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蔵出し映画レビュー『オフィサー・アンド・スパイ』

古くは『水の中のナイフ』や『チャイナタウン』、『戦場のピアニスト』、最近では『ゴーストライター』など、社会派史実ドラマやサスペンスで魅了してきたロマン・ポランスキー監督。いわば、超ベテランの巨匠であるロマン・ポランスキー監督の新作は19世紀末のフランスの雰囲気をたっぷり味わいながら、陸軍の軍部の腐った体質とそれを打倒しようとする将校らの大人の闘争を色濃く見せる極上のサスペンスに仕上がっている!!

まず、冒頭のドレフュス大尉の不名誉な除隊シーンから、物凄くピリピリとした雰囲気が画面から伝わり、見る者を19世紀末のフランスの世界に誘う。そこからピカールの昇進から、ドレフュスの処遇、防諜部の前任部長からの引き継ぎ、防諜部の様子など、次々とピカール中佐を取り巻く環境を見せ、素早い展開で飽きさせない。

ピカールがある証拠を見つけてから、突如、冤罪を主体とするサスペンスになり、ピカール中佐が友人の弁護士や時の作家ゾラの手を借り奔走。その背景には当時のフランス国内や軍部に渦巻くユダヤ人差別があり、人種差別の闘争という側面も持ち合わせる。後半にあるアクションや急展開以外は丁寧な証拠探しや法廷闘争が中心とはなるが、そこを19世紀末のフランス国内や軍部、法定の雰囲気で味あわせる。

考えてみれば、『チャイナタウン』や『ゴーストライター』もスキャンダルや政界にまつわる陰謀だったりするので、これを19世紀末のフランスに当てはめたのが『オフィサー・アンド・スパイ』であり、見事にポランスキー節を堪能できる。マーベルやシン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース、大スターのハリウッド大作など派手な新作が次々と公開される中で、『オフィサー・アンド・スパイ』は従来のサスペンス映画、ロマン・ポランスキー監督らしさで派手な新作の流れに一矢を報いた。至高のサスペンス、ここにあり。

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