見出し画像

地のしのお話


#和裁 #和裁入門 #着物をハンドメイド #ハンドメイドの浴衣 #作務衣
#作務衣を縫う #洋裁 #服作り #地のし #地なおし #水通し


地のしや水通しについて


お気に入りの布を買ってきたら、まずやらなければいけないのが地のしになります。
洋裁のテキストを見ますと地のしの方法が書かれています。
洋裁のテキストでは、布に霧吹きで十分に水分を与えビニール袋に入れて一晩おき、アイロンで布目を整えるとあります。
多くの初心者の方が地のしの本当の必要性を理解せずに、そして何名かの方は地のしを省いた結果、お洗濯したら小さくなったという失敗をします。


和裁の学校でまず教えられたことが、布は水を吸って縮み、アイロンの熱で縮むという事です。
布の種類によって縮む率が違うので、性質の違う布を合わせて使うといろいろトラブルが発生します。
このトラブルを回避するために、地のしを行うのだと教えられました。


和裁は多くのお流儀がありますので、お流儀によって作業内容や呼び方が変わるかもしれません。
また布の性質によっては家庭で行わずに、専門の業者さんにお願いする事もあります。
ここでは家庭でお洗濯をするという前提でお話します。


つまり木綿や麻、ウールなどの布地になります。絹は専門の業者さんにお願いします。
霧吹きで行う場合と、布をたらいなどにザブンとつけてしまう場合があります。
どちらの方法を行っても良いのですが、布の幅や全体の布の量によって作業内容を選びます。


元の生地の風合いを損ねず、出来上がった時に市販品のような感じを重視するのであれば霧吹きで行う事をお勧めします。
この方法の欠点は水分が十分に回らず、水を含んで縮むときに縮み切れない部分が発生する危険があります。


その為、家庭でお洗濯する事が確定の物であればたらいなどでしっかり水を吸わせる方法をお勧めします。
ただし自家消費分であれば良いのですが、よそのお家の物をお預かりした場合は一言お断りしてから行うようにします。
糊などがついていた時、水を通すことで若干糊が落ちてしまう場合があり、多少なりとも風合いが変わる事があります。
また市販の洋服生地では問題が起きる事が少ないのですが、水につける事で染料が落ちたり他にも問題が発生する場合があります。
水に付けずにドライクリーニングがお勧めの加工がされていると、独特の風合いが損なわれることもあります。


少し古い話になるので最近の物は大丈夫と思うのですが、浴衣など色が落ちる生地の1つです。
紺地に白抜きの模様などは水通しするときにちょっと気を使います。
紺地が色落ちするのは当然であり、本藍染めほど色が落ちます。
問題は白い模様の所が染まったり、模様がにじんで崩れたりしないか気を使います。
端のほうを少し濡らしてみて様子を見ながら大丈夫か確認しながら行います。
模様に影響が出なければ良いのですが、もし影響が出そうであれば霧吹きに切り替えます。


画像1


水通しの行い方


作業時間は、着物1着分の布を行うとき朝9時から行って丸1日かかると思っておけば間違いないです。
アイロンをかけるだけと思っていたら、かなり時間がかかってしまったなどと言う事にもなりかねませんので、十分に時間を見て行ってください。


私はたいていの場合、たらいを使って水通しをします。
まず布に水が吸いやすいように、屏風たたみとか蛇腹たたみとか呼ばれる方法で布をたたみます。
つまり布がジグザグにWになるようにたたみます。


布に水を浸すのか?それとも水をかけるのか?
これはどちらでも問題ないです。
ただし前述したように、もしかして染料が溶け出して問題が起きたら困るとか、水にぬれる事で風合いが変わっては困るという場合は布端をそっと水に浸してみて大丈夫かどうかの確認をとります。


私は現在、台所の一角に洗濯機がある都合上、たらいを台所のテーブルの上に置き布を入れて水をやかんでかけています。
後で脱水機にかけますので、作業がしやすい場所で行ってください。


水に布を浸した後、何分間か放置するのですが重要な事は時間ではありません。
とにかくまんべんなく布が水を吸う事が重要になります。
糊が効いている布は水を吸いにくいです。
布の間に水を入れるようにしてしっかり水を吸わせてください。
布が水を吸ったのを確認し、念のため2-3分放置します。
水が全体にいきわたったら、脱水機をかけて水気を取り除きます。


画像2


地のし


布が十分に水を吸い、脱水機で水気が無くなったらアイロンをかけます。
アイロンはコード付きの物が良いです。
コードレスだと非常にかったるいです。


アイロンをかける時、布目を整えながら行います。
布目とは布の織り目の事ですが、縦横が直角になるようにアイロンで整えます。
木綿や麻の布であればあまり気にせずアイロンをかける事ができます。
ウールもアイロンの温度を中に設定してかけます。
一番気を使うのがポリエステルなど化繊の布になります。


化繊の布や交織(こうしょく、化繊と天然素材を縦横で変えた物)混紡(こんぼう、化繊と天然素材を糸を作る時に合わせた物)の場合はアイロンの熱で溶ける事があるので非常に気を使います。
布を水に浸す前に、布端でアイロンのテストを行ってからアイロンの設定をします。


アイロンで乾かす作業と熱をかけて縮ませる作業を同時に行います。
洋服地で着物を作る場合、とても大きな布になりますので、3-5回くらいアイロンをかけて完全に水分を取り除きます。
軽く部屋干しをして水分を除いてからアイロンをかけても良いです。


アイロンをかけながら織り傷や染め汚れなどがあったら裁断の時に考慮しなければいけないので、しつけ糸などで印をつけながら作業をします。


画像3


乾燥機の使用


通常はドラム式乾燥機は使いません。
しかし幼稚園などで絵本バックなどを作るように言われ、しかもキルティングの布を指定される場合があります。
この場合はお客様にお洗濯の状況をお聞きします。
実はキルティング布の最大の敵が、ドラム式乾燥機です。
本来であれば使ってほしくない物です。


しかし子育て時代は非常に慌しく、ぎりぎりでお洗濯になる事もあります。
つい全部まとめて乾燥機に放り込んだら、せっかくのバックが縮んで絵本が入らなくなった。
こんな場面も起きます。
元の布の風合いは若干変わりますが、乾燥機を想定して制作前に乾燥機に入れてあった布は大きさに変化が出ません。
布の風合いを重視するか、それとも後々のトラブルを想定して布にかかるストレスをあらかじめ与えておくかで状況が変わります。


もしキルティング布を使うのであれば使用状況をお聞きして、どうするかを決めたほうが良いでしょう。


ビニールコーティングの布


布の中にはビニールコーティングされている布もあります。
この布の場合はアイロンは厳禁です。
ビニールが溶けます。
その為、地のしや水通しは行わずに使用します。


アイロンが使えないと思ったほうが良いので、別の意味で非常に気を使います。
衣類には使わないと思いますが、注意して制作します。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

読んでいただきありがとうございます。 アトリエを無事引っ越すことが出来ましたが、什器等まだまだ必要です。 その為の諸費用にあてさせていただきます。