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愛でる

「お疲れ様~。本当にありがとうねえ」

カバンを見つめながら、思わずそんな言葉が私の口を衝いて出てきました。

つい先日、私が警備員になって以来ずっと使用し続けていた仕事用肩掛けカバンの『肩掛け部分』が大きく破損してしまいました。

誘導棒・警備靴・ヘルメット等々。

そんな私の重い『商売道具』達をぎっしり詰め込んで働き続けてくれた相棒は、私の目にはだいぶくたびれているように映りました。

肩掛け部分だけを交換し引き続き使用する手もありましたが、私が警備員になってもうすぐ3年ですから「さすがにもうカバンを休ませてあげたいな」との思いが上回りました。

相棒、3年間ありがとね

こんな感覚になったのは、初めてでした。

今の仕事に就くまで、私は仕事に関わる物品を大切に扱うことはほとんどありませんでした。

書類を整理せずに溜め込み、「どこに何があるのかわからない」状態になることも多々。

中でも最悪だったのが、タイムカードを不注意で紛失して、結果、基本給しかもらえないという大失態を犯してしまったことです。

この件で、妻に大目玉を食らったことは言うまでもありません。

そんな私でしたが、現職の警備員は性に合っているのか、仕事に愛着も湧き、前述の『商売道具』も基本的に綺麗な状態が保たれています。

なんと言うか「可愛い」んですよ。白手袋なんかは、ほぼ毎日洗っているくらいです。

イチロー選手が、「野球を上手くなるにはどうしたらいいですか?」との質問に対して、「道具を大切にすることです」と答えてらっしゃる理由が、今ならちょっとだけ理解出来ます。

きっと「大切にすること」から、すべてが始まっていくんですよね。

私にも「誘導を上手くなりたい気持ちがある」ということなのかな?

それにしても、

「ありがとう」「お疲れ様」

のような「温かい労いの言霊」は、柔らかく耳朶に残りますね。

また、その残響のようなものが私の身体の中にも沁みわたっていって、自分自分にも「ありがとう」や「お疲れ様」を言えた気持ちがして、不思議な多幸感に包まれました。

そう。

カバンも頑張ってくれましたけど、それに負けじと私も頑張ってきたんですよね。

それを改めて確認するかのように、3年間の出来事が私の頭の中を駆けめぐりました。

「愛でる」って、いいですね。

家族・仕事・自分・etc。

日々愛するものが増えていく未来に心踊らせながら、今日はリュックタイプの新相棒を背負って、大好きな現場に向かいます。

新相棒、よろしくね

早速、雪が降っています。『雪中警備』も悪くないですね🎵

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