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スタンフォード教授カール・ダイセロスは何故「うつ病」を研究するのか。

今回はスタンフォード大学で神経科学を研究してらっしゃるカール・ダイセロスさんの話です。
彼は学界ではとっても有名な方で、脳内の神経回路の仕組みの研究手法を見出しております。東京大学大学院総合文化先進科学研究機構でも共同研究をされています。
研究者としても有名な彼ですが、実際に精神科医としても働かれており、治療してきた患者の方々のお話を通して精神的な部分の治療の可能性を書き示している「「こころ」はどうやって壊れるのか」でもうつ病に関して興味深い見解を書かれています。

ではなぜ彼はそこまでして「うつ病」に関心があるのでしょうか?
インタビューでお話しされているので、まとめてみました。


彼の主な患者について

治療抵抗性うつ病(抗うつ剤を十分量で十分期間(1~2か月)使っても寛解(本来の調子)とならない)と自閉症に罹る患者を中心に精神科医として活躍されております。

なぜうつ病について調べているのか?

うつ病は死に近い深刻な病にも関わらず治療が難しいからだそう。

生活を送るのに必要な衣食住がそろっているにもかかわらず、虚無的な絶望と未来に対する失望感anhedonia(無快感症(価値を感じなくなってしまうこと)) や悲観的な内心状態や精神的苦痛がどうして起こってしまうのかということにとても興味があるそうです。

そもそもこの鬱に関しての原因は遺伝性があるとされており、これは染色体の一部にリンクしているそう。
また、辛い生活状況にいなくても、小さなストレスや過去のトラウマなどにより、どこからともなく加速しまう場合もある。

計れないものである

風邪をひいたら、くしゃみや、熱が出るなどの可視化できる症状はうつ病は判断しずらく、化学的に起こる反応など脳みそに現れる訳でもない。脳の活動から調査できるものでもない。大体のケースで話すことでしか、人の鬱状況は判断するしかできない。

現在の治療としては治療薬もある、脳刺激、精神科電気けいれん療法などもあるが効果があるかどうかは不特定であり、いまだどの細胞、回路が原因なのかわかっていない。

Optogenetics ではまだ治療できない理由

以前紹介した記事オプトジェネティクス(Optogenetics)とは?で説明したオプトジェネティクスですが、その治療法ではうつ病気を治療できないのかどうかですが、これに関してもカール氏が説明してくれています。

マウスの研究ではどういった細胞、投射ニューロンがモチベーションやエネルギーのレベルに関係しているか判明しており、そのエネルギーやモチベーションを上げ社会性などを補えるが人間はそうではないという。症状はまばらに表れるそう。例えば、うっ血性心不全にかかったとしても、息が切れるひとや足のむくみ、など違う。ただ、心臓病では血液を送るパンプとして動いているのでそこをなおせばよいという共通点があるが、うつ病では、共通した原因を調べることが難しく、明確に分かっていない。

対話療法は効果的なのか?

カール氏は対話療法はとても大きな部分であるとおっしゃっています。
大体の優れた心理士は熟練した対話治療を身に着けているそう。

カール氏本人も薬などを処方したり、脳深部刺激療法をする医師であるが、彼の活動で一番大きな部分を占めているのが、対話治療だという。

これは機械や薬を使った治療法ではできない認知パターンや、複雑な脳の活動パターンを改めることができるという。

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