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シン・映画日記『そして僕は途方に暮れる』

TOHOシネマズ日比谷にて三浦大輔監督・脚本・原案の『そして僕は途方に暮れる』を見た。

監督・脚本・原案が『愛の渦』や『何者』の三浦大輔氏だし、
あらすじと予告編から絶望系の映画やダメ男・ボンクラ好きなボクは見る前にこの映画をかなり期待してしまった。
まあ、三浦大輔氏のやりたいこと・伝えたいことは伝わったけど、大甘で、痛々しく、しょっぱいヒューマンドラマだったなー。

フリーターの主人公・菅原裕一が彼女に浮気がバレてから、とにかく逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げまくる。そんな映画。
終盤にある変化がありラストに一握りのリアル。

藤ヶ谷太輔が演じる主人公はとにかくクズで弱い、だらしない。嫌なことがあると躊躇なく逃げる。
普通の人なら踏みとどまる所も、半ギレしながら逃げる。
そのクズさ、弱さはただただ痛々しい。
彼女、友人、バイト先の先輩、後輩、姉、母親と頼れる身内にとにかく頼り、やばくなればすぐ逃げるサマはまさしく人間焼畑農業。

しかしながら、
色々リアルさに欠いている。
普通、彼女もしくは彼氏がどしょっぱいことをして失踪したら、探すにしても警察を使ったり、もっと手の込んだことをしないだろうか?
それに、逃げるにしても誰かの家に泊まるとかじゃなくて山籠りをするとか、どこか誰も親戚・知り合いがいないところに逃げて、人生の再スタートを考えないかな?それこそ田舎の温泉宿に住み込みで働くとか、住み込みの寮があるパチンコ屋とかに入り込まないかな?
まあ、それが考えつかない程アホで、甘ちゃんな主人公、と考えられなくはないんだけどね。

それと、逃げる原因もだいたいは主人公・菅原裕一がしでかしたことであって、罪と言われれば罪かもしれないけど、殺人とか麻薬取締法違反とか取り返しの付かないことじゃなくて、どれも取り返しがつく程度なんだよね。だからこそ、主人公の器が小ささが際立ちはするんだけど、絶望感に深みがない。というか、まるで小学生低学年レベルな話なんだよね。

そこん所、リアルじゃないなー、って思うほとんどのことを「映画だから」で済ませてしまうのももどかしい。後半にいきなり現れるトヨエツが演じる菅原裕一の父親も、10年ぶりに会った二人がいきなりお互いを認識出来るのかね?
まあ、そこからの展開はダメダメな二人が暮らす展開でナチュラルな「しくじり先生」で悪くない。

主人公の映画好きという部分と父親との思い出、雪降るクリスマス前後というシチュエーションが『素晴らしき哉、人生!』に被せてるのかな、というわかりやすい演出。

この映画の最大の不満点はズバリ、菅原裕一をKis-My-Ft2の藤ヶ谷 太輔にキャスティングしたことかな。やっぱりここはルックスが良くない方が情けなさにリアリティーが出る。トレンディエンジェルの斎藤とか三浦マイルド、塚本高史、宇野祥平など、まあ中年でなくても、ジャニタレにはしないでしょ。企画が藤ヶ谷 太輔ありきなのか?
どうやら、続編もあるみたいだし。

里美役の前田敦子は相変わらずの感情の昂りが凄く、らしさは出てる。

まあ、悪くはないんだけど期待ほどではなかった。
伝えたいことはわかるがもどかしい。
ダメ男・絶望映画のようで希望・さとし映画というのがね。
同じ舞台劇原作でダメ男がいっぱい出てくる昨年公開の『もっと超越した所へ。』みたいに演出、編集の練り込みはなかったかな。


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