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コンサル人気の背景は、3つの情報の透明化

ご覧いただきありがとうございます。2021年3月から日経COMEMOでキーオピニオンリーダー(KOL)として執筆させていただく寺口と申します。

普段はワンキャリアでPR Directorとして、仕事選びの透明化と、採用DXの推進を行っています。今後、個人の仕事選びや、企業の採用に関してリアルな情報をお届けしていきます。どうぞよろしくお願いいたします。

一本目は、最近よく話題になる学生のコンサル人気について、その背景にある情報に関する3つの変化の存在を整理してまとめました。仕事選びや採用の参考になれば嬉しいです。

コンサル人気は本当に「スキルがつくから」なのか?

コンサルティングファームの就職人気が止まらない。という見出しで始まる取材も見慣れつつある。ここ数年は、たしかに特に東大生、京大生を中心にコンサルティングファームへの就職に関心を持っている学生が多い。

上記の記事でも、取材の機会をいただき、以下のように意見を述べた。

「転職を前提に就活しているからではないか」
「仕事選びで損はしたくない、将来転職するなら可能性は狭めないほうがいいと考える学生は多い」

これらは学生の生の声を聞いても実際によく聞こえてくるものであり背景としておそらく妥当だ。しかし、おそらくその奥には構造的に仕事選びのマーケットが変化しており、その氷山の一角としてコンサル人気が可視化されているのではないかと考えている。

この記事では、その3つの構造的な変化について、整理して解説する。

「情報」に関する急速な3つの変化

情報に関して、急速に3つの変化が起こっている。ひとつは情報収集方法の変化。そして情報の透明化、最後に情報流通構造の変化がある。

情報収集方法の変化

Z世代にはSNSやクチコミをもとに情報収集する傾向がうかがえる。大学生の情報収集時に使用している使用媒体に関する調査では、1位がInstagram、2位がTwitter、3位がクチコミとなっている。

また、最も企業の魅力を感じたメディア(新卒採用情報に特化した総合就職ナビサイトを除く)の調査では、1位は「口コミサイト」(197人)となり、約5人に1人が選択している。就活生による書き込みで採用活動の実態が明らかになる新卒向け口コミサイトだけではなく、転職者向けの口コミサイトも多く挙げられていた。転職者向け口コミサイトでは、現役社員や元社員による企業の実情を知ることができるため、新卒の採用活動でも非常に重要な存在になっているという。

特にオンライン化の影響は大きく、オフライン上で横のつながりがつくりにくくなったため、オンライン上で互いに体験談をシェアし合い協力している。LINEのオープンチャットやSNS、クチコミサイトでは、選考を受け他学生が具体的な内容を共有しあっている。

情報の透明化

ミレニアル世代以降は、体験をシェアすることが当たり前になっており、「働く」というテーマにおいても同様に、個人の声と、動向がシェアされ透明化している。透明化している情報は大きく分けて3種類ある。①候補者の体験(CX)、②社員の体験(EX)、③転職体験(キャリアログ)だ。

①候補者の体験(CX)

候補者の体験は、視野を広げる際、選考に進むに値するかを取捨選択する際に使用される。認知の量だけに比重を置いたこれまでの「人気企業ランキング」には学生からも企業からも疑問の声が多く上がっており、実際に人気企業ランキングの順位をあげるための施策をやめた企業の声も増え始めている。

「受けたい」と思っている学生の多さという認知の量の指標と共に、「受けて良かった」という受けた後の体験の質の指標が企業の間でも重要視されている。ワンキャリアでは毎年学生のクチコミをもとにクチコミアワードを発表しているが、アワードへの企業の問い合わせが増えている。

②社員の体験(EX)

社員の体験は、興味を持つきっかけや、リファレンスチェックに利用される。例えばオープンワークの働きがいのある会社ランキングや、wevoxのエンゲージメントなどにより、これまで企業の中でクローズドで管理されていた実際に働いている社員がどのような体験をしているかというデータは、透明化し始めている。

また、HERPが提唱しているスクラム採用や、リファラル採用などでも、EXが良い会社は社員が採用に積極的に参加している。サイバーエージェントのYJCに関しても、社員のEXが高いからこそ機能している文化だといえる。

このように、社員の体験は透明化し、採用力にも大きく影響している。

③転職体験(キャリアログ)

転職体験は、キャリアの選択肢を知るために使用される。当たり前の話だが、特に多くの企業が求める「自ら考え主体的に動ける人材」はキャリアに関しても自ら考え主体的に動きたいと考えている。

転職が当たり前になったときに、「会社での出世=社会での出世」という方程式が成り立たないことは、明らかになりつつある。「ポータブルスキル」「市場価値」という言葉に注目が集まっているのも、労働マーケットでの選択肢を持ち続けることが、「安定企業への所属」に変わる個人の生存戦略として認識されているからだろう。

転職体験(キャリアログ)はLinkedInを見ればよくわかる。どこでどんな仕事をしていた人が次にどこでどんな仕事をしているのか。そこではコンサルティングファーム出身者のキャリアログデータが多く得られる。「どこで何をしていた人が、自社に入社しているか」「自社で何をしていた人が、次どこで何をしているか」という事実は、これから企業にとって個人に選ばれるための競争力となる。

情報の流通構造の変化

上記の通り、個人の情報収集方法の変化、情報の透明化は日々進んでいる。これらの土台になっているのが、情報の流通構造の変化だ。個人の体験の声が2種類のメディアによって拡散され、蓄積され続けている。

SNSは個人の声を拡散する。例えば、その企業の選考を体験した個人のツイートはTwitterなどで瞬く間に広がっていく。また、CGMは個人の声を蓄積する。選考体験や、就業体験はCGMに蓄積される。企業にとっては負債にも資産にもなり得る。

まとめ

このようにコンサルティングファームの人気の背景には、情報に関する3つの急速な変化が起こっていることが考えられる。つまり、情報収集方法の変化によって個人の頼りにする情報の種類が変わっており、情報の透明化により個人の体験談のデータが流通し、情報流通構造の変化によりそれらが拡散、蓄積されているのだ。

コンサルティングファーム人気の背景にも、選考体験、社員の体験、転職体験の量と質が優れていることもある。

変化が激しく、先がわからない不透明な時代。個人が自分でキャリアをつくる時代に、個人の体験の声や転職の履歴は大きな影響力を持ち始めている。広告や説明会などの企業発信情報だけで選ばれる時代は終わった。

個人(求職者や社員)の声に向き合い、体験を改善している企業、その企業のキャリアの先にキャリアの選択肢があることが可視化されている企業が、今後個人から「選ばれる企業」になっていくだろう。


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