見出し画像

若者が考える理想のまち「好きなコトを好きなタイミングで」「新しいモノやコトを受け入れてくれる」/若者主体の『持続可能なまちプロジェクト(仮称)』初の座談会レポート

2024年2月20日(火)、『持続可能なまちプロジェクト(仮称)』初の座談会を開催しました。
持続可能なまちプロジェクト(仮称)』とは、トラストバンクのインターン生である「地域創生ラボ 学生研究員」が中心となり、若者の視点を生かして、これまでにない新たなまちづくりの基本構想を策定するプロジェクトです。この策定過程を通じて、”50年後や100年後においても社会システムが持続し、人々がいきいきと活躍できる「持続可能な未来のまちづくり」”に必要なモノ・コトを検討していきます。

今回の座談会は、より多くの若者から様々な意見を取り入れるために開催しました。座談会のトークテーマは「若者が考える持続可能なまち」。今住んでいるまち、出身地のまちへの好感度や、まちに求めているモノ・コト、まちが存在し続けるための要素などについて4人の若者で話し合いました。
 
そんな座談会のレポートを、今回の主催者であり、当日は司会・進行を務めた村上がお届けします!


参加者

※年齢等は座談会当日現在

トークテーマ①「まちの好き度について」

 はじめに、まちのどのような要素が「好き」という気持ちにつながるのかを探るために、出身地と今住んでる場所を比較し、客観的にまちの良いところを考えました。

「出身地」と「現在住んでいる場所」各々に100点満点で点数を付けてもらいました

生まれも育ちも神奈川県藤沢市という平手さんは、藤沢市について100点満点をつけました。

平手:都心からのアクセスも良く、地元愛と団結力のあるまちの人たちの一体感が魅力です。また、湘南エリアは多くの観光客が訪れるものの新旧が交じり合った心地のいい空間。就職しても住み続けたいと思うまちです。
 
一方、井出さんは、まちの好き度は出身地70点、現在住んでいる場所99点と評価。

井出:現在住んでいる東京都三鷹市は、都心へのアクセスや街並みも良く、すごく好きなまちです。あと1点足らず、100点に至らなかったのは「電車が混んでいる」から。出身地の群馬県前橋市の評価理由は、まちの素敵だと思う場所が無くなっていたり、少子高齢化が進んでいたりと多くの課題を感じるためです。
 
徳島県徳島市出身の多田さんは、出身地の好き度の方が高い評価に。

多田:知人が多いという点から、出身地(徳島県徳島市)に高い点を付けました。今住んでいる東京都杉並区で感じる満員電車の窮屈感は、井出さんのように1点どころではなく、ものすごくマイナスに感じています……。とはいえアクセスは良いので、そこで+10点加点しました。

トークテーマ②「理想のまちの条件について」

 次に、若者が思う「良いまち」の要素を知るために、どんなモノ・サービスがあれば「理想的なまち」だと思うのかを付箋に書いてもらい、以下の4つに分類しました。

  1. 「住めば都」ex 長く住んだり家族がいたりすれば居心地が良い

  2. 「そのまちならではの魅力(ハード面)」ex 交通アクセス/商業施設の多さ

  3. 「そのまちならではの魅力(ソフト面)」ex 人が優しい/コミュニティがある

  4.  「その他」

実際に分類した後のホワイドボード

結果、孤独を感じないために地域のイベントが充実していること、ひとり暮らしを始めたてでも安心して生活できるように近くにスーパーや病院があること、働き先も趣味を楽しむ場所もあることなど、の条件があがりました。
 
自分が<20代・社会人・独身・年収500〜600万>という設定でまちに住むことを考えた井出さんは、以下のように発言。

井出:僕は正直、20代であれば治安について気にしないので、ディープなまちで積極的にいろいろ経験したいです。ディープさっていうのは、多様性やオリジナリティという意味に近いと思っていて、”すごいきれいな所ばっかりではないけど、ずっとそこに居たくなる魅力”みたいなもの。また、まち以外の場所でも、たくさんの人に会いやすくなるためには交通面のアクセスも重要だと思います。

<20代・学生・ひとり暮らし>という設定で良いまちをイメージした平手さんは「住んでいる範囲内で通える働き先が多い場所が良い」とコメント。

平手:終電などを気にせずたくさん稼ぎたいですね。あとは、家賃の安さとか、物価とか、近くに大きいスーパーがあるとか、商業施設があるとか、「生活の利便性」は結構重要なのかな。

多田:私も平手さんと同様の設定で考えました。「病院が近くにあること」、「学びやすい環境がある」、「地域のイベント」を挙げていて、共通するのは「孤独を感じない」点です。

トークテーマ③「持続可能に必要な条件について」

 続いて、参加者の皆さんに事前アンケートで回答いただいた「持続可能だと思うモノ・サービス」について、なぜこれらが持続可能だと考えたのかについて話し合いました。

3名の回答

参加者3人が共通であげたのは「音楽」。平手さんは、アンケート回答時に音楽アプリで音楽を聴いていたそうで、その時を思い出しながら「音楽は携帯電話で気軽に聴けたり、最近はスマホアプリで音楽を作っていろんな人に聴いてもらえるようになっていたりして、作曲も始めやすい環境になっていると思います。気軽に取り組めてみんなで楽しめる音楽は50年後、100年後も持続しているのでは」と話しました。とは言え、今はもうAIが楽曲を作る時代。「今後、音楽のどの要素が持続していくと思いますか?」という質問に対して「生歌であることに対する価値は今なお変わらないため、残り続けると思う」、「AIが曲を作るようになったとしても、指示を出すのは結局人であるため、オリジナリティを決める権限は人にある」といった意見が出ました。

生活の一部である働き方が今後変化することで、これまでの生活が時短されると考えた井出さんは、「生活以外のモノゴトに、より時間を使えるようになり、それにあたるのが娯楽だったり文化だったりになるのでは」と発言。
 
「言葉」についてピックアップした多田さんは「日本でいう『いただきます』、『ごちそうさま』のような、存在理由を考えない域まで達している言葉は存在し続けていると思う」とコメントしました。

では、「まちが存在し続けるために大切なこと」って?

 最後に、今まで話し合った内容を踏まえ「若者が考える持続可能なまち」の条件について意見交流を行ったところ「まちに住む一人一人が願いや理想を持てる環境があり、それらがまちと関わることで叶えられる」ことが重要だという話になりました。

井出:まちの住人がバラバラな願いや理想を持って自立して生活している、という状態だけではなく、そういう一人ひとりの想いが重なったときに調和や相乗効果があったりするまちこそが、強いと思います。

多田:みんなが持っている願いや理想を叶えられるためにも、まちは、新しいモノやコトを受け入れる体制が整っていることが必要だと感じました。子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで、広い年代の人たちが集まる場所(=まち)の中で、全員が全てのモノゴトを受け入れることは難しいが、それをある程度許容できるまちこそが存続できるんじゃないかな。
 
平手:僕は働き先があることがやっぱり重要だと思っています。地元で就職したいけど、いい働き先がないから仕方なく都会に出ることを決めた友人も少なくありません。若年層が定住しないと存続できないと思うので、魅力的な雇用先を作っていくことがまちとして大切なのではないでしょうか。
 
なお、仕事に関しては「東京圏の若者の地方に対する意識調査」でも以下のような結果が出ています。

自分にとって「良い仕事」をするには都市圏に住んだ方が良いと考えているのは全体の約6割に上り、地方でも「良い仕事」はできると考えるのはわずか1割程度となった。

東京圏に住む15~29歳の男女919名を対象にした「東京圏の若者の地方に対する意識調査」より

今回の座談会から得た「持続可能なまち」のポイント

  • 好きなタイミングで、好きな人や場所に行ったり出会ったりする環境が整っていること

  • 選択肢の幅があり、生活(住み方)の自由度は高いものの、一体感があり調和していること

  • 若者の働き先があること

  • 新しいモノやコトを受け入れる体制があること

主催者の感想

 はじめての座談会イベントでは、若者たちがまちに求める要素やモノゴトが持続するために必要な条件について活発な議論が行われました。その中でも私が驚いたのは「交通アクセスの良さがまちの好き度や理想のまちの条件にかかわってくる」ということです。座談会前は、まちへの好感度の理由として、”ひとの温かさ”、”つながり”といった長く住んでいるからこそわかる魅力や、”お気に入りの場所がある”といったそのまちにしかない魅力といったものがメインで出ると思っていたからです。
今回の座談会を通じて、確かに、一人の時間を作ったり、仲のいい人に会いに行ったり、新たな人や場所との出会いやすさなど「好きなイベント(行動)を好きなタイミングで行う」ためには、アクセスの良さは重視すべき要素かもしれないと感じました。
ここで大切にしたいのは、ただ便利だからという理由でアクセス面を充実させたいのではなく「自分のやりたいことを叶えるため」に必要である、という考え方です。
今回の座談会から「このまちに住んでいるからこそ好きなことができる、夢が実現させられるかもしれない」といったまちへの期待が持続可能なまちにつながっていくのではないかと考えました。そんな期待が膨らむようなまちを構想するために、今後も「持続可能な未来のまち」に必要な条件を、探って行こうと思います。


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!