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ケチャップは魚から作られていた!

結論

  • ケチャップの語源は中国南部の方言で魚醤を意味する。

  • 英国、米国の探究心がトマトケチャップを生んだ。

  • 日本では、秋田県のしょっつる、能登地方のいしる、香川県のいかなご醤油が有名。


ケチャップは元々、魚醤

中国南部の方言で「魚醤」を意味する「Ketsiapケチャップ」が語源と言われています。魚醤は、魚を塩漬けして発酵させた調味料です。作り方は塩辛とほとんど変わりません。魚に含まれるタンパク質が内臓内の消化酵素によって分解されてアミノ酸に変化し、液状になります。アミノ酸の中には、うまみ成分のイノシン酸、グルタミン酸があり、豊かな旨味をもたらしたり、香りも複雑に変化し、刺激も穏やかに変化していきます。完成まで数ヶ月~数年ほどかかりました。

英国本土に伝わり、さまざまな材料を発酵させてケチャップの研究が進んだ。

17世紀、イングランド王国(現在の英国の一部)はミャンマー、バングラディシュ、インド、パキスタン、マレーシア、シンガポールを植民地支配していました。中国南部から東南アジアに伝わったケチャップを本国に持ち帰りました。手軽に手に入るものを使ってケチャップを再現しようとレシピを考案していきました。その結果、さまざまな食材を塩漬け発酵させてみて、バラエティ豊かなケチャップが誕生しました。特に人気は、クルミのケチャップ、マッシュルームのケチャップ、魚のケチャップでした。

アメリカで現在主流のトマトケチャップが誕生した。

グレートブリテン王国(現在の英国の一部)からアメリカへケチャップが伝わりました。アメリカでトマトを原料にすれば美味しいことを発見しました。しかし、初期のトマトケチャップは、酸味が強かったため、塩ではなく、砂糖、酢を使うなど改良されて、美味しくなり、世界中にトマトを使ったケチャップが広まりました。

現在も、マレーシア、インドネシアでは、「Kecap|《ケチャップ》」という単語が存在します。魚醤だけではなく、大豆、小麦を発酵されて作られた醤油もKecapと呼んでいます。

世界でも作られるケチャップ(魚醤)

ガルム

古代ローマ時代には、「ガルム」という魚醤がつくられていました。ガルムは、酢と並び、世界最古の調味料と言われています。現在も、イタリア南部で製造されています。カタクチイワシを半年〜数年間塩漬け熟成させて作ります。

ナンプラー

ナンプラーはタイでつくられています。ナンプラーは知名度が最も高い魚醤ではないでしょうか?しかし、歴史は意外と短く、1922年から製造が始まりました。イワシ、アジ、サバなど青魚を塩漬けして作られます。イオンなどスーパーでも手軽に手に入りやすいです。青菜炒め、春雨スープなどにピッタリです。独特の香りとともに、旨味も広がります。

日本のケチャップ(魚醤)

日本にも魚醤は存在します。かつては、沿岸部で盛んに作られていました。現在では、日本三大魚醤と呼ばれるしょっつる、いしる、いかなご醤油が中心にあります。

しょっつる

ハタハタは、秋田県の県の魚に指定されるほど秋田県民にとって馴染みの深い魚です。ハタハタの旬は初冬です。秋田沿岸は浅い海域に餌場があり、産卵のため、ハタハタが集まります。ハタハタは大量に獲れるため、保存食として、しょっつるが誕生しました。ハタハタを1年以上塩漬け熟成させて上澄み液をとったものが、しょっつるです。熟成させているとき、発酵を促すために、米、麹、人参、昆布などを混ぜ込むことがあります。

色が淡く、後に残らない甘さも感じられ、コクがでます。秋田市に行ったときに買って、塩焼きそば、野菜炒めにピッタリでした。ハタハタなどと一緒に煮込んでしょっつる鍋にするのがオススメです。

いしる

石川県能登地方、富山県を中心に作られる魚醤。富山県ではイカの内臓、石川県ではイワシ、サバなど青魚を用います。18世紀には造られていました。しょっつるより、色も味も濃く、塩気も感じられました。刺身につけたり、野菜炒めなどの調味料に利用され、万能調味料です。

いしる鍋は、石川県能登地方に伝わる郷土料理で、旬の魚、野菜を煮ていしるで味付けします。ホタテの貝殻を鍋代わりにして、直火で焼き、いしるを垂らすと、至福のときを味わえます。

いかなご醤油

香川県瀬戸内海産でとれたいかなごを原料にした香川県の伝統的な魚醤。塩分濃度は29%と高いですが、旨味が強いため、塩辛さを強く感じません。いかなごは、1990年代は10.1万tもとれ、関西の春の風物詩とされていました。しかし、近年、不漁が続いており、庶民の魚から高級魚に変化しつつあります。2024年、大阪湾では1日でいかなご漁が終了しています。


今回は、ケチャップについて、語源という視点で書きました。カゴメがトマトケチャップを広める前から、ケチャップは日本でも作られていたことが分かりました。しょっつる、いしるは、KALDYなど日本各地の美味しいものをそろえたお店でも購入できます。

魚醤は、魚を放置していたら偶然できたと考えられます。食べてみたら、美味しく、体調も問題なかったので、現代にも伝わっています。発酵と腐敗は身体にいいか、悪いか紙一重。美味しいか、体調を崩すかの賭けみたいなこともあり、最初に食べてみた方のチャレンジ精神に感服します。フグなど先人の知恵を受け継いできたから、今の豊かな生活があります。

トマトケチャップについては、別の機会に触れましょう。

参考文献

金内誠,(2023) ,理由がわかればもっとおいしい! 発酵食品を楽しむ教科書,ナツメ社


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