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ANAの機体整備工場を見学してきた

飛行機というものは数ヶ月に1回くらいのペースで利用していますが、あくまでも「移動手段」という認識でありました。ふと「整備工場の見学」があることを知り、たまたま関東へ行くタイミングで実際に見学に行く事が出来たのでレポートにしてみました。


「整備工場の見学」というものを知る

自分にとって「羽田空港」という場所は「移動における中継地点」という感覚のため、到着すると食事もそこそこに京急線に乗って東京の中心部へ移動することが多いのですが、今年2024年の1月下旬に関東(群馬県)へ行く際には到着後に大きな予定が無く、ゆったりと過ごそうと思っていました。

その時は珍しく一眼レフを持って出かける事から、羽田空港の展望デッキで離着陸する飛行機を撮影しつつ眺めるのも良いかな…等と思いながら、羽田空港付近で出来る事がないかと何気なく探していると、ふとANAの株主を対象とした機体工場見学が実施されていることを思い出しました。さっそくANAの株主サイトを確認してみると、確かに抽選申込による見学があったものの、特定の日曜日に開催されるため、関東へ行く日程とは合わず。

そして、ANA以外の他社も実施しているかなと思いウェブ検索をしてみると、ANAでも株主向け以外にも一般向けに見学ツアーを実施していることを目にしました。

気になって調べていくと、「ANA Blue Hangar Tour」という整備部門を中心とした格納庫を巡る見学ツアーが行なわれており、どうやら1ヶ月前(30日前)から予約出来る模様でありました。このツアーは1日に4回実施されており、各回の定員は40名。ちらっとその時における予約状況を見てみたが、ほぼすべてのツアー実施枠が埋まっていました。

見学ツアーは午後と夕方のコースもあり、羽田空港に到着するのがお昼であったことから午後のコースは飛行機遅延や昼食を取ることを考えると厳しいかなとも思えました。夕方は余程のことがない限り大丈夫そうであり、ツアーが終わる時間を見ても宿泊するホテルに向かうのにも間に合いそうな感じがしたことから、せっかくの機会であるので、工場見学へ行くことを考えてみることにしました。

予約をする

あれこれ調べているうちに、予約受付が開始される日となりました。予約が始まるタイミングにパソコンに向かうことが出来たので、時計を見ながらその時を待つことに。

時計の針が「9時30分」を指し示したとき、予約ページから手続きを開始。遷移する画面と入力している項目に間違いがないかを即座に確認しながら進めていき、1分後には予約完了。その直後に予約受付の画面を確認してみると、申し込んだ夕方のコースにはまだ余裕があったものの、それより前のコース(午前2コース、午後1コース)はすでに定員になっていたことから、平日の開催とはいえ機体工場見学というものの人気の高さが感じ取れました。

予約完了メール

そして、見学日の1週間くらい前にリマインドのメールが届き、ここで同行者入力は1週間前までとのことが強調されていましたが、1人で参加するため予約が完了していることを確認したのみ。念のため、前日に予約画面で確定されていることをチェックしました。

出発そして見学会場へ

出発当日は大雪の影響から札幌圏のJRに遅れや運休が発生していたものの、新千歳空港は概ね良好にフライトされていました。自分が搭乗する飛行機も使用機が遅れなく到着したのですが、搭乗手続きが始まろうかというタイミングで隣の駐機場に遅れて到着した便があり、降車対応と雪による滑走路減速の影響により出発・離陸が遅延し、羽田空港には25分ほど遅れて到着。

食事を済ませて、少し時間に余裕があったことからちょっとターミナル間を散歩。第2ターミナルから路線バスに乗り、見学ツアー会場の最寄りのバス停となる西整備場前に到着。会場はここから歩いて数分の場所にあるので、地図を確認して整備を担当するビルへ向かいました。

このバスには自分を含めて3名が乗車していましたが全員が同じバス停で下車しており、午後過ぎにこの場所に来る人は目的が限られるのでは…と思ったところ、皆が同じ場所に向かっていました。

ビルの入口を通るとすぐにセブン-イレブンが目に入り、向かいにカウンターが。カウンターに向かうと職員さんから受付を開始しているとの案内があったので、本人確認などの手続きを行いツアーのパスを手渡されました。このパスには空港コード(3レター。新千歳空港なら「CTS」)が書かれており、このコードが座席番号になるとのことでした。

見学ツアーが始まるまで時間があるということなので、説明会場にあるファーストクラスの座席体験や展示コーナーを見てくださいとの案内も。

展示コーナー入口

荷物をロッカーに預けたあと、ツアーの開始時間まではホールの展示品を眺めたり、撮影したり。新整備場駅からの連絡バスが到着したタイミングで参加者の受付がピークになっていた模様でありました。

見学ツアーが始まった

時間が近くなると説明会場に集合するようアナウンスがかかり、会場では開始までの時間を使ってANAの整備チームを紹介するプロモーションビデオが流されました。

そして、時間になりツアーが開始。まずは注意事項の説明があり、そして「お話会」として整備部門が紹介されました。ここではビデオを使っての説明もありましたが、ちょっと移動疲れが出てきたのか、画面を見ながらうとうとしそうになってしまいました。

お話会が終わると5分間の休憩があり、いよいよ格納庫の見学へ。ヘルメットを被った後、座席ごとに4組に別れ、1組10名で行動となりました。最初に自分のグループが呼ばれたので、座席を立って移動。改札機を通過して、今回説明していただく職員さんの紹介があり、ぱっと見るとベテランの整備士さんだったと思われる方でした。参加者へ気さくに話しかけていたのが印象的でありました。

工場までの移動中に初参加者がいるかどうかの確認がありましたが、自分のグループでは自分を含めて2名ほどであり、リピーターも多かった模様。首からカメラをぶら下げていた人も多く、自分も「良いカメラ持って、本当に初参加なの?」って揶揄されたりもしました。

格納庫内へ

そして、機体が入っている格納庫内へ。この日は大型機と中型機の合計3機が整備されていました。ガイドの方いわく「大型機があって、3機あるから見ごたえはあるかも」とのことでありました。

エアバスA321neo後方部

まずは3階の通路から格納庫内を俯瞰するような感じで機体を眺めながら、ガイドさんからエアバス機(A321neo)について軽く説明が。そして、格納庫の中央に駐機していたボーイング777を後ろから眺めながら、後部から見る事が出来る機体の構造などについて説明。このときガイドさんからは放電などに使われている小さな部品を見せていただけました。

格納庫を眺める

説明が終わると2階へ移動して、真正面からボーイング777の機体を見る形に。この場所では説明を交えて機体に近づき、その周辺の様子を見る感じでしたが、あまり時間を取らないで1階への移動となりました。

ボーイング777

1階に着いて構内を移動していると、とある車の前で止まって説明が始まりました。その車は除雪車であり、羽田空港の滑走路は空港が除雪するものの駐機場などは航空会社が対応しなければならず、ANAが保有する車で雪を避けているとのことでありました。

除雪車

1階ではボーイング777の機体の横を通りながらエンジンと翼の部分を主に見る感じでしたが、機体後方に付けられている通気孔に関して、その構造などについて分かりやすい例えを用いて説明が行なわれました。

ボーイング777(JA742A)・後方部

そして、機体の隣には航空機のエンジンが置かれていた場所があり、細かい駆動箇所や小さな部品について説明いただけました。人の背丈以上あったエンジン部分でしたが、飛行機が動く鍵となる部分はすごく小さい箇所であるということが感じられました。

エンジン

そして、外を見ると滑走路があり、ガイドの方いわく、そろそろ着陸する飛行機があるとのこと。少しの間、他のツアー参加者とともに着陸する飛行機を見るという時間に。午前中は富士山がよく見えたとのことであったのですが、夕方であったことからその姿は薄まっており、逆光となっていました。

ガイドの方から「うまく撮れました?」と参加者への問いかけがあり、ちょっと難しかったという感じに応えると、ガイドの方が以前に撮影したきれいな夕焼けと飛行機のショットを見せていただけました。

ボーイング787の翼とエンジン部

着陸する飛行機を何便か見た後、本日3機目の見学となるボーイング787の近くへ移動。ここでは機体の前方からエンジン部分にかけて流れ見るように進んでいき、エンジンに付いている羽の構造について解説がありました。また、エンジンの横には「ロールス・ロイス」のマークが付けられており、そのエンブレムが立派に輝いていました。

ボーイング787の見学が終わると戻る流れになりましたが、その途中にミシュランのラジアルタイヤが置かれている場所がありました。ここで飛行機に使われているタイヤには雨を流すために縦溝が刻まれていることに加え、タイヤはミシュランの他にブリヂストンなど数メーカーを使っており、それぞれの特徴なども話していただけました。

廃材保管庫

最後にボーイング777を正面から見る流れになったので、機体がある場所まで移動。このエリアの周辺には廃材がまとめられている場所があり、処分や点検するときにはきちんと保管庫に入れられているとのことでありました。そして、逆光ではありましたが、ボーイング777の機体を撮影するための時間となりました。

ボーイング777のエンジン部

そうしていると見学ツアーの終了時間をむかえました。格納庫の見学は1時間組まれていましたが、その時間というものは機体などを興味深く見ているとあっという間に過ぎていきました。

少し予定時間を越えていたこともあり、格納庫から受付のビルに戻る際に帰りのバスの時間について確認がありましたが、参加していた人はみな余裕を持っていたので問題は無かったです。

見学ツアー終了

ビルに戻って出口でヘルメットを返して解散となり、入場に使用したパスは記念品として持ち帰って良いとのことでありました。

その後、ロビーでは出発する新整備場駅への連絡バスに乗車する人がいないか確認が行なわれていました。多くのツアー参加者はそのバスには乗らず、急ぐことなく売店にあるANAなどの航空グッズを眺めていた様子でした。

徒歩数分のバス停から第1ターミナルに戻っても良かったのですが、浜松町へ向かうモノレールの時間を確認してみると、新整備場駅に行くのとあまり大差がなかったように思えたので、最終の連絡バスに乗ってみることに。

この連絡バスにはツアーに参加した半数くらいの人が乗車したのですが、バスの運転がツアー担当の職員さんであったことにはびっくりしました。

次の目的地へ

新整備場駅前に着くと、そのままモノレールの駅へ。ちょうど帰宅通勤時間帯に入るくらいの頃合いであったため、航空関係者とも思える人たちが帰路につく光景もありました。

改札を抜けると、すぐに浜松町行きの普通列車が到着。昭和島での通過待ち合わせがないとのことでしたが、それほど混雑した様子も無かったです。

浜松町に到着すると、帰宅ラッシュの光景が入ってきました。このままJR東日本の路線に乗り継ぐため、乗り換え改札を利用して山手線へ。次の目的地への行程を確認したり、乗降が絶え間なく行われる停車駅の様子を見たりと慌ただしくなっていましたが、その中でも見学ツアーの余韻も若干ながら残っていました。

改めて思い返してみると、普段では意識することが無い「整備工場」というものを見る事が出来たことはとても良い体験であったと感じており、この工場見学ツアーにリピーターが多いというのも分かる気がしています。もしまた東京へ行くタイミングと合う時には、見学ツアーに参加してみたいとも思っています。


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