『旧ドッグマウンテンリアルエステート』
「愛は犬山不動産の部屋から始まる」
エレベーターのドアが開くと、こんなキャッチコピーの、色褪せたポスターが目に入った。
ソファーに若い男女が腰掛け、笑顔で向かいあっている。モダンな家具なのにレトロの雰囲気があり、この違和感のせいで、愛が実際より尊いものに感じた。
すぐ横にある店のドアを開ける。
「いらっしゃいませ、センチュリーサーティワンへようこそ」
黒い長髪に高級そうなパンツスーツの女性が挨拶をしてくれた。
「あれ、ここ犬山不動産じゃないんですか?」
「私が知ってる限り