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「地方には良い仕事がない」?東京圏Z世代が抱く「イメージ」の正体と、足りていない「情報発信」

「トラストバンク地域創生ラボ」主宰の永田です。
今年9月に発表した、東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)に住む15~29歳の男女919名を対象に行った「東京圏の若者の地方に対する意識調査」についてのコラム、後編です。

前編では、Z世代がイメージしている「地方」と、憧れている理由について考えました。
後編では、「約4割が『地方に住みたい』と回答したものの、『地方でも良い仕事ができる』と考えているのは約1割」という結果について分析していきたいと思います。

地方に「良い仕事」はないのか?

今回の調査では、若者が「良い仕事」の”条件”として考えるものとして、1位が「収入」、2位が「楽しさ・やりがい」、3位が「働きやすさ」という結果が明らかになりました。こういった上位の条件に当てはまるような仕事は「東京圏にある」というイメージがあるようです。

それは、地域の仕事に関する「情報」の量・質・手に入りづらさによるものだと考えています。

背景として以下の3点が推察されます。

①東京圏の仕事に関する情報量の多さ
東京圏の企業は情報発信も上手く、魅力をアピールするのに長けています。
一方、地域の仕事の魅力や実態は、東京圏にいる人には情報として届きづらいのが実情です。

②世界的な物価高や先行きの不透明さ
将来への不安といった側面から、現在居住している東京圏での生活をベースに考えると、仕事ではどうしても収入を重視してしまうといった面もあると思います。実際には地方に行けば物価や家賃のコストは低くなる可能性が高いですが、「移住先で暮らすため」に必要不可欠な具体的な収入については現実的にイメージしづらい面があるのかもしれません。

③働き方改革の進度が見えない
「コスパ」「タイパ」といった言葉に象徴されるように、長時間労働を忌避する傾向が高まっています。良い仕事の条件として1位は「収入」でしたが、高収入であればどんな仕事でもよい、という考え方ではなく、労働時間に対する報酬という面で「コスパがいい仕事」が受け入れられやすいと考えます。
彼らにとっての働きやすい環境とは、プライベートの時間もしっかりと確保できることが条件であると推察されます。
そういった「働きやすさ」についても、地方の仕事では「どの程度働き方改革が進んでいるのか」といった部分について、メディアなどで目にする機会は少なく、実態がなかなか伝わってきません。そういった点でも都市圏優位というイメージがあるのでしょう。

自治体は、"自分らしい暮らし"が実現する移住のイメージを

東京圏の若者に関して申し上げると、プライベートを重視する傾向が強いからこそ、仕事に対するこだわりが強いと考えられます。自分が理想とするライフスタイルを実現するには、どのような仕事だと良いのかという点について、シビアに考えているようです。

実際に今回の調査でも、楽しさややりがいを感じたり、働きやすかったりする仕事が好まれている一方、体裁や他人からの見え方を気にして仕事を選ぶ人はかなり少数派となっています。

そのため、自治体におかれては、移住していただくと「このような"自分らしい暮らし"が実現する」という具体的なスタイルについて、パッケージで提示するなど積極的に情報発信し、若者の目に届くようにしていくことが重要になると思います。

例えば、仕事面に関して不安を感じる若者に対しては、移住後に地域の企業で働くパターンや、都市圏の企業に勤めながらリモートで働くパターンなどを提示し、そこに併せて住宅費・光熱費・食費などの概算もセットで提示していく。その際、どんな家に住むことができるのかという具体的なイメージもあると分かりやすくなると考えます。

このように、若者が重視している「働き方」や、「金銭面」のことに関して具体的に不安払しょくに努めることが大事になると思いますし、不安が払しょくできれば一歩踏み出そうと思う若者は増えるのではないかと思います。

実際に、地域でもさまざまな事業者・生産者が奮闘しており、魅力的な仕事は多数あります。デジタル改革を進めている事業者・生産者も多いですし、得られる経験の価値は非常に大きいと思います。

地元貢献の意識が高い若者を呼び寄せる

東京圏で経験を積んだ若者が地元に戻り、地域のために貢献したいと起業するケースも多くみられるようになってきました。過去の調査「若者の地元愛に関する意識調査」では、地方で生まれ育ち、現在は東京圏で暮らしている若者においては、将来地元やその周辺に戻りたいと考えている人が4割弱いるようです。

地域の企業が今後より積極的な情報発信をしていくことで、地域で生まれ育った人がそのまま就労して暮らし続けることにもつながり、都市圏から有能な働き手を集めることも可能になっていくと思います。

また、今回のアンケートでは完全移住を希望している若者が多いのは好材料です。「同年代の移住者がいる地域に住みたい」という声も多かったので、すでにできている移住者コミュニティに関する情報開示も、人を呼び寄せる一つのきっかけになると思います。

最後に

地域には可能性しかない、と私たちトラストバンク地域創生ラボは考えています。
日本にはさまざま地域があるとともにそれぞれに魅力があり、必ずご自身に合う地域があると思います。
新たな環境では、新たな趣味や交友関係ができるなど、知らなかった自分自身の発見もあるのではないでしょうか。ぜひ一歩踏み出してほしいと思います。


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