構図の話③
ここは有名な撮影スポット。線路が手前でカーブしており、望遠レンズを使うと真正面から撮影できる。(車掌さんが手を振ってくれるような安全な場所です)
この日は雪とSLを撮りたかったのだが、残念ながら雪が積もっていない。後ろの山には雪があるので、季節感を出すなら山まで入れる構図となる。
ただ、それだと間延びした締まりのない写真になってしまう。季節感を優先するか、SLをメインにするか。何度も構図を切り替えながら悩む。
悩んだ挙句にSLの迫力を表現することにして、SLをアップで撮る構図にセットした。
ところがである。
SLが来ると急にカラスが飛び立つのが視界に入った。
一瞬、「カラスが邪魔になる!?」と思ったが、次の瞬間には「カラスが入ったほうが面白いんじゃない?」と考えていた。
これから構図を変えれば撮影失敗となる可能性が高い。かといってこのまま撮っても在り来たりの写真になる。そんなことを考えていた。
この間、0.2秒くらいだろうか。
次の瞬間には咄嗟にズームを引き、絞ってISOまで変えていた。どうやったかは覚えていない。体が勝手に動いたというのが正しい表現だろう。心の中で「間に合えー!」と叫びながらシャッターを押していた。
結果として最高の写真が撮れた。後ろの山まで写すと締まりのなかった構図が、カラスが入ることで完成した。
この日、カラスを写真に入れたのは、知る限り私と友人の二人だけ。
直前まで構図で悩んだ事で、咄嗟の状況にも対応できたのだと思う。
このようにベストと思っていた構図も、何か要素が加わると変わることがある。
臨機応変に対応することで、新たな写真が生まれるのだろう。
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