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東京圏の若者はなぜ地方に憧れる?「自分らしさ」がキーワード

こんにちは。「トラストバンク地域創生ラボ」主宰の永田です。
2022年夏に始動した、持続可能な社会のための調査・研究・情報発信を行うこのラボですが、ようやくnoteをデータベースとしてこれまでの研究成果を蓄積することができるようになりました。

このnoteを、私たちの活動に興味・関心を持ってくださったり、似たような課題意識を抱いてくださったりする方々との出逢いの場にしていきたいと思っています。

このコラムは、これまでにラボが発表してきたさまざまな調査について、その狙いや背景・考察の公表を通じて、携わった研究員の想いをつづっていくものです。
ぜひ、お付き合いいただけますと幸いです。

今回、取り上げるのは東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)に住む15~29歳の男女919名を対象に行った「東京圏の若者の地方に対する意識調査」です(2023年9月に発表)。


調査の目的と背景

私たちトラストバンク地域創生ラボは、日本の地域が次世代においても持続するためには、適切にヒト・モノ・お金・情報を都心部から送り込むことが重要だと考えています。
お金・情報については一定程度、弊社の展開しているふるさと納税事業等を通じて送り込む仕組みが構築されていると考えておりますが、一方で、”ヒト”の部分については、どのように集めればよいかという点で模索をしている地域がほとんどなのが実情です。

私たちはヒトの中でも、若者・子ども・子育て世代がしっかりと地域に移り住んだり、地域で生まれ育ったりする環境が整っていけば、地域に大きな活気が生まれると考えています。

そこで、今回の調査は、東京圏に住んで学校に通ったり、仕事をしたりしている若者世代の中で、実際に地域に移り住みたい人はどの程度いるのか、また、移住を実現するには地域側としてはどのような環境整備が必要なのかという点をあぶりだすために実施しました。また、移住に関しては仕事観とも相関関係がある、と仮説を立て、若者がどのような仕事を求めているのかといった点についても尋ねました。

「東京圏の若者の約半数が地方暮らしに憧れている」…なぜ?

今回の調査では、東京圏に住む若者の49.3%が「地方暮らしにあこがれている」と回答。その結果には、率直に「想定より多い」とうれしい驚きを感じました。

このような結果になった理由としては、以下の3点と考察しています。

①コロナ禍による価値観の変容

行動制限に伴い、これまでアナログだったものが一気にデジタル化に傾き、日本中どこにいても享受できるサービスが増え、都心に住むことが「絶対」ではなくなったという点です。また、コロナ禍で街中も閑散とする場面が増え、行動制限が緩和された今「人混みにつかれる」といった感覚や、東京圏の物価の高さといった面からも、地方がうらやましいと感じる場面があるのではないでしょうか。

②SNSの発展

急速にさまざまなSNSが普及したことにより、これまで以上に写真や動画で地域の良い側面を簡単に目にする機会が増えたり、地域での暮らしぶりについてもイメージがつきやすい状態が生まれたと考えます。情報がない状態ですと、地方暮らしについては不安に思うことも多いと思いますが、そうした不安が和らぐような「他者が自分らしい暮らしを謳歌している様子」が伝わっているのではないかと思います。(一方で、他者のSNS投稿に関しては「良い面ばかりを映している」という疑念も若者はしっかり持っているため、必ずしも受けて全員が真に受けているということでもないと考えています)

③SDGsや地球環境問題に関する学習の影響

地球規模や、世界・社会・地域といったさまざまな課題について、若者世代には関心が高い人が多いと考えられます。今回のアンケートの最後の問いでも、地域課題への関心度の高さが表れていました。この世代は、義務教育のときからSDGsに関する内容を学んでおり、移り住んで地域課題を解決したいという意思がある人も一定程度いると考えられます。なお、昨年実施したラボの意識調査でも、SDGsや社会課題に関心が高い若者ほど地方暮らしの意向が強いことが分かっています。

若者たちが考える・イメージする「地方」とは?

前述した調査において、同じく東京圏の若者で地方暮らしに魅力を感じている人に対してその理由を尋ねると、1位は「のんびりと暮らせそう」(68.7%)、2位は「自然豊かで癒されそう」(42.6%)、3位は「都心よりも物価が安そう」(39.3%)といった回答が並びました。

今回の結果と併せて考察しますと、地方に対しては、「東京圏とは全く異なる豊かな環境の中で、自分らしく時間を過ごせる場所」だと考えているのではないかと分析しています。
また、東京の家賃や物価がますます高くなっているため、地域では質の良い・鮮度が高いものを比較的低価格で手に入るといった面も魅力的だと考えていそうです。
一方、文化・エンタテインメント等の面では、東京圏をはじめとする都市圏のほうが有利だと考える部分も当然あると推察されます。

そのため、理想の地方暮らしが実現できそうな都道府県トップ5については、長野・静岡といった、大自然があるにもかかわらず東京から新幹線ですぐ、といった場所が上位に入っているのだと考えられます。この調査では、移住先を決める際の必須条件についても聞いておりますが、トップは「公共交通機関の利便性」(42.8%)、次に「都心へのアクセス」(40.2%)であったこともその証左であると考えます。

後編に続く
後編では、若者が考える「良い仕事」についてや、地方自治体ができることなどについて考察していきます。

みんなにも読んでほしいですか?

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