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任務遂行中

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連作短編。上の方が古いお話です。
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記事一覧

寒い夜

寒い夜だった。 風がないのが救いだった。 そして奇妙に明るい夜だった。 見上げると丸い月が…

たつきち
6日前
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不審物

とある国の空港でKはFに会った。 「なんだ?結局おまえと一緒か?」 とFは言って確認したら、…

たつきち
2週間前
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特殊機関-【帰りたい場所】#青ブラ文学部

旅鼠に関する情報が入って来た。 テロ組織レミング。 テロと言っても彼ら自体には主張する主義…

たつきち
3週間前
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鈍色の記憶

最初に人を殺したのは、まだ研修期間だった。 FとUという、清掃局のエースの任務に同行してい…

たつきち
1か月前
16

特殊機関-【小さなオルゴール】#青ブラ文学部

「これって…?」 見覚えのある小さなオルゴールがFのデスクの上に乗っていた。 少し前の任務…

たつきち
1か月前
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特殊機関 - 【祈りの雨】#青ブラ文芸部

人を殺すことにもだいぶ慣れたものだとKは思った。 以前は任務の後は身体中にべったりと何かが…

たつきち
2か月前
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【変わる時】#シロクマ文芸部

「変わる時が狙い目だ」 「かわる?」 「いわゆる羽化だ。まぁ、あれには羽はないがね」 目の前の蛹のようなものは本当に蛹だというのか? ひどく硬い寝袋とでもいうべきだろうか? その奇妙なものの中にいるのは天使か?悪魔か? 「どっちにしろ、俺たちにとっては敵だ」 上官が言う。 蝶の蛹にも似ているそれは、部屋の真ん中にポツンとある。 その状態に発砲したところで弾は全て跳ね返されるのだと上官は言う。 「だから、背中が…いや、あれは腹だ。腹を上にして横たわっている。あれの表面にヒビが入

破壊作戦 #ムーンリバー

川底よりも深い地中を掘削しているマシンを爆破する。 それもちょうど川の真下にいる時を見計…

たつきち
2か月前
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interval - 打ち合わせ -

先日、武器工場の爆発で大破した工業ロボットは、P社から輸出されたものだった。しかし、それ…

たつきち
3か月前
13

camouflageもしくは作戦失敗

左腕に破片が刺さった僕は呆然と爆発した工場を見ていた。 そんな僕をFが引きずるようにして車…

たつきち
4か月前
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暗号解読

「待たせた」 Mがコーヒーを淹れて部屋に戻ってきた。 「いいのかい?水物なんて」 とKが言う…

たつきち
4か月前
11

笑う暗殺者

「やれやれ」 目の前の惨憺たる状況を見てFは手にしていた銃をホルダーに戻した。 「遅かった…

たつきち
4か月前
15

Lemming

窮鼠は猫を噛まず、自らのこめかみを撃ち抜いた。 「残念ながら俺の世界はお前らのために回っ…

たつきち
5か月前
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エコー、あるいは対象観察

「動きなし」 この報告はもう半月ほど続いている。 正直もうしばらくこの観察を続けていたいと思うほど、今の僕は疲れていた。 大掛かりな作戦がしかれた。 ターゲットを仕留めたことに関しては成功と言えるかもしれない。 でもあれは失敗だと僕は思う。 戦闘と呼べる状態になり、ターゲット以外にも死者を出す結果となった。 こちら側にも被害があった。 自分も負傷した。 怪我は慣れている。 大した怪我でもない。 ただ目の前でターゲットが自分の盾にするように立たせた兵士がなんの抵抗もなく死んでい