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【自殺】エスパー魔美、観ましたー。【まごころを、君に】


はじめに

 prime videoで『藤子・F・不二雄生誕90周年記念 傑作選 エスパー魔美』第13話「魔美を贈ります」観ましたー。現在、エスパー魔美はprime videoで無料配信されていないのですが、傑作選の方は見放題になっています。
 個人的には、エスパー魔美の話の中では第21話の「電話魔は誰?」が内容的に最高傑作だと思っているのですが、傑作選の方にはなかったので^^;二番目に好きな話「魔美を贈ります」を観返してみました。

 私が物心ついた頃にはエスパー魔美は放送し終えていて、ドラえもんを観て育ちました。物語の構造的には、ドラえもんでいう静香ちゃんに該当するキャラ、大変性格のいい天真爛漫で活発な女子中学生・佐倉魔美が主人公で、出木杉君がジャイアンのルックスになった高畑和夫が、魔美のよき理解者という距離感のアニメだと理解しています。
 
 作中で、魔美が画家である父のヌードモデルになる回がそれなりにあるせいか再放送されませんが、ドラえもんを遙かに高度で大人向けにした作品だと思います。
 物語の内容的には、女子中学生の魔美が、話が進むごとに様々な超能力を身につけていき、その能力を悪用することなく人助けする話で、高畑だけが魔美の秘密を知っているのですが、世間にバラすことなく、むしろバレないように魔美の人助けをサポートし続けていきます。

 魔美は他人の哀しみを自分事以上に捉えてしまうような超絶性格がいい女の子で、高畑は何も勉強しなくても満点を取れるテストで、必死で努力してる級友に勝ってしまうのは申し訳ないという理由で、毎回わざと2問間違えて3位の成績に収まっている天才的な頭脳を隠している男子です。

 今回の『魔美を贈ります』では、クリスマスに恵まれない人に超能力を使って何かプレゼントをしたいと思い立った魔美が、自殺を考えている大学生に行き会ってしまい、自殺を止めようと奮闘する話です。
 数年ぶりに観てもやはり名作でしたので、記録したいと思いました。


内容前半のあらすじ

 内容的には、クリスマス当日「いつまでもプレゼントをもらう子供ではなく、誰かを幸せにするサンタクロースになりたい」と考えた魔美が、超能力テレポテーションを使って自室を抜け出し夜の街に出かけるところから始まります。
 魔美は、神様のように分け隔てなく幸運をプレゼントしたいと考え、自作した星型の工作物を超能力テレキネシスで飛ばして道に放置し、それを拾った人の願いを聞くことにしました。

 通りがかった女性が魔美の星を拾いかけますが、ゴミと判断して捨ててしまいます。次に通りがかった男性は酔っていて、星を踏み潰しそうだったので魔美が超能力で男性の足を動かしたところ転んでしまいます。
 そのことに腹を立てた男性は、怒りをぶつけんばかりに杖をバットのようにフルスイングし、星は打たれて遠くに飛ばされてます。

 魔美が慌てて追いかけると、星は風に乗って窓が開けられた高級マンションの一室に入っていきました。中にはソファーに寝転んだ男性がいて、魔美の星を不思議そうに手で弄んでいました。
 魔美は瞬間移動で唐突に部屋に現れると、面食らう男性に対し、「あなたが幸運の当選者で~す♪その星は幸せのサンタの使いです。私はあなたの望みを何でも叶えるわ。何かしてほしいことありません?」と明るい調子の笑顔で尋ねました。

 しかし男性は「別に…」と素っ気ない態度を取りました。魔美が部屋を見渡すと、高そうな本やAV機器、パソコン、プラモデルなどがたくさんあり、生活に困っている風には見えず、むしろ経済的には恵まれている男性のようでした。
 それでも魔美は食い下がり、「何かあるでしょう?悩み事とか!あるいは、あんなことしてみたいとか!」と世話を焼こうとすると、「ごちゃごちゃうるさいな、さっさと帰ってくれ」と迷惑っぽく言われてしまいます。

 話題は、「なぜ真冬のクリスマスに窓を開けていたのか?」という点に移り、そこから部屋の埃っぽさに気づいた魔美が「いきなり願い事なんて困るでしょうから、私がお掃除してる間にゆっくり考えてね!」と言って部屋の片付けを始めます。
 本棚の本を見て男性が大学生だと気づいた魔美は、勉強してる様子のない埃だらけの机に違和感を覚えます。男性が横になっているソファーを綺麗にするために、男性の手をとると、その瞬間、魔美の頭の中に男性の心がイメージになってなだれ込んできました。

 男性が窓から飛び降りている様子が鮮明に伝わってきた魔美は、思わず絶叫し、男性に自殺を思いとどまるよう説得します。「ねえ、なぜなの!?どうして死にたいの!?死ぬなんて考えないで!」と、泣きながら一生懸命訴えかける魔美に対して、大学生の男性はなぜ自分の考えてることが分かるのか、他人事でなぜそんなに必死なのかが分からず当惑します。
 そして、泣き顔の魔美を見て「君ってカワイイね。自殺しない代わりにプレゼントくれるかい?…君がほしい。君みたいな子がそばにいてくれたら、生きていけるかもしれないな」と、のたまうのでした。

 はたして、魔美は男性を救うことができるのでしょうか。また、魔美は他人のために自分を捧げることができるのでしょうか

感想

 魔美が今回の件を高畑に相談しに行くと、高畑は『月とウサギ』の話をして魔美を諭します。

『月とウサギ』

 日本において、古来より、月とウサギとは縁が深いものとされていますが、これは『ジャータカ』とよばれる古代インド(紀元前三世紀頃)の仏教説話に、その源流があるもののようです。ご紹介しましょう。 


 むかしむかし、あるところにウサギとキツネとサルの三匹が棲んでいた。あるとき彼らは話し合った。

 「我らは、前世に罪障が深かったため、獣として生を受けた。この上は、後世のため、この身を棄ててでも、菩提の心を奮い起こそう。また、どんなことでも、自分のことは後回しにして、他人のことを先にすることを誓い合おう

 この話を聞いていた帝釈天は、

「獣でありながら、実に感心な者たちだ。その清らかな心がけは、実に見上げたものである。ならば、まことの菩提心があるかないか、試してみることにしよう

 と言って、老人の姿になって、三匹が棲んでいるところへ出向いた。

 そして、三匹の姿を見つけると、悲しそうに声をかけた。

 「わしはご覧のとおり、年老いており、身寄りも貯えもない。わしを養ってはくれまいか」

 この老人の話を聞き、三匹は、快くその申し出を受け入れた。

 さっそく、サルは木によじ登って木の実を集めたり、里に出かけて、食べ物を探してきた。キツネは、川で魚をつかまえ、持ち帰ってきた。そのおかげで、老人は、毎日、食に困るようなことはなかった。老人は、その都度、サルとキツネを労い、大いに褒めた。

 一方、ウサギは、いつもサルとキツネだけが褒められ、自分だけが老人に何も食べさせることができず、心が落ち着かなかった。毎日、朝早く起き、長い耳をピンと立て、赤い目を光らせ、鼻をヒクヒクさせながら、四方を駆け回った。しかし、ひ弱なウサギには、老人の腹を満たすような獲物を捕らえることなぞできなかった。

 そんなウサギに対して、サルとキツネは、わざと辱めたり、罵ったり、バカにしたりもした。

 そんなウサギは、ふと、首を傾げて考えた。

 「自分は小動物なので、獲物を見つけるどころか、山野を駆け回っているときでさえ、人間や猛獣に襲われはしまいかと、ビクビクしていなければならない。それならばいっそのこと、この身を老人に捧げてしまった方が、いいのではないか」

 そう決心したウサギは、皆のいるところに戻ると言った。

 「今から、わたしが美味しいご馳走を持って参りますので、皆さんは、木を拾ってきて、火を焚いて待っていて下さい

 そう言い終わるや否や、ウサギは一目散にどこかへ駆け出していってしまった。

 ウサギの話を聞いた老人とサルとキツネは、ウサギがどんな物を持って帰ってくるのかと、胸をワクワクさせながら、焚き火の準備にとりかかった。

 火がゴウゴウと音を立てて、勢いよく燃え上がった頃、ウサギは戻ってきた。しかし、その手には、何も持っていなかった。

 サルとキツネは、騙されたと思い、

「おれたちを騙すとは、酷い奴だ。木を拾ってこいだとか、火を焚きつけておけだとか、散々人をこき使っておきながら、手ぶらで帰ってくるとは何事だ。お前は、自分が暖まりたいから、、そんなウソをついたんだな」

と、激しく罵った。

 だが、ウサギはそんなことばには耳を貸そうともせず、静かに、こう言った。

 「皆さん、わたしはウソをついたのではありません。わたしには、獲物を捕らえることが出来ません。せめて、この身をもって供養させていただきます

 話し終わるや、ウサギは、パッと燃えさかる火の中に飛び込み、そのまま焼け死んでしまった。

 この意外な出来事に、帝釈天は大いに哀れみの心を起こし、ウサギのこの純真な真心を永遠に残しておこうと、火の中に飛び込んだウサギの姿を月の中に宿し、すべての人々に見せることにしたのである。

潮音寺より

 いかがでありましょうか。月を眺める際は、ウサギの悲しくも、痛いまでの真心を感じたいものです。まごころを、君に。I'll Give The True Love for You.
 『何をしてあげられたかではなく、尊いのはその心である』という思想に非常に感銘を受けました。

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