見出し画像

ディナーサーヴィス♬チームワークでーす💪

先週の土曜日のことだ。
ランチのサーヴィスが終わる頃、ブルックリンが怖いことを言った。
「マシューが来ないかも・・・聞いてみる」
マシューは私と一緒にディナーをサーヴィスする予定だ。
ブルックリンのテキストに、彼はすぐに返信した。

「俺は行かない」

・・・なんで?

どうやら、アンのやっつけ仕事が原因らしい。
マシューは、通常土曜日は働かない。けれども、私ひとりじゃ大変だと思ったアンが、マシューに確認せずに、土曜日にシフトを入れちゃったらしい。犯人のアンは、スケジュールを作って、元気にフィリピンへ旅立った。
アンの勝手な変更などくそくらえで、マシューは来る気ゼロだったようだ。
さすがはアメリカ人、はっきりしている。

優しいブルックリンは、
「ユミひとりにするのは、あんまりにもかわいそうだから、他の人にも聞いてみる」
そう言って、他の高校生従業員にもテキストをした。
全員「ムリ」という返事だ。
そりゃそうだ。高校生が、会ったこともないおばさんを助けるために、休みを返上して仕事に来るとは思えない。
「私が残ってあげれたらいいんだけど・・・」
ブルックリンは悲しそうな顔で言う。
残ることはできないけれど、彼女はデザートを準備したり、私のためにできる、すべてのことをしてから帰宅した。

焦ったところでどうしようもない。休憩することにした。
ランドリールームの中にある休憩室は、いつも洗剤と柔軟剤のにおいが充満している。くさいよりいいけれど、あまり食事をする気にならない。
とはいえ、他に休憩する場所はない。中に入ると、アフリカ人のナースが食事をしていた。
「それなに?」
「インジェラ。アフリカのパンよ」
クレープみたいな生地だ。灰色じゃなければ食べてみたい一品だ。
彼女はちぎったインジェラで、グリルした野菜を器用につまみ、食べている。
「家から持ってきたん?」
「そう。ハンドメイドよ。ハンドメイドが一番」
「野菜しか食べないの?」
「たまにチキンも食べるよ」
「ここは長いの?」
「13年。あなたは仕事に慣れた?」
「ぼちぼちやねー。今日は初ディナーで、初ひとりサーヴィス」
「そうなんや。がんばってねー」
とりとめのない話をして別れた。

キッチンに戻り、クックのジョリーに言った。
「ディナーははじめてやから間違いがあったらごめんね。私ひとりやし、遅くなると思うけど、よろしくね」
「そうなん?わかった」
ジョリーはいつも鼻唄を歌いながら、鍋やらスパチュラやら、使った調理用具をシンクに放り込む。こちらが忙しいときでもお構いなしだ。彼女が洗い物をする姿を見たことがない。
サーヴィスはともかく、洗い物と片付けで帰りは遅くなると覚悟する。

ディナーが始まった。
ドリンクサーヴィスをするときに、オーダーをとる。
「今日は私ひとりやから、手際が悪くなると思うけど、堪忍してねー」
「まぁ、どうしてあなたがひとりなの?」
「スケジュールのミステイクみたい」
「ひどいわ!大丈夫よ。私たちはユミ(YouMe)の味方だから安心しなさい!」
「はーい。ありがとう」
敵味方の話ではないけれど、なんだか心強い。

ドリンクサーヴィス⇨オーダーを取る⇨キッチンにオーダーを伝える⇨ドリンクサーヴィス⇨・・・・

この作業を繰り返すけれど、ディナーが出来上がると「ディナーを運ぶ」も追加される。
ダイニングルームとキッチンを行ったり来たり、住民は次々と食事に訪れるし、ディナーは出来上がるし、やることが順調に増えてくる。

何度目かにキッチンに戻ったときだ。
休憩室にいたアフリカ人のナースが、ディナーのプレートを持って立っていた。
「うぁー!手伝ってくれるんや!ありがとう!」
次にキッチンへ戻ると、また別のアフリカ人のナースが手伝いに来てくれた。

嬉しい💛

休憩中におしゃべりをしたナースは、私がひとりでサーヴィスすることを、ナースのボスに話した。それを聞いたボスが、
「手伝いに行きなさい!」
と言ってくれたらしい。

ほとんどの住民にディナーをサーヴィスしたら、裏へ行って洗い物だ。
ジョリーが使った鍋やボウルが山積みだ。大きい物を片付けて、スペースを作ってから、住民の皿を下げに行く。
皿、コップ、シルヴァー、ボウル、ザル、次から次へと洗い物が出てくる。
ナースたちはディナーサーヴィスを終えると、自分たちの仕事へ戻ったので、私ひとりで洗い場とダイニングルームを行ったり来たりする。

ディッシュウォッシャーを通した食器が次々とたまってきたときだ。
「私が片付けるから、ユミは洗い物だけがんばって」
キッチンを片付け終わったジョリーが手伝いに来てくれた。
勤務終了の6時半になると、きっちり仕事を終えて帰って行ったけれど、彼女が手伝ってくれるとは思ってもみなかったので、びっくりだ。

またまた嬉しい💛

洗い物を終え、ダイニングルームに掃除機をかけ、戸締りをしてから、10時まで勤務しているナースにお礼を言いに行った。
「今日はありがとうございました!」
「こんなことが二度と起こらないよう、私からきちんと話すから安心しなさい。私もひとりで住民全員を看たことがあるけど、すごく大変だったからわかるわよ!」
インドネシアの人かな?頭にヒジャブを巻いたナースのボスは、聡明な感じで、とても貫録がある。
彼女が「ユミを助けに行けー!」と言ってくれたから、二人のナースが次々とディナーを運んでくれたから、スムーズに、ディナーをサーヴィスすることができた。

ブルックリン、ナースたち、ジョリーのヘルプと住民たちの応援、みんなのおかげで乗り越えた。
感謝しかない。嬉しい体験でした♬


最後まで読んでくださってありがとうございます!頂いたサポートは、社会に還元する形で使わせていただきたいと思いまーす!