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理解不能な「ウルトラマンエース」のゴルゴダ星爆破命令

昭和ウルトラマンシリーズ第2期(帰ってきたウルトラマン~ウルトラマンレオ)は、初代ウルトラマン、ウルトラセブンや、その後の平成シリーズに比べると、だいぶ雑に作られた作品が多いように感じられるが、その中でも特出?しているのが「ウルトラマンエース」である。

今回はエースを見た人なら誰もが覚えているであろう、ウルトラ兄弟が十字架にはりつけになった、13話「死刑!ウルトラ5兄弟」14話「銀河に散った5つの星」から粗さがし・・・いや、検証をしてみたい。

早朝、新聞配達をする少年とその弟が、超獣バラバに遭遇。TAC(地球防衛軍的な組織)に電話で知らせようとする兄は、バラバに電話ボックスごと持ち上げられ地面に叩きつけられ命を落とす。
「兄は超獣に殺された」と説明する弟を、警察、TACは一切信じず、電話ボックスが倒れた事故として処理する。
超獣に数十メートルの高さから地面に叩きつけられるのと、その場で電話ボックスが倒れるのでは損壊具合がまったく違うはずだが、そんな細かいことは気にしないのが「ウルトラマンエース」の世界観だ。
そして全編に渡り、子供の言うことはすべてイタズラで片づけ、一切信じない、それがTACだ。

ニセのウルトラサインで、ウルトラ兄弟をゴルゴダ星に呼び寄せたヤプールは、冷凍装置を使いマイナス273℃にして弱らせる。
地球にバラバが出現したことを察したエースだが、光熱を奪われてしまったため、飛び立つことができない。そこでゾフィーら4兄弟は、残りのエネルギーをエースに与え地球に向かわせた。
しかし力尽きた4兄弟は、カラータイマーが鳴り響く中、十字架に張りつけになってしまった。
ウルトラセブンの弱点は人間より寒さに弱いことであるが、この温度で生きていられれば充分強いのでは?と考えさせられる。

一方地球に駆けつけたエースだが、バラバに敗れてしまい、更に空にはウルトラ4兄弟が十字架にはりつけになったホログラムが映し出された。
「バラバの邪魔をしたら、4兄弟の命はないものと思え!」
エースが敗れ、ヤプールがウルトラ兄弟を人質にとったことを知った地球人は、絶望に陥れられた。

TACの人工太陽光を浴びたことで、瀕死の重傷から南夕子とともに息を吹き返した北斗星司は、これを使えばウルトラ兄弟を助けられる、と考える。

しかし南太平洋上のTAC国際本部よりやってきた高倉司令官は、超光速ミサイルの設計図を持参し、これを5日間で完成させ、ゴルゴダ星を爆破せよと命令を下した。

「ゴルゴダ星につかまっている4兄弟は、いずれもこの地球を長年にわたって幾多の地球侵略者の魔の手から守ってくれた、M87星雲の平和の使者たちなんです!」(北斗)
異を唱える北斗らTACメンバーに対し、司令官は「この際、多少の犠牲はやむをえない!」と切り捨てる。

ウルトラ兄弟の命を「多少の犠牲」と言い切る司令官や、自分の故郷M78星雲を言い間違える北斗はこの際どうでもいい。
この口論には、なぜゴルゴダ星を爆破しなければならないのか?という点が欠如しているのだ。

バラバは地球を攻撃している最中で、ゴルゴダ星は地球に衝突するわけでもない。
司令官は、ただ身動きが取れない状態のウルトラ兄弟を殺そうとしているだけなのだ。

そして司令官は作戦に反対し、まだ負傷の傷も癒えていない北斗をミサイルロケットのパイロットに指名。「体力測定などのデーターをもとに、コンピューターが北斗を選んだ」というが、一体どんなコンピューターを使ったのか?

一方はりつけになったウルトラ兄弟は、エースキラーに必殺技エネルギー吸い取られてしまうが、①冷凍②エースに分ける③エースキラーに奪われる、と、ここまで三段階に渡りエネルギーを失っている。

完成したミサイルロケットでゴルゴダ星に向かう北斗。ミサイルをロケットから切り離そうとするが、何度レバーを引いても反応はなく、故障していることが発覚。

「残念ながら思わぬ事故が起こった。しかしながら予定は変更できない。そのままスピードを超光速に切り替えて、ゴルゴダ星に突入してくれ。」(高倉)

と、とんでもないことを言い出す司令官に対し、さすがにTACのメンバーもブチ切れし、竜隊長は北斗に「帰還せよ!」と連絡。司令官の顔面に右フックを浴びせ、基地からたたき出した。ここでの倫理観はまっとうだ。

バラバ出現の報に、TACメンバーは南を基地に残し出動。モニター越しに北斗と南はウルトラタッチでウルトラマンエースに変身し、光速ミサイルを爆破。そしてゴルゴダ星に上陸。
4兄弟の残りのエネルギーをもらったエースは、強敵エースキラーを撃破。

作戦失敗に怒るヤプールが、ゴルゴダ星を爆破するが、間一髪ウルトラ兄弟は脱出に成功。
4兄弟は計4度もエネルギーを放出しているが、結局TACの人工太陽光は、彼らのエネルギー蘇生に使用されていない。

ほかにも、ゴルゴダ星が裏宇宙にあるため、通常の宇宙船では行けない、などどうでもいい設定や、バラバ出現の際にはヤプールが放射能の雨を降らせているにもかかわらず、戦闘するTAC隊員のまわりは晴天だったり、細かいところまで突っ込んだらきりがないが、誰も死んでもいないのに「銀河に散った5つの星」というタイトルがついているのもエースならではの世界観だ。

ウルトラ兄弟はこの無茶苦茶なエースの世界観の中、ヒッポリト星人にブロンズ像にされ、もう一度殺されかけることになる。





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