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雨の日の読書。津村紀久子「ディス・イズ・ザ・デイ」

昨日は久しぶりに図書館ボランティアに行く。
返却された本を書架に戻す簡単な仕事。
たまに利用者から「この本、どこにありますか」的な相談を受ける。役に立てた時はとても嬉しい。

ボランティアをしながら、気になる本を見つけると仕事終わりに借りて帰る。
本が不思議なのは、全然知らない作家でも「あ、自分に合うかも」と思う本はわかること。
昨日出会ったのは、津村記久子さんの「ディス・イズ・ザ・デイ」サッカーに関する連作っぽい。表紙の感じがめっちゃいい。

雨の日の今日。
ベランダに椅子を出して、雨音を聴きながらぼんやりと読み始める。架空の2部リーグのサポーターをめぐる物語。裏表紙には日本地図があって、作者が考えた架空のクラブ名が並ぶ。

白馬FC、CA富士山、鯖江アザレアSC。ありそうな地域のありそうな名前が22チーム。
作家の想像力ってすごいよなぁ。世界を築き上げる力って羨ましい。

11の物語。読み進んでいくと、どれも「最終節」の物語であることに気付く。
22チームだから、11の物語。
昇格降格がかかっているチームだけじゃなくても色々な思いが去来する最終節。その試合にまつわって、主人公のサポーターの個人的な物語が綴られる。

チームのこと。選手のこと。家族のこと。自分のこと。職場の知り合いのこと。試合展開に一喜一憂しながら、みな色々なことを考えていて、どれもめっちゃリアルで素敵。
3話くらい読んで、一度本を閉じる。もっとしっかり楽しみたい。

自分にしっくりくるものと出会えた時は嬉しい。
気の合う人に出会えた時のような気分。僕が見つけ出したような、相手から見つけ出されたような。

それは、いつもこんな時。雨の降る午前中のような時。変に静かで少しだけさびしくて、でもそのさびしさが心にある種の「空白」を作っているとき、その「空白」を埋めてくれる何かに出会う。

雨は降り続いている。
もうすぐロアッソの試合が始まる。
申し訳ないけど、きょうは家で観戦だ。

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