Nyori

色々とエンジョイしてる字書きのオタク。好きな本のこととか博物館の感想とか。

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マガジン

  • 考古学いろいろ

    主に古墳時代を中心に、実際に訪れた遺跡や考古学書の感想をまとめています。

最近の記事

月岡芳年 百の月をめぐる物語【太田記念美術館】

月には不思議な魔力がある。 基本的に人類は太陽の子だ。朝日とともに起き、日没とともに眠る。太陽の巡りを一年とし、光を擬人化して神を見出す。 ……ところが、月光愛好者の派閥というのも太古の昔から脈々と途切れず存続しているんですよね。 20世紀の日本だと小説家・稲垣足穂が月光愛好者の頂点になるのでしょうか。彼は何度もエッセイにつづっています。太陽光ではなく、夜のネオンに彩られた菫色の六月の空の下、ダイヤよりガラスを、自然物よりメカニクスを、宇宙的郷愁をかきたてる月の光を。 足

    • キトラ古墳から高松塚古墳まで徒歩観光した話(後編)

      (前編のあらすじ) 2024年1月、キトラ・高松塚古墳の壁画見学のため明日香村に向かった作者。キトラ古墳壁画を堪能するも、高松塚古墳へ歩いていく道の途中で方向を見失ってしまう。果たして、無事に辿り着けるのか!? …とまぁ、茶番はここまでにしまして高松塚古墳を見学する後半パートです。それでは、キトラ古墳周辺地区で迷子になっているところからスタート。 北に向かって歩く。迷う。 キトラ古墳の周辺は国営飛鳥歴史公園 キトラ古墳周辺地区として保護されており、古墳本体のほか、壁画保

      • REALFORCEがUSB3ポートで認識されない話

        普段はアートと古墳と読書の話をしている当アカウントですが、中の人はテック系のはしくれの端くれ。たまにはテクノロジー記事も書こうじゃないか! ということで、先日悩まされたキーボードがPCに認識されない問題とその解決法のメモです。 問題となった機器たち REALFORCE SJ38D0モデル: 東プレが誇るタイピング感抜群の高級キーボードREALFORCEシリーズの第一世代。日本語配列108キー、USB有線接続、カラーはホワイト。 すべてのキーが押下げ圧30gという驚異の軽さ

        • 自由研究を極めたら ~ぼくが選んだ最強の岡山古墳【同人誌レビュー】

          自由研究。 それは夏休み最終日の小学生を悩ませ、家族保護者を混沌と寝不足の淵へ落とす恐るべき刺客… ではなく。 本来は子供が自分の趣味や嗜好に従って、自由な発想で行う研究のことですね。 夏休みの宿題の代名詞になったのは、長期休暇で時間が余っているので自由研究させやすいと学校が判断した古の伝統が生き残ってしまったからでしょう。主旨通りならもっと楽しいもので良いはず。 先日、そんな自由研究本来の姿を思い出させてくれる同人誌(個人誌?)を読みました。面白いのもそうですが、普通

        月岡芳年 百の月をめぐる物語【太田記念美術館】

        • キトラ古墳から高松塚古墳まで徒歩観光した話(後編)

        • REALFORCEがUSB3ポートで認識されない話

        • 自由研究を極めたら ~ぼくが選んだ最強の岡山古墳【同人誌レビュー】

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          9本

        記事

          キトラ古墳から高松塚古墳まで徒歩観光した話(前編)

          これは奈良県明日香村の名所キトラ古墳と高松塚古墳の墳形と壁画を連続で見学した体験まとめnoteです。経路は  近鉄吉野線 壺阪山駅 → キトラ古墳 → 高松塚古墳 → 近鉄吉野線 飛鳥駅 電車と徒歩、のんびりぶらついて4時間のコース。 【感想】 ・どちらの古墳も本体は意外とシンプル&小サイズ ・キトラ古墳は壁画公開期間の訪問がオススメ! ・キトラ古墳から高松塚古墳は歩ける。でもちょっと迷う。 旅に出た理由~まずは地図を確認 奈良県明日香村の古墳といえば、やっぱりキトラ

          キトラ古墳から高松塚古墳まで徒歩観光した話(前編)

          デ・キリコ展、行きつ戻りつの絵画世界【東京都美術館】

          不思議と懐かしく、郷愁をかき立てられる絵に出会ったことはありますか? 幼い頃住んでいた町に戻ってきたような、昔見た夢の景色に再会したようなノスタルジア。 私にとってはジョルジョ・デ・キリコの絵がそうです。 デ・キリコが描く憂いに満ちた街の風景には、自分でも不思議なくらい惹き込まれます。 一番好きな絵は『都市の神秘と憂愁(別名:通りの神秘と憂愁)』。輪を回す少女とアーチのある都市、向こう側から伸びる人影。それらが現実にはあり得ない角度で交差しつつも一枚の絵の中で調和する、何と

          デ・キリコ展、行きつ戻りつの絵画世界【東京都美術館】

          法然上人と浄土宗の宝物大集合【国立博物館】

          現代を生きる我々にとって、仏教とは人々を救う仏様に導かれて極楽往生出来るように願う宗教です。よほどの極悪人はともかく、基本的に人は極楽に行くものというイメージがありますよね。 でも歴史を紐解けば、選ばれた人しか救われないとされていた時代もありました。例えば平安時代の仏教(密教メイン)は国家鎮護および財力を持ち教義を知る貴族層のための宗教であって、無知な民衆に救いはありませんでした。 「それはおかしい!」と訴えた改革者たちが現代に続く仏教観を作っていったのですが、その中に源空

          法然上人と浄土宗の宝物大集合【国立博物館】

          【大吉原展】現代人には不可解なサロンと苦界の間を探る。

          上野・東京藝大校舎内の美術館にて開催中の吉原遊郭を主題とした初の大規模展覧会『大吉原展』。そろそろ会期末というので観に行ってきました。 開催前にSNS上で微妙に炎上していた本展、非難を受けて会場の解説文は多少変更されたとはいえ、出品作品に変化はないそうです。 前期後期で出展物をガラリと入れ替えたそうですが、私の見た後期展示の範囲内には「女性の権利侵害を助長する」ような要素はほとんど見当たらず。(というか、何でこの展示内容で炎上するんだろう…?) 大英博物館所蔵の貴重な浮世絵

          【大吉原展】現代人には不可解なサロンと苦界の間を探る。

          【河鍋暁斎×松浦武四郎】自由過ぎる趣味人たちのコレクション【静嘉堂@丸の内】

          二子玉川から東京丸の内に移転した静嘉堂美術館。 現在、河鍋暁斎の展覧会を開催中と聞きつけたので見物に行ってみたところ、「河鍋暁斎と松浦武四郎の共同展覧会」でした! ところで、松浦武四郎ってどなた? 北海道の名付け親さん! そして職業欄が平賀源内ばりの複雑さ。凄まじくアクティブな方がいらっしゃったもんです。 というわけで、この展覧会は江戸末期から明治にかけて活躍した二人のマルチタレント――画家・河鍋暁斎とそのパトロンである文人・松浦武四郎の共同展だったのでした。 開催概

          【河鍋暁斎×松浦武四郎】自由過ぎる趣味人たちのコレクション【静嘉堂@丸の内】

          春夏秋冬の花々が織りなす日本画の世界【山種美術館 花flower華2024】

          JR恵比寿駅から広尾中学校のある丘を登っていくと、優美な日本画コレクションで知られる山種美術館が見えてきます。 現在、四季の花をテーマにした所蔵作品展『花・flower・華 2024』開催中(5/6まで)。日本画でお花見を楽しみたい方必見です。 メインビジュアルになっているのは奥村土牛による京都・醍醐寺の桜を描いた一枚『醍醐』。 豊臣秀吉の醍醐の花見で有名なこの桜の花びらを大胆にデフォルメし、薄桃色の重ね塗りを繰り返すことで、花を見た時の印象を幻想的に表現しているようです。

          春夏秋冬の花々が織りなす日本画の世界【山種美術館 花flower華2024】

          名画、そもそも絵画とは何か? マティス展で考えた【国立新美術館】

          アンリ・マティスの絵、良いですよね。 大胆にデフォルメした形状、生き生きした色彩。見ていて楽しくなる作品の数々。 その一方で、こう疑う瞬間もあります。マティスって実はけっこうヘタなのでは、と(超失礼) マティス作品って何だろな? そんな疑問を抱えつつ、国立新美術館の『マティス 自由なフォルム』展を観た感想と考えたことを記事にしました。 展覧会の前に:子供の落書きのような絵 美術界には「子供の落書きにしか見えない」と揶揄される画家が何人かいます。よく挙がるビッグネームの筆

          名画、そもそも絵画とは何か? マティス展で考えた【国立新美術館】

          繊細高密度の花鳥風月【池上秀畝展感想】

          池上秀畝展@練馬区立美術館に行って来ました。展覧会は2024年4月21日まで。終了間際ギリギリでした。 スマホのオススメ通知で知った展覧会でしたが、想像を絶する素晴らしさに大満足。 東京展終了後は(5月から)長野県立美術館に巡回するようなので長野市の日本画ファンの方はぜひご覧ください。オススメ ところで、池上秀畝って誰? 明治~昭和の日本画家と言われても横山大観とか上村松園あたりしか思いつかない人間なので、池上秀畝の名前にもピンときていませんでした。 調べて納得。 岡倉天

          繊細高密度の花鳥風月【池上秀畝展感想】

          【北欧の神秘】ムンクの叫びだけじゃない、北欧絵画の世界【SOMPO美術館】

          北欧と言えば ノルウェー、スウェーデン、フィンランド。 フィヨルド、オーロラ、白熊にヴァイキング。 北欧神話にカレワラ、イプセンの戯曲『人形の家』、シベリウスの交響詩『フィンランディア』。 おなじみ『ムーミン』やIKEA。 気付けば日本にしっかり根付いている北欧文化。ですが絵画に限っては意外と目にする機会がありません。 いや、ひとつあるんですよ。とてつもなく知名度の高いノルウェーの油絵。世界的に知られてるのが。 ムンクの『叫び』 叫んでますね。ウネウネです。 忘れよう

          【北欧の神秘】ムンクの叫びだけじゃない、北欧絵画の世界【SOMPO美術館】

          始皇帝陵の発掘調査って兵馬俑以外でもガンガン進んでるんですね!?【読書メモ】

          日本の古墳の本以外の考古学本も読みたいな…せや、中国の遺跡本読んでみよ!と意気揚々とページを開き、タイトル通りの叫びを上げました。 皆さんご存じでしたか!? すみません、私は知らなかったよ! 書誌情報 「始皇帝」 始皇帝。 初めての皇帝。ザ・ファースト・エンペラー。 天帝と王しかいなかった中国で、「初めて国土を統一したんだから王より偉くなっても良いよね」と皇帝なる言葉を生み出した人物。 (本名はおそらく趙政さん) 「始皇帝」の名はたぶん、永遠に語り継がれるんでしょう。

          始皇帝陵の発掘調査って兵馬俑以外でもガンガン進んでるんですね!?【読書メモ】

          【画像生成AI】クリムトかぶれのChatGPT君とお花見してみた。

          春は桜。とは言うものの、雨が降ったり風が吹いたり、存外お花見する機会って貴重ですよね。 存分に桜(のようなもの)を見て和みたい。 画像生成あそびも兼ねて、ChatGPT搭載のDall-E3でお花見気分を味わってみることにしました。 コンセプトさて、どんな画像を作ってもらおうか。 5分くらい考えて、今回は以下のようなコンセプトでいくことにしました。 桜の花と、それを見上げる妖精さん 夜桜をイメージ。背景は暗く、桜はほの白く発光している感じ クリムト風を基準に味付けし

          【画像生成AI】クリムトかぶれのChatGPT君とお花見してみた。

          漢字が読めなくても楽しい中国古代青銅器入門

          難読漢字と美術館 漢字が読めない。覚えられない。 そんな悩みを持つ美術館好きの人間にとって、漢字文化圏の文物はちょっぴり敷居が高いもの。 というのも、 『八橋蒔絵螺鈿硯箱』←尾形光琳作の国宝 『伊万里色絵花卉文輪』←古伊万里 柿右衛門様式の重要文化財 読めない!! 作品が素晴らしいことは分かるけど! 読み方が! 分からない!! もちろん、ちゃんと読めばこの漢字だらけの名称は特別難しいことを言っているわけではなく、「IKEAの桜柄プレート」くらいの意味合いであること

          漢字が読めなくても楽しい中国古代青銅器入門