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農業は「超知的産業」に!?

column vol.1195

「農FIRE」という言葉をご存知でしょうか?

こちらは、農業経営者山梨県立大学特任教授の水上篤さんが提唱されている考え方なのですが

まず「FIRE」“Financial Independence, Retire Early” 、

つまり、「経済的な自立と早期の退職」のこと。

若いうちに資産をつくってリタイアし、あとは資産運用をしながら悠々自適に暮らすスタイルのことですね。

その頭に「農」と付くとどうなるのでしょうか?

水上さんは農FIRE

「農業」を起点にして衣食住エネルギーを自分で生み出し、お金では買うことのできない土地の恵み、人々とのつながりなどたくさんの豊かさを享受できる状態

と説明されております。

〈PRESIDENT Online / 2024年4月27日〉

…とはいえ、農業というと「大変」というイメージがありますよね…?

何だか「FIRE」という言葉とギャップを感じます。

しかし、水上さんは

1日2時間労働年収450万円が稼げる」

と仰っているのです…(驚)

そんな「農FIRE」とは何か?

今日はそこを探っていきたいと思います。

ぜひ、最後までお付き合いくださいませ😊


1日2時間労働=年収450万円

農業は大変な割りに儲からないと思っている人は多いのではないでしょうか。

そう問いかける水上さんですが、その答えとして、次のような希望を私たちに示してくださっています。

大変(生産に手間がかかる)
 → 楽な生産手段が出てきている
儲からない(流通コストがかかる)
 →  直販する方法がいくらでもあるので簡単に抑えられる

「楽な生産手段」ということでいえば、確かに「スマート農業」は進化を続けています。

ちなみに、スマート農業とは、情報やデータ技術を利用して生産システムと運営を最適化する農業のこと。

データを集め、それをいかに賢明に活用するかに重点が置かれ、人間の労働を最適化しつつ農産物の質と量を向上させることを目指しています。

AI、ドローン、ロボットなど先端のテクノロジーを駆使しているので、進化すればするほど「農業って肉体的にキツイ…」という状況から解放されるというわけです。

ちなみに、文部科学省「2040年の未来予測」では、2029年には

身体の負担度が高く高度な育成・収穫技術を代替する自立型農業ロボット

実装されると予見しているのです。

ですから、ひょっとしたら、10年後には農業が生産性の高い仕事になっていてもおかしくはない。

そんな予感がするのです。

高校生が開発した “システム”

「スマート農業」といえば、2人の高校生がつくったあるシステムが話題になりました。

それは、AIを使って「りんごの大きさ」選別できるシステム。

青森の木造高校に、この春まで通っていた奈良柚弥さん八田伊織さんのコンビによって開発されたのです。

〈高校生新聞オンライン / 2024年3月12日〉

2人がつくった果樹選別システムは、りんごを白い箱の中に入れると、カメラがりんごを認識

マイクロコンピューターが、撮影したりんごの大きさをこれまでに学習したりんごのデータをもとに判別し、パソコンの画面に等級(5段階)を表示する仕組みとなっています。

通常、収穫したりんごは品種ごとの特性に合わせて管理し、市場価値を決めたり、販売戦略を立てたりするのですが

その際、りんごは大きさキズの有無、肌ざわりなどの基準によって判別されています。

ではでは、2人がなぜ「大きさ」に注目したのでしょうか?

実は、大きさの選別は、主に手作業で行われており、膨大な時間と労力が必要で、基準の統一が難しいため、品質が不均一になる場合もあるそうです。

大きな農家は業者に依頼できるのですが、りんご農家の多くは中小規模なので、コストを考えると自分たちでやるしかない

その点、この選別システム低コストで設置でき、持ち運びもできる

これにより、作業者の負担が軽減され、仕事の生産性、効率性が向上することが期待されているのです。

現在、りんごの大きさの正答率は65%

実用化には 95%以上が必要とのことなので、今後は新3年生が2人の研究を引き継いでいくとのこと。

次なる展開が非常に楽しみですね。

農FIRE「稼ぎ」の方程式

冒頭の農FIREの話に戻りまして、水上さんが農FIREに向けての試算を紹介されているので、そちらに触れたいと思います。

まず、「高く売れる商品をつくること」が肝要とのことで、代表格となるのがシャインマスカットブルーベリー、あるいは高級イチゴなどが、それにあたります。

では、シャインマスカットを栽培した場合の試算がこちらです。

(1)1反(300坪=991.736m2)の農地で年間150万円の売上
(2)3反の土地があれば450万円
(3)そこから経費を引いて手元に残るお金は約50%(3反で225万円
(4)一人でできる面積は5反が限界
(5)1反75万円の利益×5反=375万円
(6)加工品付加価値を少し付けるだけでも450万円

しかもブドウの場合、労働時間農繁期でも1日2時間程度で済むらしいですよ…(汗)

それが、最初の「1日2時間労働で年収450万円が稼げる」という話につながるわけですね😅

年4%の運用益で450万円得ようと思ったら、一般的には1億1250万円の元手が必要です。

確かに、水上さんが仰るように「農業はコスパが良い」のかもしれませんね。

ちなみに、水上さんのホームグラウンドである山梨は、中山間地域が多いため、全国2位の空き家率となっています。

さらに、高齢で農業をリタイアしたいと思っていらっしゃる方々も多い。

そうした方から中古で農機具や機械を購入したり、空き家を活用すると、初期費用も抑えられるわけです。

最近は、ブランディングによって農作物の付加価値を上げている事例もよく見かけますので、農業は頭を使えば使うほど、生産性を劇的に向上させる余白がある。

今後は「超知的産業」になっていくのかもしれませんね。

ちなみに、スマート農業に関するメディアも発達してきており、私がよく読むメディアの1つが、「SMART AGRI」です。

〈SMART AGRI / Webサイト〉

こちらは、普通にテクノロジーのニュースとしても非常に面白いのでオススメです。

〜ということで、本日は【「自立」する農業のカタチ】と題して、その可能性を探って参りました。

農業という枠組みをとっぱらって抽象化すると、日本の生産性向上という課題につながっていくと思います。

変革する農業の世界を参考に、自分の業界に当てはめていくと、新しいヒントがきっと生まれてくるでしょう😊

本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

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