百貨店の未来は「原点」に向かう
column vol.1186
新年になって5日目になりますが、…そういえば…、私の原点とも言える「小売業」についての話をしてませんでした…😅
そんなわけで、本日は小売業について語りたいと思います。
昨年はコロナによる行動制限がなくなったことで、小売企業にとっては回復の年でした。
「小売の雄」と呼ばれる百貨店については、足元の状況を見ると、主要5社の12月度業績は、おしなべて1割程度の増収。
ラグジュアリーブランドや時計・宝飾等の高価格帯商品が引き続き牽引しています。
〈WWD JAPAN / 2024年1月4日〉
当初、暖冬が懸念されていましたが、冬物衣料も健闘。
消費者の購買意欲が感じられました。
1月の初売りについても、三越伊勢丹の基幹3店(伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店)は2、3日の2日間で売上高が前年比2%増。
目立った押し上げ効果は見られなかっものの、売れたものの中身を見てみると、セール商品が同8%減に対してプロパー(正価)商品が同8%増となっております。
「安いもの」から「欲しいもの(価値のあるもの)」に消費者マインドが移っていることが窺えますね。
阪急阪神百貨店の阪急本店も、2〜3日累計の売上高、客数は共に前年並みだったそうですが、ラグジュアリーブランドの革小物がよく売れたとのこと。
もちろん、物価高による節約志向は見られ、消費は二極化していますが、少なくとも「価値のあるもの」へのニーズが膨らんできているとは言えるでしょう😊
この百貨店の好調さには「原点回帰」があります。
百貨店の原点「外商」で復活
冒頭のラグジュアリー消費をリードするのが「外商」です。
つまり、富裕層に対して高価値商品を提案できていることが、売上伸長の原動力になっております。
ちなみに外商とは、デパートなどで売場を通さず、直接客に販売すること。
主に高額商品を購入する法人顧客や個人顧客向けに対して個別にサービスを提供しています。
百貨店の主なルーツは呉服店。
もともとは、得意先の屋敷を訪ねて商品を販売する「屋敷売り」や、注文を聞いてからあとで商品を持参する「見世物商い」など、訪問販売が一般的でした。
そして、商売のお相手は大名や両替商などといったお金持ち。
着物一着分の一反単位で売るというスタイルでした。
こうした小売の原点である「外商」を通じてコロナショックからの回復を果たしたのです。
もう1つの原点「店前売り」
…ただ、お金持ちの方は良いのですが…、私のような庶民からすると取り残されたような気分になってしまいます…
個人的には、2024年はもう1つの原点で百貨店がお客さんの心を掴んで欲しいのです。
もう1つの原点とは「店前売り」。
こちらは何か?
これは、三越の前身「三井越後屋呉服店」の創始者である三井高利が始めた当時の新しい販売方法です。
〈PRESIDENT Online / 2023年12月10日〉
の越後屋です(笑)
でも、悪いどころか、三井高利は偉大なる商人で、かのピーター・ドラッカーは
と言っているぐらいです。
…と、ちょっと話が脱線してしまいましたが…、「店前売り」とはお店に商品(反物)を並べ、自由に見て買い物ができるスタイル。
いわゆる今の売り場です。
しかも「正札(しょうふだ)」、今で言う「定価」を初めて採用したのも三井高利と言われています。
それまではお客さんと商人の間のやり取りで値段が決まっていましたが、それだと庶民からすると怖くて近寄れませんよね…
さらに、「切り売り」といってお客さんが欲しい分だけ買うこともできるようになったことで、呉服店と庶民の距離は一気に縮まりました。
つまり、百貨店は庶民に寄り添うことも原点なのです。
〜ということで、現状は百貨店のニュースを目にする度に「外商」「インバウンド」という言葉が躍動しているのと同じぐらい、我々庶民が喜ぶような展開を見せて、メディアを賑わせていただきたい😊
特に昭和生まれの人間からすると、子供の頃、百貨店は庶民のテーマパークでした。
もちろん、私がそんなことを言うまでもなく、百貨店各社は新しい一手を次々と打っております。
顧客解像度を上げる「エッジAI」
その1つが、そごう・西武で採用している「エッジAI」です。
〈ZDNET / 2023年12月28日〉
エッジAIとは、AIをデバイスに直接搭載し、そのデバイスで処理を行うようにするもの。
例えば、カメラを搭載したデバイスを道路に設置し、そこで交通量を測定することができます。
これまで大型百貨店は来店客数が圧倒的に多く、属性や人流をくまなく分析するのは難しいとされており、その結果、会員カードを持つ来店客など、一部のデータを基に経営判断せざるを得ない状況でした。
しかしエッジAIやIoTを活用することで、来店客の膨大なデータを分析することが可能に。
実際、そごう・西武ではエッジAIの実証実験を行ったことで、今まで以上に顧客解像度が上がったそうです。
例えば、それまでは顧客に対して「高齢層に固定されている」という思い込みがあったのですが、実は十分に若い世代と接点を持てていることが判明。
そこで、若年層に向けたコーナーを実験的に設置すると、30代以下の来店客が増加。
しかも目的を持って来店するため購買につながったそうです。
この結果を受けて、同社では本格的に若年層強化に着手しています。
ECでは、サイト来訪者がどこから来てどうサイトを巡回し、何を買ったのか、あるいはどこで離脱したのかが全て可視化できますが、そのようなECの当たり前を実店舗でも実現したいとのこと。
外商だけではない一般の来店客の心を掴むべく、新しい取り組みを行っているのです。
ちなみに、三井高利のDNAを受け継ぐ三越伊勢丹でも「三越伊勢丹リモートショッピングアプリ」(MIRS)を通じて、顧客解像度を上げる取り組みを行っております。
その1つが「顧客カルテ」で、チャットの会話や購買の実績、アンケートの内容を “カルテ” として貯めて、一人一人のお客さんに対して、より的中率の高い提案を実現する。
これもデジタルを活かした好事例です。
他にも、百貨店各社のさまざまな取り組みがあるのですが…
またそれは別の機会にご紹介いたしますね〜😊
いずれにせよ、小売業の真の原点は「顧客第一」。
各社の今後の展開に期待したいところです。
個人的にも、小売業協会の生活者委員会を通じて、小売企業各社の皆さんと今年、新たな挑戦を企画しております。
まだ詳細は明かせないのですが…、実現できたら、またこの場でも報告させていただきますね。
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました🙇🏻
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