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やっぱり書いておく第95回アカデミー賞私感

もうすぐ一週間経とうとしている第95回アカデミー賞。
結果は皆さんご存知の通り、前評判が高かったダニエルズ監督作品『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の作品賞を含む7冠で幕を閉じた。

それも、
作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞、脚本賞、編集賞とノミネートした主要部門の賞を全て総ナメしたという圧勝である。

しかしながら、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』がある程度賞を獲るであろうことが予想された一方で、以下の映画が各部門でノミネートしながらも無冠であったことも今回のアカデミー賞では特筆すべきである。

『イニシェリン島の精霊』
『フェイブルマンズ』
『TAR/ター』
『バビロン』
『エルヴィス』
『逆転のトライアングル』

これらの作品で共通しているのは、ズバリ、白人社会中心を描いたことにある。
それでも『バビロン』には黒人やアジア人、『逆転のトライアングル』でもアジア系の人が後半で台頭するが、どちらも比較的綺羅びやかな世界での話というのもある。

これとは逆に、
Netflixの『西部戦線異状なし』の3冠と
マーベルで黒人キャストがメインの『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』の3冠、
A24の『ザ・ホエール』の2冠も見逃せない要素だし、
インド映画の『RRR』、
ロシアのドキュメンタリー『ナリヌワイ』、
メキシカンのギレルモ・デル・トロの『デル・トロのピノッキオ』、
それと『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』に『トップガン マーヴェリック』など、
押さえるべきところは押さえている。

しかし、である。
兎角、アメリカのアカデミー賞は人種・女性など、いわゆる多様性への配慮を重視し過ぎと見れる。
そこから本来なら賞を受賞してもおかしくない作品が他の賞レースでは善戦しても米アカデミー賞では全く獲れないという現象がここ数年見受けられる。
それを最初に感じたのは『ムーンライト』と『ラ・ラ・ランド』で競っていた2017年(年度では2016年度)からである。

以後、作品賞ベースで見ると、
2018年 『シェイプ・オブ・ウォーター』 対抗馬『スリー・ビルボード』『君の名前で僕を呼んで』『ゲット・アウト』

2019年 『グリーンブック』対抗馬『ROMA ローマ』『ブラック・クランズマン』『ボヘミアン・ラプソディ』

2020年  『パラサイト 半地下の家族』対抗馬 『アイリッシュマン』『ジョーカー』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

2021年  『ノマドランド』 対抗馬 『プロミシング・ヤング・ウーマン』『ファーザー』『ミナリ』

2022年  『コーダ あいのうた』対抗馬 『ウエスト・サイド・ストーリー』『リコリス・ピザ』『ドライブ・マイ・カー』

つまり、人種・女性・障害者、ないしは社会的弱者といた多様性社会が台頭し、
例えば『アルゴ』が作品賞を制した2013年のアカデミー賞は監督賞以外はほとんど白人が賞を占めたことから白いアカデミー賞と揶揄され、
そんな白人中心の傾向になる最後が2016年あたりまでになる。

来年以降、特に作品賞のノミネート対象になる新基準というのが加わり、
『イニシェリン島の精霊』や『フェイブルマンズ』あたりは作品賞へのノミネートも今年がラストと見るが、
結果的には無冠であり、ある意味晒し上げ状態となってしまった。

しかし、だ。
そんな新基準を設けて、それが映画の作品に対する公平な評価と言えるのであろうか?

特に2017年以降のアカデミー賞作品賞受賞作品で本当に面白い作品が果たしてあったであろうか?
まあ、尤もアカデミー賞作品賞を獲った作品で最後に面白かったのは……2010年の『ハート・ロッカー』あたりまで遡らなければならないのではないだろうか?

こうして、また、2023年のアカデミー賞に戻ると、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』、本当に面白かったか?
クリント・イーストウッドの作品がアカデミー賞にノミネートされなくなってから久しくなる。
スティーヴン・スピルバーグは『フェイブルマンズ』で、マーティン・マクドナーは『イニシェリン島の精霊』で、米アカデミー賞に出るのが最後になり得るかもしれない。

それを踏まえると、
MCUやDCは………クオリティー抜きで見れば『アントマン&ワスプ:クアントマニア』も『シャザム!~神々の怒り』から考えると対策ばっちりだね。
でも、これらが本当に面白かったか?

それはつくづく思う。

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