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「ディープラーニングの現在地 AI研究の第一人者に聞く“今学ばなきゃいけない理由”とは」松尾豊さん(前編)

今回のテーマはAI

車の自動運転。空港の顔認証ゲート。駅の案内ロボット。テストの採点。すべてに共通しているキーワードは・・・「AI」=「人工知能」です。

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今回のDooo、ゲストは東京大学大学院教授でAI研究の第一人者である松尾豊(まつお・ゆたか)さん。AIの何がすごいのか、何を知っておいたほうがいいのか教えていただきます。

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ミイナ:
Dooo、堀口ミイナです。今日のゲストご紹介します。東京大学大学院の教授で、日本ディープラーニング協会の理事長、さらにソフトバンクグループの社外取締役も務めていらっしゃる松尾豊さんです。松尾さんよろしくお願いします。

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松尾:
よろしくお願いします。

ミイナ:
松尾先生は普段ディープラーニング、AIのお仕事をされてるんですよね。

松尾:
そうですね、かなり昔からずっと人工知能の研究やってますね。

ミイナ:
もう学生の頃からご専門はAIなんですか?

松尾:
そうですね、学部4年生で卒論に配属になるんですけど、その時から人工知能の研究室で、その後ウェブの研究なんかずっとやってたんですけれども、人工知能の技術を開発したりっていうのをずっとやっていますね。

ミイナ:
もう「AI、AI」ってものすごいブームみたいになってるんですけれども、ここまで広がるとは思ってましたか?

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なぜAIブームは来たり去ったりするのか

1956年に初めて「AI」という言葉が生まれて以来、AI研究は「ブーム」と「冬の時代」を繰り返してきました。松尾さんが研究を始めた学生時代は第二次AIブームの後の「冬の時代」。その後2000年代に入ってから現在に至るまで続いているのが第3次AIブームです。

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ミイナ:
なんでこうやってブームが来たり去ったりするんですかね。

松尾:
まあやっぱり人工知能ってあれなんですよね。あのなんていうか・・・まやかしみたいなのが通用しやすいんですよね。

ミイナ:
なかなかちょっと素人目には見分けが付きにくいっていうのがありますしね。

松尾:
なのでまあ何でもかんでも人工知能って言うようになって、まあみんな最初すごいすごいって言ってるんだけどもだんだんばれてきて、ブームが去るみたいな。技術が最初にあるんだけどもやっぱりその過度な期待を煽るような、マーケティング的な「人工知能搭載の何とか」とかいっぱい出だしてですね、だんだん酷くなってきて、みんな「あれ何か変じゃない?」ってなってきて冬が来るっていうそんなパターンですね。


ディープラーニングとは

ミイナ:
AIの中でもご専門がディープラーニングなんですけれども、一言で言うとどういう関係になってるんですか?

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松尾:
まあ人工知能っていう領域の中にいろんな分野があって、例えば自然言語処理とかロボットの研究とか、まあ色々ある中で機械学習っていう研究分野があって、その機械学習の中にまた色々別れてるんですけれども、その中にディープラーニングっていう分野があってそこが今急激に伸びてる

ディープラーニングはこれまで人間が設定していた「物事を判断する際に必要な特徴」を“自ら”獲得する技術です。例えば、猫を知らないAIに猫の画像を大量に見せます。するとAIが画像から「4本足」「毛が生えている」などの特徴を人間の介在なしに自ら獲得することができるのです。

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何に使える?ディープラーニング

ミイナ:
ディープラーニングが一番使えるのは例えばどういうところなんですか?

松尾:
今は画像認識ですね。画像を見てそこに何が映ってるのかっていうのを把握するっていう、そういう技術。あと音声認識もすごく精度が上がってきてまして、AIスピーカーって色々あると思うんですけど、それもやっぱり認識の精度が今すごく上がってるんですよね。従来よりもだいぶ聞き取ってもらえるようになってる感じですね。

ミイナ:
結構音声認識は、毎日スマホで使うっていう方もいらっしゃると思いますし、画像認識も・・・あれどういうときに使うのが多いですか?

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松尾:
あの最近羽田空港とか成田空港とかで出国入国するときにパスポートを顔で・・・

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ミイナ:
あ、読み取ってますね。やってます。

松尾:
その人の顔とパスポートの顔を照合して、まあ合ってれば開けてくれるっていうですね、そういうやつとか。

ミイナ:
なるほど。そんなところにも応用されてるんですね。

松尾:
そうですね。


AIが溢れているけれど・・・

ミイナ:
色んなAIって言うか言葉も溢れてますし、サービスにも何か「AI搭載の」みたいなのが色々もう猫も杓子もみたいなところがあるんですけど、これ優劣の見分け方というかすごく詳しくなくても、何かこうそういうのってあるんでしょうかね。

松尾:
まあ優劣っていうのはないんだけども、結局中でどういうテクノロジーを使って何をしているのかっていうこと正しく把握しないと、それ以上のことをマーケティング的に言ったりするので、そこはやっぱり見分けられないといけないんですよね。

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基本的にはIT化して、デジタル化して、そうすると自動的に処理出来ることとか、効率化できることって相当たくさんあるのでデジタルをちゃんと使いましょうっていうのがあり、さらにその同じようなことが毎日繰り返されるような状況においてそのデータをきちんと取ることによって、次に何が起こりそうかって予測が出来たり仕事の効率化とか付加価値の向上にどう使っていくかっていう、そこの仕組みづくりって言うか全体の設計がすごい大事で・・・

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大事なのはテクノロジーじゃない

ミイナ:
だからその、サービス全体で見たときにどうそのテクノロジーが使われてるかっていう方が大事であって。

松尾:
特に最近はディープラーニングの技術がすごく伸びて来てるのでその画像認識を使って出来ることとか、あるいは自然言語処理も精度がすごく上がってきましたんで、まあそういうのを使って出来ることみたいなのが従来との差分としてはあって、こういう新しく技術的に出来るようになったことを使ってまたじゃあどういう風な製品なりサービスなりに仕立てて行きますかっていう何かそんな感じですね。

ミイナ:
じゃあそのテクノロジーを開発する人と同じぐらいサービスにそれをどう生かしていくかって言うのを考える人も求められてるっていうことなんですね。

松尾:
もう完全にテクノロジー×ビジネスの掛け算で面積が大きいほうが勝ちって言うそんな感じですよね。

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ミイナ:
シンプルに。テクノロジー×ビジネスで面積を。


動画編集もAIでできる?

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ミイナ:
AIの技術が色んなところで便利だなって思うのはDoooもそうなんですけどやっぱり動画って編集作業にものすごい時間がかかるじゃないですか。もう本当に人がやってるので。ああいうのとかもAIでいつかできるようになってくるんですかね。

松尾:
編集とかもどんどんAIでやったほうがいいと思いますね。どのぐらい見てくれたかっていうのが計測できるわけなんで、そうするとどういう風なシーンが人目を引きやすいかとか、こういうシーンの後ろにはこういうのを持ってきたほうが良いとか、たくさんデータがあれば学習できるはずなんですね。なのでそこ自動化したら良いと思いますし、自動化できるとこう人に合わせてこの人に適したコンテンツの編集の仕方とかですね。

ミイナ:
何か例えば今回収録している松尾さんバージョンもAIについて勉強になるバージョンの編集と、何かそうじゃなくて松尾さんのお話だけ、松尾さんについてだけ知りたいっていう人が見るための編集とか色々こう勝手にね、自動的に編集出来たりしたらすごい色んなコンテンツの幅が広がりますよね。


新聞社のデスクもAIの仕事に!?

松尾:
そうなんです。だからあの新聞とかもそうで、まあ何かデスクの人が偉そうにしてるわけですけど、それで「これボツ」とか言ったりするんだけども、そういうの全然いらないんですよね。自動で良くて、記者さんが記事を書いたり、それを情報を取ってくるっていうのはすごい大事なんだけれども、編集とかね、ああいうのはもう自動でいいんすよ。そうするとそれぞれの人に合わせてとか、まあ最適な形でって出来るので。どちらかって言うとやっぱり今って中に・・・

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ミイナ:
何か判断をするための人っていう。

松尾:
そう、何か判断をしてるって言って本当かよみたいな。そういうのが自動になってきたほうが良いんじゃないかなと思いますけどね。


新しい技術と若者に投資をしてこなかった日本

ミイナ:
日本のそのテクノロジーだとか、会社の色んなビジネスのやり方が結構その海外と違ってこのままで大丈夫なのかっていうのが気になることもあるんですけどそのあたりいかがでしょうか。

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松尾:
平成の30年の間に日本だけGDP伸びてないし、給与も上がってない。それってまあ色んな要因あるでしょけども僕が思ってるのはやっぱり、その新しい技術、それから若者に投資してないから

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ちゃんと若者と新しい技術に投資していけばまあ伸びる産業もあればそこそこの産業もあって、でも全体としては経済成長してますよっていうことになるはずなんですよね。だけど何か日本全体の中で何かすごく変なことばっかりやってるなって、そういうことをやった結果、結局成長してないっていうことだなと僕は思ってますけど。


経営者がテクノロジーを理解することの重要性

松尾:
AIの話とかも技術的な理解をしてる経営者の方ってすごく少ないんですよ。例えば「ディープラーニングってどういう技術なのか」とか、まあそれより前にそもそも「AI機械学習ってどういう技術なのか」とか、「データを処理するっていうプログラムって見たことあります、書いたことあります」とかですね。・・・になると、もうほとんどやっぱり理解してないんですよね。これだけ「IT」「AI」まあディープラーニング、そういうのが重要になってきてる時代に経営者の人がほとんど理解せずに意思決定をしているというか、まあしてないというか、変化に対応できてないわけですよね。そうするとやっぱりなかなか会社も伸びないし、そこで働いてる人もなかなか報われないよねっていう。

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若い人に裁量を!

ミイナ:
やっぱりテクノロジーを理解してないとまあ今後単に今までの知識でやっていても、何かどんどん取り残されてしまうっていうことなんですよね。

松尾:
まあそうですね。テクノロジー×ビジネスなんで、当然やっぱりテクノロジーの理解は必要で、あとそれをどういう風にビジネスとしてやっていくかっていうところは大事で、まあいずれにしても若い人のほうがテクノロジーよく分かってるのでそういう人に裁量を与えてどんどん活躍もらえばいいんですけど、まあ多くの日本企業でそういうのがちゃんと出来てないですよね。

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ミイナ:
いや、裁量がね、なかなか与えられないですよね。

松尾:
そうそう。若い頃はやっぱり下積みみたいなことをやってっていう中で段々新しいテクノロジーが出てきて、自分が活躍できる頃にはもうちょっと時代遅れになってるみたいなことが起こってる場合が多いんじゃないかなと思いますね。

ミイナ:
何かその辺のこう時間の感覚ってどうですか?10年後にはキャッチアップできてる?

松尾:
いやいや、あんま変わんないと思います。

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ミイナ:
あ、そうなんだ。

松尾:
結局その新しい技術と若者に投資することが出来たら変わると思いますけど、今のままでやってる限りずっと同じことが起こり続けるのでまああんまり変わんないんじゃないかなと思いますね。逆に例えば松尾研界隈でも起業する人がすごく増えてきて、その自分で会社作ってやるっていうのは若者が活躍してで報われるためのいい方法ですし、まあ歴史的にもそういう新しい企業が大きくなってそれが新しい産業を作って、国が経済成長するっていうのは非常に典型的なケースなんでそういうことが増えていけばいいなという風に思いますね。

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スタートアップを続々輩出!「松尾研」

松尾さんが運営する研究室、通称「松尾研」。ここから日本の未来を担うスタートアップが続々と輩出されています。そしてここでも大事なのはテクノロジー×ビジネスのかけ算だといいます。

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ミイナ:
結構AIって汎用的に色んなことに生かせるイメージがあるんですけど、やっぱりそういう所も起業する人が多いっていうところと繋がりがあるんですかね。

松尾:
そうですね、もう本当分野問わず使えますので、まあインターネットとかと一緒でいろんな分野に活用できますよっていうことだし、それをどういう風に役に立つものにしていくのかっていうアイデアと、あとそれをどうやって実現していくのかっていう、そこの勝負なのなと思いますね。

ミイナ:
例えばこう松尾先生も驚くようなアイディアで起業していった学生さんとかっていらっしゃるんですか?

松尾:

色んな人がこのディープラーニングの技術使えるようになってきて、そうするとやっぱり最近はもう明らかにコンサル出身の方でテクノロジーを学んだ人っていうのもう強くなりつつあるというか、そういう人がどんどん増えてきて、コンサルティングファームで3年とか4年とかやってる方っていろんな業界見てますし、その中でどういう風にしてそのお金が動いてるのかとか業界ごとにどこに問題があるのかをかなり詳細に分かってますから、そうするとテクノロジーを勉強したときに「これはここの業界のこういうところに使えそうだ」と、そうすると「この人がこういう風にお金を払ってくれてこういうビジネスとして回るんじゃないか」って言うようなことがすごく細かい粒度で見えるんですよね。何でまあ強いっすね。

気になる若手

ミイナ:
気になっている若手とかっていらっしゃいますか?

松田:
松尾研の中だと例えばディープエックスっていう会社をやってる那須野くん。

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松尾:
ディープラーニングなんですけど建設機械を自動で動かす。

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建設だけじゃないんだけど、いろんな機械を自動で動かすっていうことをやってる会社で会社もどんどん大きくなってるし、みんな筋トレとかして。

ミイナ:
自分の体もどんどん大きくなる。

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松尾:
建設現場におられるような方がクライアントなので、自分たちも同化してくんですよね。自分たちも自社ヘルメット作ったりとかそういうのもすごくいいなと思って。

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松尾:
相手と同じ目線に立ってやっていくっていうのがすごく大事なのでいい会社ですね。

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