見出し画像

あかねちゃん(仮名)

前の記事『冷え』を書いているときホッカイロのことを書いていてある人物を思い出した。
あかねちゃん(仮名)である。
ある会社でパートしていたとき、派遣会社から派遣されて来たちょっと変わった子だった。
変わったというか正直変な子だった。
 会社の人たちはみんなその子の前ではにこやかに接したが、陰ではへんてこさに引いて、物笑いの種にしていたし、バカにしていたように思える。

  • 既存の仕事に勝手にオリジナリティを加える

  • 自分の個人的な話を聞かれてないのに一方的に語る

  • 派遣期間が終わったら全員に(顔知らない人にも)直筆の手紙を連絡ボックスに忍ばせる

他にも大小様々な事件を巻き起こし、短い派遣期間で嵐のように去っていった。
そんな嵐の日々のなかで、彼女は私にホッカイロをくれた。
その日私はイライラしていた。あくまでも私的感情でイライラしていた。だからあまり無駄口も聞きたくない気分で、あかねちゃんを含むほとんどの人としゃべりたくなかった。
そんな私に無神経にあかねちゃんは話しかけてきた
「生理でイライラしてるからあまり話したくない」
私は冷たく嘘をいった。
しばらくしてあかねちゃんはニコニコしてホッカイロをくれた。
「これで楽になりますように」
私の嘘を信じて優しくしてくれたのだ。
言っておくけど私はあかねちゃんは嫌いだった。一緒に仕事したら必ず余計なことして面倒臭いし、迂闊に話しかけたら自分語りがとまらなくてウザイ。私には
「そんな話しききたくないから」
と言えるほどの度胸もないからイライラしながら生返事することになるから迷惑だった。
だけど、ホッカイロのくだりは色々な感情がわき出てきて涙が出そうだった。
私が冷たく無視したのに気づいてないのか気にしてないのか無神経に近づいてくれた。そして優しくしてくれた。
よく気むずかしすぎて孤立しがちな私を救ってくれるのはこんな子なのかもしれない。
 今だってキャラじゃないなりにおどけて振る舞って孤立するのを防いでいるけど、本来のなにかに集中すると他人をシャットアウトしたくなる私が、おどけてる私の中で苦しんで暴れてる。
こんな気難しい私を乗り越えてつきあってくれる人は、あかねちゃんみたいな無神経な人間くらいなのかもしれない。
今、家でも家でまでおどけて話すのが嫌で帰ったらすぐ部屋に引きこもって、居間に入ってこられてもイヤホンでコミュニケーションとれないように振る舞ったらほんと一人になった。
自分の思いどおりになったけど、これでいいのか?と思うときもある。
でも、外でおどけた振り、バカな振り(これは振りだけともいえない)が疲れて、家ではボーッとしたいし、悩みごとなんかを言われたくないし愚痴も聞きたくないのだ。お茶もいれさせられたくないし、お茶のみながら話しもしたくない。暗い部屋で転がってぶつぶつ言いながらボーっとしたい。
そして、ボーッとしながらあかねちゃんのことを思い出したりするのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?