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【米国AI株】①生成AI有力各社のビジネスモデル②各社から見た最新の市場見通し・戦略③まだ広く認識されていない投資機会は?

AI技術は経済全体に大きな影響を及ぼし、特に米国の株式市場ではAI関連企業が大きな動きを見せています。
下記をスライド44枚にまとめましたので、改めてのおさらいや、今後の投資戦略の参考にして頂ければ幸いです。

①生成AI有力各社のビジネスモデル
・半導体製造(例:NVIDIA)
・クラウド・サービス・プロバイダ(例:Microsoft)
・データベース管理ソフト(例:Snowflake)
・AIモデル提供(例:OpenAI/ChatGPT)
・既存ソフトにAI搭載(例:Servicenow)

②各社から見た最新の市場見通し・戦略
・GPU需要の持続性
・NVIDIAの次の戦略
・トレーニングから推論への市場シフト
・データベース管理ソフトが受けるAIの追い風
・NVIDIAと協業するソフト会社
・PC/スマホ上でAI推論が完結する「エッジAI」

③まだ広く認識されていない投資機会は?
・「エッジAI」に注目


生成AIサプライチェーンと主要企業

AIを使うまでのステップを見てみましょう。まず、アマゾンなどのクラウドサービスプロバイダーが半導体を調達してデータセンターを建設。次に、OpenAIなどがデータセンターでデータを使ってAIモデルをトレーニング。最後に、私たちユーザーがAIモデルにリクエストを送り、データセンターで推論が行われ、答えが返ってきます。

主要な企業の例を挙げます。データセンターの構築、データベース管理、既存アプリにAIを搭載するなど、さまざまなアプローチがあります。
半導体製造プロセスに関連するファウンドリや半導体製造装置は別の機会にまとめたいと考えています。

NVIDIA

ここからは個別企業を見ていきます。NVIDIA(エヌビディア)について。データセンターの主要な部品として、トレーニングや推論に使われるGPU半導体の開発に注力しています。

NVIDIAはサーバーでのCPUからGPUへの転換を長期トレンドとして見ています。NVIDIAのGPU需要も一過性のものではなく、今後も持続すると見通しています。

NVIDIAは半導体だけでなく、ソフトウェアにも強みを持っています。NVIDIA AI Enterpriseというランタイムは、データ処理からAIモデルのトレーニング、推論、データセンターへの展開まで幅広い用途に使われています。高いGPUシェア⇒ソフトウェアの業界標準化⇒GPUの需要増加、というサイクルがうまく回っています。

NVIDIAの売上高と営業利益率です。生成AI向けの高い需要により売上高は急拡大し、また高い価格販売により営業利益率は50%を超えています

NVIDIAの次の成長ステップについて。2025年においてもデータセンター市場・生成AI向けGPUの成長は続いていると予想しています。世界各地域でのデータセンターの拡大、そしてNVIDIAの次の戦略である、①ソフトウェア企業向けに生成AIモデル構築サービスを提供するAIファウンドリ、②企業向けカスタム生成AI構築がドライバーになるとしています。

NVIDIAは、トレーニングや推論などのAI処理に対応するソフトウェア群、「NVIDIA AI Enterprise」を活用して、ソフトウェア企業向けに生成AIモデル構築サービスを提供するAIファウンドリを展開します。初期の主要なパートナー企業となったServicenowとの取り組みについては後ほどご紹介します。

NVIDIAは次のステップとして、大企業が独自のAIモデル構築を進める、と予想しており、ハードウェアとサービスを提供してこの取り組みをサポートする戦略です。

AMD

AMD(エーエムディー)について。NVIDIAと同様に、データセンターの主要な部品として、トレーニングや推論に使われるGPU半導体の開発に注力しています。

データセンターGPU市場の規模を従来予想から上方修正し、今後数年間は年間70%以上と著しい成長を予想しています。

最近AMDが発表したInstinct MI300Xは、生成AI用の世界最高性能のアクセラレータで、特に推論パフォーマンスにおいてNVIDIAを上回るとしています。

NVIDIAを追い上げるためにはソフトも重要になりますが、NVIDIAのクローズドなCUDAと対照的にAMDはROCmというモジュラーでオープンソースな設計を採用しており、AI開発コミュニティによる迅速な貢献によりソフトでもNVIDIAを追い上げています

AMDの業績へのインパクト。データセンターGPUの収益は増加し、MI300は2024年に20億ドルの売上に到達すると予想しています。

Microsoft

Microsoft(マイクロソフト)について。AI時代をリードするクラウドサービスプロバイダーとして、企業がChatGPTをセキュアな環境で実行可能なサービスを独占的に提供しています。

各社のクラウドサービス売上高の成長率です。企業のAI活用がChatGPTを中心とする中、3社のうち唯一Microsoftは成長率をブーストしています。

MicrosoftとOpenAI(ChatGPT)の独占提携により18,000以上の組織がAzure OpenAIサービスを使用し、Azure(Microsoftのクラウドサービス)はシェアを拡大しています。

MicrosoftがOfficeにAIアシスタント「AI Copilot」を搭載。これにより、WordやExcel、PowerPointなどの利用方法が変わります。

MicrosoftがロールアウトするOffice Copilotについて。Fortune 100の約40%がプレビューに参加しており、高い期待が寄せられています。

Salesforce

Salesforce(セールスフォース)は企業向けの顧客関係管理ソフトを提供。企業の持つデータを「データクラウド」で一元管理し、生成AIアシスタント「アインシュタインGPT」はそのデータを参照することにより、その顧客にカスタマイズされた回答を返します。

データ参照によるカスタムされたAI回答の重要性を強調。世界大企業トップ100の17%がアインシュタインGPTコパイロットの顧客であり、データクラウドがAI活用の基盤になっています。

Salesforceの売上高成長率。データクラウドが全社の成長率に大きく貢献しています。

Servicenow

Servicenowは業務フロー管理ソフトを提供。NVIDIAはServicenowが持つ業務フローの過去ログ(例:社内ITについて、どんな問題が生じ、どのようなプロセスで、どう解決されたかなど)のデータを高く評価し、これらのデータを基にAIモデルを構築しServicenowアプリに搭載する、といった事業でのパートナーシップを構築しました。

ServicenowとNVIDIAのパートナーシップ。この協業により、生成AIモデルの構築が可能になり、NVIDIAにとっては大企業へのリーチが拡大します。

ServicenowがAIを搭載したNow Assistを導入。生成AIによるビジネス変革を先取りし、顧客のパイプラインを加速させています。

Servicenowの売上高成長率。まだ生成AIによる直接の業績貢献はありません。生成AI搭載がQ4からの成長を加速するかが注目されています。既存事業は好調で、売上成長は再加速しています。

Snowflake

Snowflakeについて。企業のビッグデータを収集し、AIモデル構築に活用可能な形で整形・一元管理するデータプラットフォームを提供しています。

SnowflakeのAI時代における企業データの一元管理。生成AIの活用に必要な整理されたデータ管理への関心が高まっています。

Snowflakeはデータ管理に留まらず。スノーフレーク・コルテックスやスノーパーク・コンテナサービスなど、AI機能の提供を強化しています。

スノーフレーク・コルテックスについて。既成モデルを用いたデータ処理(翻訳・要約など)をSnowflake内で行います。

スノーパーク・コンテナサービスについて。Snowflake内でのデータを活用したAIトレーニングを可能にし、GPUの使用も可能です。

Snowflakeの売上高成長率。高い成長から鈍化しているものの、生成AIを追い風に下げ止まりが見られるかが注目されています。

Intel

Intel(インテル)はデータセンター用CPUを提供しています。

Intelは生成AI推論におけるCPUの有利性を強調します。第4世代XeonがAI加速に採用され、トップ10ハイパースケーラーすべてが含まれています。次世代データセンターCPUにより、GPUとの比較でのコスト優位性は拡大する、としています。

一方、PC市場においては、PC上にAIモデルを置き、PC上で推論処理が完結する「エッジAI」を次のトレンドとして協調しています。

Intelは2024年の生成AIの話題は「エッジAI」が中心になるとしています。生成AIの構築(トレーニング)は一部の人だけが行い、生成AIに関するコンピューティング需要は推論へとシフトする。そして、コスト、所要時間、セキュリティ等の観点から、推論はPC等ローカルデバイス上で行われるのが主流になる、とします。Intelはこの需要に対応するため、エッジAIに最適化されたPC半導体を発表しました。今後2年間で大規模な供給を行う予定です。

我々の見方としては、エッジAIが次のトレンドとなる可能性には合意しますが、爆発的に普及するためには、エッジAIが必要となるキラーアプリが必要になると考えています。今のChatGPT中心の生成AIの使われ方であれば、データセンターを介した推論で十分に思えます。
Intelは今それを模索中です。AI PCアクセラレーションプログラムを通じて、PC内でのAIソフトウェア開発を促進することを目指しています。

Qualcomm

我々としては、「エッジAI」を次のトレンドと見るのであれば、Qualcomm (クアルコム)が最も注目すべき企業だと考えています。Qualcommはスマホ・車に搭載される半導体を開発しています。Qualcommの「エッジAI」戦略はスマホ、車、PCに展開します。また、上記Intelセクションにおいて触れたエッジAIのキラーアプリに関しても、Qualcommは答えを持っている可能性があります

QualcommはエッジAIが必須となる時代を予見し。生成AIがユーザーエクスペリエンスにおける重要な変化を生み出すと考えています。

スマホ用では生成AI処理能力が特に強化したプレミアムモバイルプラットフォーム、Snapdragon 8 Gen 3を発表。このプラットフォームはiPhoneには採用されていませんが、ハイエンドAndroidスマホの多くに搭載されることになります。生成AI機能により平均価格は上昇します。

車載用半導体について。スマートフォン企業としてのDNAを活かし、自動車操作全般のデジタル化・エンタメシステム(デジタルコックピット)と自動運転処理(ADAS)を統合したシステムで強みを持ちます。まだ全社の中では比較的小さい事業ですが、売上高を2026年に倍にする計画です。

QualcommはIntelと競合する「エッジAI」に特化するARMベースのSnapdragon X EliteによりノートPC市場に参入しました。競合との比較で高いパフォーマンスと省電力性を誇るとしています。
そして、我々が注目するのがMicrosoftとのパートナーシップです。我々はMicrosoftがWindowsのユーザー体験を刷新する要として位置付けるCopilotがエッジAIのキラーアプリになりうると見ています。MicrosoftのソフトとQualcommの半導体が両輪として開発されるのであれば、新規参入のPC市場において意味あるシェアを獲得し、会社としての成長を加速させることが可能と考えます。

バリューエーション考察のさわり

2023年の株価パフォーマンスは、ここで取り上げた生成AI関連企業が市場をリードしました。特にNVIDIA、AMDが群を抜き、次いでAI搭載ソフトが高パフォーマンスとなりました。
Qualcommへの期待はまだ高くない状況です。

さて、我々の分析の締めくくりとして、バリュエーションと成長率の関係を見ています。一つの点が一つの株を示しています。市場全体では成長率が高いほどPERが高く、そして高い成長率にはプレミアムが付与される(回帰曲線が下に凸)という関係がみられます。
これだけを見ると、NVIDIAは株価大幅上昇を経た今でも割安に見えます。この生成AIブームにおける成長・利益率は一時的と見られている可能性があります。この辺りを突き詰めれば、「NVIDIAに乗るにはもう遅すぎる」ということはないかもしれません。
また、Qualcommも表面的には割安に見えます。
これらは一面的な見方です。投資機会を正確に評価するためには、各社の詳細な分析が必要不可欠です。個別企業のより詳細なバリュエーションについては別の記事で取り上げたいと思います。

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