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技術死生学プロジェクトを始動しました。

2020年9月1日より、科学技術振興機構(JST)の助成を受けた新規プロジェクトを準備中です。(題名が「技術構成主義」に立つ「生と死」をめぐる倫理の分析と社会的議論の啓発に向けた企画調査」と、長いので、ここでは「技術死生学プロジェクト」と呼ばせて頂きます。)

プロジェクト概要

本プロジェクトでは、「技術」がどのように私たちの死生観を形作っているのか、ということを、超領域的な研究によって明らかにしながら、急速に発展する技術と共にある社会における「死生観」のあり方を、社会の中で議論するための場を、伝統芸能と現代芸術を支えとしながら、作っていくことを目指しています。今年度(2020年9月から2021年3月末まで)は、このプロジェクトを始動するための準備期間として、調査・調査に取り組んでいます。


研究グループ:プロジェクトは、以下の3グループで行っています。

1. 科学技術社会論(Science and Technology Studies: STS)グループ
STSグループでは、技術と死生観の関係性を、人、動物、ロボットに関わる以下の事例の分析を通して考察しています。

a. 胎児視覚化技術
b. 実験動物の飼育環境
c. ソーシャル・ロボット

これらの事例では、技術の発展が「生命」の取り扱い方と同時に定義をも変容させてきました。企画調査ではその内実を明らかにしながら、技術によって形作られる死生観を論じるための、分析的視座を確立することを目指します。


2. 文化人類学グループ
文化人類学グループでは、以下の二つを研究しています。

a. 医学・生理学的技術が、人の生と死にどのように関与しているのか
b. 技術と産業を基盤とする現代における葬儀制度のあり方

これらの研究を通して、多死高齢化社会と言われる現代、終末期から死後に至る過程における身体への技術的な介入がどのようになされているのかを、実証的に明らかにします。


3. スペキュラティブ・デザイングループ
スペキュラティブ・デザイングループでは、急速に発展する技術と共にある社会における「死生観」のあり方を、社会の中で議論するための場を、伝統芸能と現代芸術を支えとしながら、作っていくことを目指しています。そのために、以下に取り組んでいます。

a. 作品制作のための準備調査
「コレクティブ・トラウマの表象技術としての妖怪」を対象として、専門家へのインタビュー調査、フィールド調査、及びウェブアンケート調査を行い、社会的議論を啓発するための作品制作につなげます。
b. 「生と死の間」をテーマとする能楽の分析
「生と死の間」をテーマとする能楽の演目を選び、文学及び哲学の立場から分析します。
c. 能楽とスペキュラティブ・デザインの協働を実現するための準備
能楽師と現代美術の専門家、哲学者等の対談を、クローズド及び一般公開にて開催し、協働のための関係性の構築とオーディエンスの形成を行います。

以上を通して、「技術死生学」の理論と実証と実践の基礎を作ります。

本研究は、RISTEX「科学技術の倫理的・法制度的・社会的課題(ELSI)への包括的実践研究開発プログラム」の一環として行われます。


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