暮れには親戚が集まった。その時、叔父たちはみかん箱くらいの大きさの段ボール箱を車から下ろす。父も段ボール箱を持ってくる。3人で中身を確かめ合う。
中に入っているのは文庫本だ。白いカバーがかけられているので中身は見えない。(ちなみに白いカバーはカレンダーを裏返しにしたものである。こういう細かい作業が得意な叔父の手によるものだと思われる。)
3人は互いの本を交換する。そして読

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草取り道

草取り道

草取りの季節到来!!

春になると、あっというまに草取りのシーズンがやってくる。ちょっと前まで寒々しかったところが青々としてくる。
このところ、草取りの話題をあちこちで目にしたので、私も草取りのことを書いてみよう。

祖父の草取りは鎌研ぎから始まる

祖母は祖父のことを「受験生を下宿させているみたい」と言っていた。勉強、趣味、仕事、ペットの世話など、自分の仕事を自分の計画に従ってやっていく。草取り

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「魯肉飯のさえずり」

「魯肉飯のさえずり」

八角の悲しみ

温優柔さんの「魯肉飯のさえずり」という小説を読んだ。中国語、台湾語、日本語が飛び交う。台湾から来日し、日本人と結婚した李秀雪と、その娘の桃嘉の物語である。
日本語では自分の気持ちをうまく伝えられない秀雪。桃嘉は、そんな母に対して複雑な感情を持つ。娘の視点から書かれている章と母の視点から書かれている章が交互に続く。どちらの気持ちも分かる。悪意があるわけではないけれど、無神経な周囲の人

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どんだけ音楽好きなんだよ

どんだけ音楽好きなんだよ

「どんな習い事をさせようか」
 子どもが成長するにつれて、多くの親が悩むことだと思う。
 私自身は子供の頃、音楽教室に通っていた。練習は嫌だったが、演奏自体は楽しかった。グループレッスンで知り合った友達と、待ち時間に遊ぶのも楽しかった。

 というわけで、幼い息子に、音楽教室のレッスンを体験させた。息子の反応は薄かった。拒絶したわけではなかったが、特に面白そうでもなかった。全然決め手にならない。

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お味噌仕入れ

お味噌仕入れ

4月は味噌を仕込む季節だった。「お味噌仕入れ」と呼ばれていた。
子供の頃の私は「オミソシイレ」が何のことか、よく分かっていなかった。

匂い

4月になると、奥座敷から麹の匂いがする。
新聞紙の上に大量の麹が広げてあった。ぽろぽろにほぐしてある。
庭には大きな穴が掘られ、「ぐりとぐら」に出てきそうな大きな鍋が据えられた。朝になると、その鍋いっぱいに大豆が煮られ、湯気を立てていた。
豆の匂いが漂う。

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春はふき味噌から始まる

春は苦い。
苦い思い出もたくさんあるが、ここでは苦い食材の話をしたい。

ふき味噌は大人の味

実家の裏庭というか、裏畑(そんな言い方があれば、だが)にはフキが生えている。きっと昔、誰かが植えたのだろう。春が近くなってくるとフキノトウが出てくる。まだつぼみのうちに採ってくる。
子供の頃、フキノトウの食べ方はふき味噌にするだけだった。祖母は何でもたくさん作る主義である。ふき味噌もたくさん作る。朝も晩

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甘すぎ甘酒

1月20日は甘酒の日

1月20日は甘酒の日なんだそうである。私も作った。シャトルシェフを使う。うまくいったと思う。いい感じの甘さだ。
しかし、少し残念な気もする。もっとくどい、しつこい甘さの甘酒を作ってみたい。懐かしい味を再現したい。

祖母の甘酒

祖母は4月になると甘酒を大量に作った。甘酒が好きとかそういうことではない。4月には1年分の味噌を仕込む。味噌を仕込む時に麹だけでなく、甘酒も入れる

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納戸を発掘した話

”納戸”にどんなイメージがあるだろう? 私のイメージだと、作り付けの棚が壁一面についた小部屋である。ここに缶詰や保存食品が整然と並んでいるイメージ。
あくまでもイメージである。そんな納戸を見たことはない。ましてや、かつて我が家に存在した”納戸”はそんな納戸ではない。

北のお勝手

子どもの頃、”納戸”に行くのが苦手だった。その”納戸”のことを家族は「北のお勝手」と呼んでいた。その呼び名は謎だった

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おせちは重箱に入れない

食べきれないおせち料理……祖母のおせち

祖母はおせちを大量に作った。それはもう何日食べるのかという量を作った。重箱に詰めたりはしない。食事のたびに小皿に分けて盛られた。作ったおせちは鍋ごと保存されていた。

冷蔵庫に入るような量ではない。”納戸”(と便宜上呼んでおく)に鍋ごと置いておくのだ。今よりも冬は寒かった。しかも我が家は古い家だった。「冷蔵庫には凍っては困るものを入れておく」というルールが

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アポなし訪問

アポなしが最良?

 我が家というか、私の親戚の一部には謎の思考がある。「アポなし訪問が一番良い」というものだ。
 「誰かの家を訪問する際に、いちいち前もって連絡するなんて水くさい。第一、前もって連絡したら、掃除をしたり茶菓子を用意したり、大変ではないか。いきなり訪問した方が、お互いに気をつかわずにすんでよいのだ」というのである。

 本当ですか? 本当に突然誰かが訪問してきて、気をつかわずにいら

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家族と旅する

子どもの頃、家族で県外に行ったことはほとんどない。なのに、こんなに豊かな経験があるのはなぜだろう。

祖母と東京に行く……2歳

 初めて東京に行ったのは2歳の時だ。祖母が連れて行ってくれた。と言っても私はほとんど覚えていない。後から聞いた話である。

 その日、家族(祖父と両親)が出勤すると、祖母はタクシーを呼び、私を連れて駅に行った。30分くらいかかる。そこから特急で3時間で上野駅。動物園でパ

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食の力〜祖父の入院〜

病院は闘病するところであって、療養するところではない。だから、寝具や食事について不平を言うことはよくない。ホテルでのんびり過ごしているのではないのだから。

しかし数十年前、祖父が事故に遭って入院したときの食事は、それにしても変だった。祖父は重傷で、頭蓋骨は割れ、肋骨は折れて肺にささり、足も折れていた。なのに、食事は「ラーメン」や「パン」だったのである。

「胃はなんともないから、ラーメンでいいで

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ずっと使い続けたシャトルシェフ

 大学生になって実家を出た。家電や調理器具は現地調達のつもりだったが、1つ持っていったものがある。納戸の棚の奥で、箱に入ったまま眠っていたシャトルシェフだ。どこかからもらったものの、祖母や母にはいまいちピンとこないものだったらしい。

 寮生活の大学生にとって、シャトルシェフはすばらしい道具だった。何しろ、共用の台所は4〜5人に1つガスコンロがあるだけだったのだ。夕飯時になると、それぞれがガスコン

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青じそわさわさ

 畑に青じそがわさわさと揺れている。もう穂がついて、実がついている。

 青じそが好きだ。きゅうりに巻くのも美味しいし、そうめんの薬味にも欠かせない。父の畑にまで行けばあるが遠い。ちょっと摘んでくるには面倒だ。そこである年、苗を買ってきて植えた。

 父は嫌そうな顔をした。「こんなもん、なんでわざわざ買ってくるんだ。その辺にあるのを植えればいいのに。」意味が分からなかった。

 次の年の春、畑の隅

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おやきはなすに限る?

 この辺りでなすといえば2種類ある。長なすと丸なすだ。

 長なすは全国共通の長なすだが、丸なすはこの地域特有のなすでまん丸い。長なすに比べると身がしっかりしている。
 丸なすの食べ方の定番は「ふかしなす」。蒸したものを冷やして、辛子じょうゆで食べた。今の私はしょうゆ(ラー油入り)がお気に入りである。
 もう1つが本題の「おやき」だ。おやきの具はなすに限る。そう主張する人はけっこういるらしい。
 

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絶滅危惧種「おばあちゃんのお茶請け」

 子供の頃、よく客が来た。近所の人たちは玄関先で。親戚などは居間で。仕事関係の人などは客間へ。通されるところはそれぞれだったけれど、お茶とお茶請けが用意されるのは同じだった。
 お茶請けは小さな皿に盛り、どんどん出した。漬物や煮豆、ちょっとしたお惣菜、甘く煮た果物などだ。
 私も家族に連れられ、近所や親戚の家を訪ねた。連絡なしである。突然の来客なのに歓迎してもらった。次々にお茶請けが出され、食べき

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