見出し画像

電子帳簿保存法

 こんにちは。税理士ラベンダーです。
 インボイス制度が施行されて、いかがでしょうか。
 登録事業者を選択した事業者は、領収書や請求書等に「登録番号」「適用税率」などを記載し、それ以外の免税事業者は経過措置があるので、当分の間、様子見といったところでしょうか。
 登録事業者は事務処理など、手間がかかり大変になりますが、なんとか乗り越えていって欲しいと思います。
 また、免税業者から登録事業者になった場合は、令和8年9月30日までは仕入税額控除の金額(仕入にかかる消費税額)を売上にかかる消費税額の8割とする特例が設けられました。
 いわゆる「2割特例」と言って、細かな計算をすることなく、売上にかかる消費税額の2割を消費税として納付してくださいというものです。
 事務処理などが大変な場合は、この特例を利用するのもいいかと思います。事前の届出も不要です。

 さて、このインボイス制度とほぼ同時期に施行されるのが「電子帳簿保存法」です。
 これはすべての事業者に関係する法律で、令和6年1月1日以後適用されるものなので、是非、習得していただけたらなと思います。


1. はじめに

 電子帳簿保存法【正式名称:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律】 は、もともと1998年(平成10年)7月に施行した法律です。
 しかし、近年の情報化社会に対応し、国税(所得税・法人税等)の適正な納税義務の履行及び帳簿書類の保存負担軽減を図るため抜本的に改正し、帳簿書類の保存方法等を定めた法律の特例を言います。

 ここでは、この電子帳簿保存法(以下「電帳法」と言います)について、税制改正も加味して解説していきます。
 少し長くなりますが、お付き合いいただければ幸いです。

2. 電帳法が適用される帳簿書類の範囲

 まず、電帳法が適用される「帳簿書類の範囲」を説明します。
 帳簿書類は①帳簿と②書類に分類され、その内容は以下のとおりです。
①帳簿(国税関係帳簿) : 仕訳帳、総勘定元帳、売上帳、仕入帳、現金出納帳
                                                                                                                  など
②書類(国税関係書類) : 決算関係書類 ➡ 損益計算書、貸借対照表など
           その他の書類 ➡ 契約書、請求書、領収書など

3. 電子帳簿保存法とは

 電子帳簿保存法とは、所得税・法人税等国税の上記帳簿・書類を、税法上「紙による保存」が原則とされていますが、これを一定の条件下で「電磁的記録」(電子データ)により保存ができるとするものです。
 
 この電子データ保存は、以下の「電子帳簿書類」「スキャナ」「電子取引データ」3つの「保存制度」に区分されます。

① 電子帳簿書類の保存制度
【第4条 国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等 ①②】
 パソコン(会計ソフト等)を使用して電子的に作成した帳簿・書類は「一定の要件」※を満たせば印刷することなく、電子データのまま保存することができます
 
※    ここで言う「一定の要件」とは、次のものを指します。
(イ)システム関係書類(概要書、仕様書、操作説明書など)を備えること
(ロ)保存場所に操作マニュアルを備え付け、出力できるようにしておくこと
(ハ)税務調査等において電子取引データのダウンロード及びプリントアウトして提示・提出に応じるようにしておくこと

② スキャナ保存制度
【第4条 国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等 ③】 
 上記の書類(帳簿及び決算関係書類は除く)の全部又は一部についてスキャナなどで読み取った場合には、その電子データを保存することができます

③ 電子取引データ保存制度
【第7条 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存】
 所得税・法人税の保存義務者は、電子取引を行った場合には、その電子データを保存しなければなりません

4. 解説

 ここで令和5年度の税制改正を記載しようと思いましたが、細かな内容を書いても、理解するのに時間がかかり「結局のところ、どうなのよ」との結論になるので、ここで解説として要点だけまとめたいと思います。

 先にも述べたようにまず電帳法は、基本的に①「電子帳簿書類」及び②「スキャナで読み込んだ書類」③「電子取引データ」の3つに区分されます。
 このうち①「電子帳簿書類」②「スキャナで読み込んだ書類」は電子データで「保存できる」規定となっているので、原則どおり「紙のままの保存」でも可能と言うことになります。
 
 しかし厄介なのは、③「電子取引データ」についてです。
 これは「保存できる」規定ではなく「保存しなければならない」規定です。
 
 なぜ、電子取引データは「保存しなければならない」規定となっているかといいますと、経営活動上生じた取引先との相互関連性確保の為とされています。つまり、他の企業との取引をきちんと把握したいとの思惑からです。
 
 ここで、改めて「電子取引データ」について、説明したいと思います。
 電帳法第2条(定義)⑤では次のように規定されています。

【電子取引とは・・・】  
 取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう。以下同じ)の授受を電磁的方式により行う取引をいう。

 つまり、電子取引とは取引上生じる書類(注文書、領収書など)の授受をメールやオンラインショップを使うなど、パソコン上で行った電磁的記録による取引のことを言います。

 また、この電子取引データについては、過去において「検索機能」「タイムスタンプ機能」などが付与要件とされていましたが、中小企業にとっては現実的でないので、税制改正によって見直され不要となりました。

5. 結論

 結果として、国税庁ホームページにもあるように、電子保存開始にあたって特別な手続きは必要ありません。
 但し、電子取引データについては、きちんと整理し税務調査が入った場合にも提示できるようにしておかなければなりません。
 また、課税期間の途中で電子帳簿の保存はできないことに注意してください。つまり、電子帳簿で保存する場合は、課税期間1月1日からということになります。
(なお、優良な電子帳簿についての説明は今回は省略しています)


 いかがでしたか?
 残念ながら、日本の税法はOECD(経済協力開発機構)の諸外国ものと比べ、非常にわかりにくく複雑になっています。
 また電帳法についても、DX化(デジタルトランスフォーメーション)の理念ばかりが先行し、現実の実社会に即しているとは言い難いものとなっています。結果として改正が続き、電帳法の影響がほぼない状態までリセットされたのではと思います。

 個人的には、もっと実社会に即した税法のあり方に変えていくべきだと、強く思います。

 最後まで、読んでいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?