【ゲーム感想】ファミレスを享受しつづける
夜更かしができない。
三十代になってからは、ますます夜起きていられない。9時から10時には寝ている。
ファミレスという場所も、あまり人生で縁がなかった場所だ。
いつも隣にいるひとに、どんな時にファミレスに行ったか聞いてみた。
「学校帰りにドリンクバーだけでたむろする場所。カラオケ後にまだ話したくて行く場所。テスト前に集まって勉強する場所」
漫画の中の人みたいだね、と言ったら漫画を読まない彼女は首をかしげていた。
深夜のファミレス。それはもう、憧れで、ファンタジーなのである。
昨年2月。プレイ時間2時間程、とあったので旅先に向かう新幹線の中でプレイした。無料だし、スマホでできるし──で、ほんの軽い気持ちで始めたのだ。
常に月の光が射すような、明暗を感じるイラストが良い。
曲が良い。効果音も良い。ドリンクバー中毒になり、何度も行ってしまう。
キャラクターたちの話をいっぺんに聞き出せないのもいいし、それぞれに隠された背景も十分堪能できるストーリーになっている。
ゲームを終えたあと、映画を一本観終えたあとのような、あるいは小説を読み終えたあとのような気分でいた。
旅の行き帰りでもう一つのエンディング回収もして、ムーンパレスの世界観に浸りきっていた。
その後、switch版も販売されたのですぐ購入した。
スマホでプレイした時は、うっかりまちがいさがしをゲットできなかったのだけれど、こんどはちゃんともらった。なにこれ、だんだん難しくなるじゃん。
ストーリーもエンドも分かっている私は順調にswitch版も進めていったが、あるところで先に進むのをやめた。
仕事で疲れた時にゲームを再開し、まちがいさがしをやってドリンクバーに行き、みんなのテーブルを回ってそれぞれが好きなドリンクを配り、前回もした会話を何度もする。
ひたひたと害のない寂しさに包まれて、だんだん私の半身も月明かりに照らされていやしないかと思う。
現実にもどりたくない。
このままずっと、深夜のファミレスに閉じ込められていたい。
先に進むのをやめた私は、永遠の深夜のファミレスを手に入れた。
映画よりお安いのに、時々セールになっている。
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