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鍼灸師が鍼灸整骨院で働いて分かったこと

 いろいろなところで働いてきたので、今回は、鍼灸整骨院で働いた個人的な感想を書いてみたのですが、思ったより長くなりました。

 

1.鍼灸整骨院ではどんな患者さんが多いか

 鍼灸整骨院ではどんな患者さんが多いかというと、立地によっても変わっていきます。例えば、オフィス街であれば、サラリーマン中心ですし、住宅街であれば、高齢者が多かったりします。

 長い間やっているところだと、外傷もきたりするので、立地や年数によっても違います。

 私は、住宅街、オフィス街ともに経験がありますが、住宅街だと、午前中は高齢者、昼から夕方が主婦、夕方から夜がサラリーマンでした。オフィス街だと、サラリーマン中心になりやすいので、朝が比較的暇で、昼前から忙しくなりやすくて、夕方に帰宅するタイミングで来院が多くなる傾向がありました。

 住宅街だと、高齢者が多くなる傾向にあるので、慢性的な膝、腰の痛みが中心の人が多く、主婦、サラリーマンも腰痛、肩こりが多かったですね。

 オフィス街だと、腰痛、肩こりはもちろん多いですが、病院も少なく時間がかかるので、捻挫などの軽めの外傷もくる傾向があります。

 今は整骨院は自費が多くなっているので値段が高くなってきていますが、比較的安く治療が受けられるので、毎日、数日おきに来られる人が多かったですね。

 患者さんは治療者や治療院の評判をもとに来ることが多いので、腰痛に強い先生がいると、腰痛が増えたりするので、治療者や治療院の特徴も関係しています。

 整骨院は予約制を導入している場合もありますが、予約制がいらない患者さんを設定している場合もあるので、毎日来る人もいたし、閉店間際や休憩入る間際の業務終わりに滑り込む人もいましたね。

 この直前に滑り込む人は、忙しくてという人も一定数いるのですが、終了間際は、他の患者さんが居ないし、空いているからと考えている人も一定数いますね。

 予約制だと、天候などの影響を受けにくいですが、暑い、寒い、雨だと、途端に暇になるというのも整骨院の特徴でしたね。

 予約制で来られている方の場合は、予約を取っているからと、台風、雪でも来る人もいました。最近は、台風などだと、ニュースで事前に危ないという警告が出るので、減ってはいるでしょうが、予約制だと、予約したから来ようとする人は一定数います。

 毎日や長く来られる人もいるので、患者さんとの関係が近くなりやすい傾向がありますね。

2.施術内容

 鍼灸整骨院の施術内容は、電気治療、マッサージ、処置、鍼灸が中心で、後はメニュー次第で、美容鍼灸、骨盤矯正などがあります。

 マッサージは本来は、あん摩マッサージ指圧師が「滑剤などを使った療法」なのですが、「揉む」というのが「マッサージ」として一般化しているので、ここではマッサージとして書いています。

 業務の大半は、マッサージになる傾向があるので、確かに肩こり、腰痛などの慢性疾患に対して、保険が使える安いマッサージ屋と患者さんが表現するのも間違いではないかなというところです。

 電気治療の機械は、治療院によって違いがあるので、その治療院の特徴にもなりやすいです。

 以前は大型の機械を扱っているところも多かったですが、値段が高いし、場所も取るので、大型の機械を置かないところも出てきていますね。

 治療院によってメニューが違うので、いろいろなものを身につけられる傾向があります。

 マッサージはさすがに体系的に学ぶ訳ではないので、それだけで対処する技術がつくかというと何とも言えませんが、触り方、慣れという部分では勉強になります。

 いろいろなメニューや道具も経験するので、治療院業界ではどういうものが使われやすいのか、何が流行りなのかを知るのにいいところですね。

 鍼灸学校だと、比較的広いスペースでゆったりと椅子を使って練習しますが、鍼灸整骨院だと、狭い場所や反対側でもやることがやるので、場所にとらわれないようになるのは、応用力がつくのがいいですね。 

 狭いところで工夫しながら、いろいろとやった経験は訪問などでは非常に役立ちましたね。広い治療院であれば、気にしないでもいいので、治療院の規模次第ではあります。

3.勤務

 働くという環境で考えると鍼灸整骨院は長時間拘束になることもあります。労働環境を考えているところも多くなってきましたが、朝から夜までの勤務も多いですし、1週間で5.5日勤務も多いです。

 1週間の勤務時間は一般的な企業だと40時間ですが、鍼灸整骨院だと特例措置対象事業で「保健衛生業」に該当するので、従業員が9人以下の場合は、1週間の労働時間は44時間となります。

 9時開始から、20時閉店だと11時間近くの拘束で、昼休みに2時間近くの休憩が多いです。実際は9時ちょうどに出勤することはないですし、20時閉店で20時に終わることもまれなので、12時間は拘束されやすいです。

 拘束時間が長いので休憩時間は寝ている人が多いですが、私は勉強したり、治療を入れたりしていました。

 昼休みを取らないところは、勤務に早番、遅番があったりと、治療院によっての違いは多いです。

 拘束時間が長いので、体力的にキツくなってやめてしまう人もいますね。

 この辺は、業界の問題点とも言えるのですが、技術職でもあるし、対人ビジネスなので、なかなか難しいところです。

 例えば、美容師などは、入社したてでは経験が少ないので、業務時間の前や後で練習することで、技術をあげて現場にでます。

 治療院業界も患者さんで練習するわけにはいかないので、初心者であればあるほど、長時間になりやすいです。

 対人ビジネスは、対人していない間は売上に直結しないので、どうしても時間が長くなりやすいです。

 育成に力を入れているところは、数週間から数ヶ月の研修がありますが、現場に出ないとわからないことも多く、現場に出てからさらに勉強しないと、技術、知識も向上しないので、悩ましいところですね。

 全てを勤務時間に含めるように頑張っているところもあるようですが、やはり仕事の時間以外も費やしている人のほうが早く技術、知識が付くので、やっている人のほうが治療者として人気になることも多いです。

 働くということでは、休みも多く残業などもない方がいいですが、患者さんからしてみたら、ひたすら勉強して、技術を上げている人にみてもらいたいと思うので、自分の生活や今後をどう考えていくのかも大切ですね。

 とにかくがむしゃらにやっていきたいのか、ゆっくりと着実に力をつけていきたいのかでも変わりますしね。

 ウサギと亀じゃないですが、自分のペースも知っておいたほうがいいです。

4.鍼灸師の鍼灸整骨院での働き方

 鍼灸整骨院は、グループもありますが、個人院もあるので、それぞれで違いがあります。基本的にはサラリーマンなので、会社の方針に従うのが当然です。

 自分がやりたいようにやりたいのであれば、自分の治療院を作るしかないですが、しっかりと仕事をして積み重ねていけば、提案したことを導入してくれる場合もあるので、まずはサラリーマンとして、学び結果を出していくことです。

 グループの場合は、いろいろな方がヘルプに来たりということもあるので、個性を出すというよりも、同じように出来るというのが重要になります。

 個人院の場合は、院長の求められている能力をつける必要があるので、グループよりも、独特になることもあります。

 どちらがいいとか悪いではないので、よいところを吸収するのが、いいのではないでしょうか。

 グループであれば、話し方、施術で大きな問題にならずに、効果を出すという部分がありますし、個人院だと、院長の個性を含めて学ぶことですね。

 院長が鍼灸師だったり、理解があると、鍼灸の分野はある程度任せてもらえることも多いですが、柔整師の考えが強い場合は、筋肉の深いところをやって欲しいというような物理療法としての指示が多くなります。

 物理療法だと嫌がる鍼灸師もいるでしょうが、局所を学ぶ上では、物理療法的なやり方は知っておいたほうがいいですし、鍼を刺す技術は向上しやすい傾向があります。

 よく鍼灸をやっている鍼灸整骨院に努めたいという要望も聞きますが、よく鍼灸をやっている場合は、鍼灸師が積極的だったりするので、その鍼灸師が辞めると、鍼灸が減ることもあります。

 治療院として積極的に導入している場合は、鍼灸が多い治療院になっていますが、入社してすぐの人は当然ながら、あまり刺せないこともあります。

 卒業したての鍼灸師は、学校でいくら練習をしていても、いろいろなところに刺す技術が低いので、切皮、刺入で、痛みを出してしまうこともあるので、嫌がられてしまうこともあります。

5.鍼灸整骨院で働いてみて感じたこと

 既にたくさん書いてきましたが、鍼灸整骨院での特徴として感じるのは保険請求ですね。

 一般の人と同じような生活をしているときには保険請求などは意識しませんが、鍼灸整骨院であれば、保険は大切な収入源なので、非常に重要になります。

 治療院によっては、請求業務は事務系の人が行う場合もあるので、どこまで関わるかは治療院次第になります。

 私自身は、ある程度は経験があるので大体の流れも含めて知っています。

 保険請求は、事務処理の時間が取られるので、保険を使う場合は、安く施術できるけど、事務処理の時間と手間も考えておく必要があります。

 保険請求に関して疑問を持つ人もいますが、あくまで制度なので、制度を使っているだけとも言えます。

 私自身も一時期、保険請求に疑問を持つことがありましたが、病院含めて保険請求というのを調べていくと、「制度とは」「医療とは」という深い問題も関係し、線引きをしっかりするのは難しいのが理解しているので、「医療」は「制度」でもあるという考え方になりました。

6.鍼灸師が得られるもの

 鍼灸整骨院だと、患者さんも多く触れられる傾向がありますし、多くの人の対応を経験できます。

 マッサージ業務が多くなりやすいですが、身体を触り慣れるというのは、非常に大切なことなので、いっぱい触って、触る手を作りのにいい場所ですね。

 局所治療も多いので、局所治療を学び、全身治療と効果がどれぐらい違うのかを学ぶ場としてもいいのではないでしょうか。

 近年だと、保険請求がきつくなってきて、自費に移行しようというところも多いので、いろいろやれる可能性がある鍼灸師は歓迎されやすいのではないでしょうか。

 スタッフが多くいる場合は、自分が担当したときと、他の人が担当したときの違いも見れるので、自分が何が得意で、何が苦手なのかという自分の特徴を知るのにもいいですね。

 ある程度の年齢から鍼灸師になった人が後から入ってきたときは、あの人のようにはなれないし、自分はこうなっていきやすいだろうから、次の仕事はこう考えているという客観的な人もいましたね。

 鍼灸師は人と接する仕事なので、多くの人と、高い頻度で会いやすい鍼灸整骨院は技術、知識を蓄えるのにいいのではないでしょうか。

 注意点としては、今は長い時間の施術を対応することも多くなってきていますが、短い対処ばかりだと全体・全身の対処について慣れにくいところですね。

 ついつい局所的にも考えやすくなってしまうので、自分なりにも考えるのは、どの職場においても重要になります。私自身は、治療院のやり方だけではなく、自分のやり方、自分だったらどうするかも絶えず考えていました。

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